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レッドベア-1

予約投稿#とは

 バカバカバカ、マジか、正気か?

 飛び出したのは勿論スピードだ、だが制止は間に合わない。彼女が多重発動したスキルの効果を乗せたショートソードが、その切っ先が、今まさに熊の背中を貫かんと迫る。

 頭を狙わなかったのは奇襲を確実なものにする為か、って冷静に分析している状況じゃない。


 「え?」


 すっかりスピードのお馴染みとなった()()攻撃、……恐らく、来たるレイピア運用を想定しての行動だろう、だが今回は()()が良くなかった。


 「Dooooo!!!!」


 なんの偶然か、攻撃が届くタイミングで、熊が()()()()()()()のだ。そして、当たりどころが良かったのか、それともスキル効果によるものか、ショートソードが熊の腹に深々と()()()()()()

 突然襲ってきた痛みに、叫び、微睡んでいた熊の目が見開かれる。血走った目が、剣を突き刺したスピードと、その奥にいる俺を確かに敵として映す。


 「危ない!」

 「よゆーよゆー」


 刺さった剣を抜こうとするスピード目掛けて、振り上げられた腕が振るわれる。

 間一髪、スピードは回避に成功するが、熊との距離が開いてしまった。ショートソードは刺さったままだ。


 「【パワーショット】!」


 焦って射った矢があらぬ方向へ飛んでいく。クソ、スキルを無駄打ちしてしまった。カウントされ始めたクールタイムが恨めしい。続けて撃つが、通常攻撃はまるで効いているきがしない。

 熊がゆっくりと、しかし冷静な動きで起き上がる。スピードの一撃が一体どれ程のダメージを与えたのかは分からないが、今の動きを見る限りまだまだ余裕そうだ。

 立ち上がろうとしている間に下がってきたスピードと、情報を共有する。


 「小言は後だ、()()()はどうだった?」

 「ちょっと苦しそうにしてたから効果は有る、ただ後どれくらいかは」

 「わからないと。剣は抜けそうか?」

 「強化中(ブースト)してるし、邪魔されなければ」


 その()()()()()()状況を作るのが難しいんだがな。

 それでもやるしかないだろう。完全に敵対してしまった現状では簡単には逃げられないし、継戦するにしても武器は必要だ。


 「デケェ……」


 立ち上がった熊は、想像以上の大きさだった。高さだけならあの巨象にも匹敵するのではと思わせてくる程で、腕の先、両の手から生えた爪の鋭利さはここまで戦ってきた鼠の比ではない。何より、威圧感がハンパじゃない。

 いや本当に、どうやって抜く時間を稼ぐんだ、これ?


 「こっちから仕掛ける」


 呆けた俺を置いて、スピードが再度前に出る。やたらめったらに振るわれる腕を流石の身のこなしで回避し、柄に手をかけようと近づく。

 実の所、立ち上がった熊の動きはそこまで驚異では無い。巨体故の圧迫感こそあれ、攻撃方法は腕によるなぎ払いのみだし、先程見せた俊敏性もない。

 スピードの行動はそれを暗に教えてくれているようだった。その様子を見て、少し落ち着いてきた。


 「ヘッショ(ヘッドショット)を取れれば()()()くらい入るだろ」

 「いい狙、い!」


 危うげなく足元までたどり着いたスピードが柄に手をかける。

 抜き始めたと同時、突然倍増した痛みに苦悶の叫びを上げ暴れ始める熊の()に照準を合わせ、撃つ。リキャストは既に終わっている!


 「【パワーショット】ォ!!」


 真っ直ぐに飛んでいく矢が、今度こそ命中する。寸前、獣の本能か、頭を守るように動かした手によって阻まれた。

 てっきり、痛みに理性を失っているものだとばかり考えていたが、判断力はまだ残っていたらしい。ヘッショならず。

 ただ、行動を阻害するという目的自体は達成されている。流石にスキル込みの攻撃、その衝撃は殺しきれなかったようで、体が少し仰け反っている。

 暴れていた熊が静かになった今、スピードを邪魔するものはいない。


 「ガッ……!」

 「Digaa」

 「はっ……?」


 だからこそ、――剣を確実に抜けると思い込んでいたからこそ、突然起こった事の理解が遅れた。

 剣を抜こうとしていたスピードが、中空を舞っている……?


 「――蹴り攻撃か!」


 蹴り飛ばされたスピードが俺の近くで着地。だが、蹴りダメージに加え、落下ダメージも殺し切れなかったようで、キツそうな表情をしている。

 視線をクマに戻せば、未だ薄れぬ殺意の目でこちらを睨んでいた。腹には、半分ほど抜かれたショートソードが。


 「もう少しだったな」

 「……もう無理、EN(エネルギー)がもう限界」

 「リトライは厳しいか。取り敢えずバッ……!!!」

 「Dyga!」


 スピードに弾き飛ばされてすぐ、先程まで立っていた場所を熊が四足で突進、振るわれた熊の手が空を切る。

 先程、魚を捕らえる際に見せていた行動だが、予備動作は全く見えなかった。

 だが、流石にほぼノータイムの高速攻撃はクマも負担のようだ。荒い息を吐くのみで、強引な回避で崩れた体勢を立て直す間に動き出す様子は無い。


 「ボンド、あれ……」


 スピードが指を差した先には、折れたショートソード。四足状態時、腹は下にあるので、そのまま突進なんてしたら折れて当然だろう。

 頭では理解できるが、今までの時間が無になったと考えると虚無感が酷い。


 「逃げるぞ」


 継戦は不可能、撤退一択じゃボケ!

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