表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/21

ファーストダンジョンアタック-3

またも忘れてました。

 「お、最初の分かれ道だ」

 「どっちがいいかな」


 十数分ほど歩き続けて、ようやく分岐路に当たった。

 ちなみに、ここに来るまで二、三度鼠と戦ったが、危うげなく勝利している。矢の消費も十本前後で余裕はある。

 ただ、鼠を倒す際、俺はスキル有りでもヘッドショット以外なら二発必要だった。スピードもスキル無しなら何回か攻撃する必要がある。単純にレベル不足だ。

 ただ、最後の戦闘でそれぞれの戦闘職種レベルが上がっている。この調子で行けば、スキルレベルが上がるのもそう遠くないだろう。

 話しを戻そう(閑話休題)

 まず〈マップ〉を確認。全体を俯瞰で見て右下寄り、東の方から入ってきて、広場を経由。そのまま西方向に進んでいて、この分かれ道では北か南かに分かれている。


 「広場の道は南よりが多かったから、こっちに進むと他プレイヤーと会うかも」

 「じゃあこっち(北側)――」

 「ただ、ユーマ達は多分南側に行ってるから、猪が出てきそうなのはこっち(南側)だな」

 「――……」

 「俺は北側かなー」

 「……じゃあそうしよ」


 という事で、北側の道へ。

 歩き出して少しすると、水音が聞こえてきた。その音に導かれるように進むと、少し開けた空間に出る。

 川だ。

 支流のようで、川幅はそこまで広くないが、水流の勢いがかなりある。考え無しに渡ろうとすると流されそうだ。

 川は蛇行しているが概ね南から北に流れている。このまま川沿いを北に進めば本流に繋がりそうだが、川向うに奥へと続く道も見える。勿論南側、上流の方にも行ける。


 「どうする?さっき譲って貰ったし、好きに決めていいぞ」

 「んー、下流かな」

 「その心は?」

 「どうせなら北方向に行ける所まで行きたいのと、強敵が居そうだから」


 それ絶対後者の理由が全てだろ。

 まあ、特にこだわりがある訳でもないし、否定することは無いんだけど。

 肯定すると、スピードは下流に進むのではなく、川辺まで走り出した。さっきまでほとんど景色が変わらなかったからな、テンションが上がる気持ちもわかる。丁度いいし、ここらでちょっと休憩するか。


 「魚が泳いでる」

 「え、どこ?」

 「ほら、あそことか、そこも」

 「ホントだ見えた!」


 二人で川を覗き込む。水棲の敵性生物が居ないか、少し警戒していたが、大丈夫そうだ。

 川を泳ぐ魚は、モンスターではなく原生生物(モブ)だろう。釣り上げることは出来そうだが、生憎と迷宮人形は食事を必要としないので、癒し以上の効果は無い。

 川を見ていると、スピードが何やら思いついたのか提案してきた。


 「ねぇ、水切り勝負しよ」

 「勝ち目が全く見えないんだが……?」


 まあやるけど。

 手頃な石を探してきて、投げる。


 「四回、まあ行った方だろ」

 「私、十六回」

 「クアドラプルスコア(四倍差)かよ……!」


 抑えているが、声の端々から優越感が漏れているのがわかる。それは単純な煽りよりよっぽど効く、いや効かない。

 違うし、俺が下手なんじゃなくて、獣人種と森人種の性能差だし。だから負けても全然全く悔しくない。

 取り敢えずさっきより形のいい石を探して……っと。


 「!?」

 「Dom」


 顔を上げると、こちらを不思議そうに見ている赤毛の()と目が合った。


 「いっ……!!」


 叫びかけた俺の口をスピードが塞ぐ。ナイス判断。流石、()()()()()()()()()()()

 幸いまだ敵対判定されていないようなので、余計な刺激は与えたくない。

 一体いつ近付いて来ていたのか。水切りに夢中だったとはいえ、一切の気配なく近付かれていたという事は、それだけ強敵であると判断できる。象の時に感じた()は感じないが、それはノンアク(敵対意識が無い)だからだろう。

 だが、今戦ったら間違いなく負ける。そして負ければ、ここまでの時間が全て無駄になることを、象の時とは違って知っている。

 ならば、今は戦うべきではないだろう。


 「……」


 初戦で鼠に囲まれた時より緊張感があるぞコレ。

 何より圧迫感が凄い。四足の時点で目線が合うということは、立ち上がったらざっくり二倍になるだろう。

 とにかく、刺激を与えないようじっとするしかない。現実だと、ゆっくり後退して……という対処法が挙げられるが、ココじゃ何がトリガーになるか分からない。ので、動こうにも動けない。


 場は、完全に熊に支配されていた。

 だが、膠着した状況を動かすのもまた、熊だった。

 暫くこちらを見ていた熊だが、不意に興味を失ったのか、視線を外す。どうやら、興味の矛先は川、いや、魚に向いたようだ。

 一歩、距離を取る。

 熊はこちらを見ない。完全に意識から外れたようだ。


 「来た道に戻るぞ」


 小声で指示を出し、ゆっくり下がっていく。と、熊が動いた。

 思わず体が硬直する。

 水切りの時よりも激しい水飛沫が飛ぶ。……あまりの速さに目が追いつかなかった。気が付いた時にはもう川の中にいた。

 直後、水面から顔を出した熊の口端に、先程まで泳いでいた魚の尻尾が。

 少しして川から出てきた熊は魚を食べて満足したのか、その場に寝そべって動かなくなる。

 完全に油断しきっているが、それは自分が絶対的な捕食者の頂点に立っていると理解しているからだろう。


 「北はダメだ」


 先程歩いてきた道に戻ろうとした時、何故か前へと飛び出す影。

 それが誰か考えるより早く、声が響く。


 「【筋力強化(アタックブースト)】、【ピアッシング】」

読んで頂きありがとうございます。

下の☆評価の協力お願いします!活動の励みになります。

ブックマーク、感想、レビューも喜びます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ