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ファーストダンジョンアタック-1

 ガストの案内通りに歩いて街を出れば、深緑の樹海が広がっていた。

 鬱蒼と生い茂った森は正しく天然の迷宮。道なき道を、という想像をしていたのだが、人(人形だが)が十分通れる空間が木々の間に作られていた。

 勿論、生い茂っている草木を掻き分け、森の中に押し入っていく事も出来る。出来るが、それは可能である()()で、暫くは辞めておいた方がいいだろう。

 単純に視界が取れなくなるし、何が潜んでいるかわかったものじゃない。


 「静かだな」

 「でも、あの時と違って()()()は感じる」

 「……警戒しつつ、取り敢えず進むぞ」


 一先ず一本道なので、道なりに。道中、〈マップ〉を開いて確認してみたが、問題なく道筋が表示されていた。

 EN総量の都合もあって、スピードが前衛、俺が後衛という隊列を組んだが、スピードがスタスタ行ってしまうので、あまり機能していない。

 幸いにも接敵することなく、開けた空間に出た。ここから道が複数に分かれている。


 「ここまでは変わってない」

 「変わってない?」

 「βの時から、って事」

 「へぇ。……って、β!?」

 「?私、βテスターだよ?」


 言ってなかったっけ、と、ケロッとした表情。聞いてないが、色々納得はした。それで動き慣れていたのか。

 βの時の事を詳しく聞きたい欲求に駆られるが、自分で確かめたいという思いもある。どの道を進むかと併せて悩みどころだ。

 と、前方から話し声。


 「だー!相変わらずケルベロスロール(このゲーム会社)の戦闘は難易度キチィ!!」

 「さすケロだよなぁ、それが醍醐味でもあるんだけど」

 「はいはい、取り敢えず立て直しね。情報はある程度取れたんだし」


 声の方を見れば、三人組の迷宮人形(ドール)が一本の道から歩いてきていた。聞こえてくる会話から察するに、戦闘がキツくて引き上げてきた、という所か。

 ともあれ、先達に話しを聞ける丁度いい機会である。向こうもこちらに気が付いたようなので、手を振って敵対意思がないことをアピール。

 一瞬緊張感が漂ったが、直ぐにこちらの意図に気付いてくれた。武装解除を待って近付き、リーダーらしき人間種の男性に話しかける。


 「ども。これから帰りか?」

 「ああ。猪に手酷くやられてね、命からがらって訳さ。……そっちは、これからかい?」

 「イベント後ちょっと休憩してたんでな」


 ああ、と納得の声。これからもっと人が増えそうだな、と後ろで小さく話しているのが聞き取れる。


 「せっかくの機会なんで、ちょっと話を聞けたらと思って声を掛けたんだが……あぁ、俺はボンドだ」

 「【ユーマ】だ、コイツらは……まあいいか。まだ序盤だし、情報提供くらいならいくらでも出来るぞ」

 「助かる。なら、どんな敵性生物が出るのか教えて欲しい。さっき、猪がどうとか言っていたが」

 「OK、取り敢えず俺達が出会ったのは、二足歩行する鼠と、猪だけだ」


 鼠は襲いかかって来る前に鳴き声を発するし、攻撃は引っ掻き攻撃のみなので、落ち着いて対処すれば余裕だった、とユーマは言う。二、三回も戦えば、一人でも対処は難しくないらしい。

 ただ、とユーマは続ける。


 「問題は猪だ。俺達は危うく全滅しかけた」


 「ある程度戦闘にも慣れ、順調に探索していた時だ。正面から一匹の猪が現れたんだ。初見の敵とはいえ、所詮一匹。余裕だろうと斬りかかったんだが……」


 一呼吸。


 「俺達の攻撃が届くより早く、突進攻撃を喰らった。【ビンズ】、……コイツなんだが、吹っ飛ばされたんだ。あまりに速すぎて、暫く理解出来なかった」


 隊列を崩されながらも果敢に攻撃を仕掛けたが、速さに翻弄され有効打は与えられず。ENをじわじわ削られていく状況に、撤退を決意。が、追いかけてくる猪とのチェイスは、心身ともに消耗するものだったという。


 「何より脅威なのは、トップスピードに至るまでの早さだな。これに突進の吹っ飛ばし効果が合わさって、対処を難しくしてる」

 「……ありがとう、参考になった」


 序盤の難敵か。三人でも全滅覚悟だったなら、二人での対処は厳しそうだ。

 取り敢えず聞ける情報はここまでだろう。再度礼を言い、別れようとしたところで呼び止められた。


 「最後に、お節介ながら忠告を一つ。このゲーム……というか、このゲーム会社の戦闘は、慎重になりすぎる位が丁度良い。少しでもキツイと思ったら、おとなしく撤退することを勧める」


 現に、このゲームもデスペナ(デスペナルティ)エグいからなぁ、とぼやきながら去って行くユーマ達を軽く見送って、直ぐにでも行きたそうにしているスピードの方に戻る。

 得た情報を共有。猪を見かけたら、様子を見つつ、なるべく戦闘はしない方向でお願いする。だが、やっぱりスピードは不満そうだった。


 「アイツらが弱かっただけでしょ?私なら余裕」

 「いや、まだ見てもないんだから分からんだろ」


 相変わらずの自信だ。

 やる気に満ち溢れる彼女を見ていて、思い出した。そういえば、βテスターだった、みたいな話をしていたんだった。


 「それともβの時に既に戦ってる、ってオチ?」

 「いや、多分初見だと思うけど」


 初見なんかい。

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