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新たな物語の音色を奏でるカンパネラ   作者: 穴にハマった猫
5/19

ウナギとピンクのモフモフ

蒸気機関車は発車し景色が流れ行く、チェルさんは剣を3本 立て掛け腰のナイフも外し、不思議そうに僕を見る。


「キーくん、荷物無いけど大丈夫?」


心配してるのか微妙な顔で聴かれたので。


「魔法で空間に収納してるんだよ」

「・・・そんな便利な魔法、私知らない・・・在ったらチート」

「チートではない、苦労して手に入れた魔法」


万能空間に手を入れ、普通のリングドーナツを出して見せると。


「おぉー! 手品」

「手品ではない魔法だ!」


両手を広げて何かを待つチェルさん。


「ん!」

「ん?」


何だろうか?


「そのドーナツ頂戴」

「嫌だ」

「ケチ!」


これは僕専用ドーナツだよ、それにチェルさんにあげたら無制限に、ドーナツを要求されそうで怖い。


「キーくんケチ!」

「一個では終わらないよね」


一応確認の為に聞くと。


「勿論、食べれるだけ食べる」


どや顔で言わないで欲しいな・・・さっき、待ってる間に水まんじゅうや、団子沢山食べてたよね?


「何処かでチェルさんの旅金稼がないとな」

「モンスターをボコる」

「盗賊ボコった方が更に儲かる」


喜一は気付いてない、今の発言で周りからアイツヤバいとの視線に。


「盗賊ボコると儲かる?」

「経験上儲かるし、世の中のゴミ掃除で一石二鳥だよ」

「それは確かに言える、だからドーナツ頂戴」

「何でやねん」


周りの人はあの少女もヤバいと思った。

ドーナツを戻し。


「私のドーナツ・・・」


本題に戻るが、チェルさんにドーナツあげるとは、一言も言ってない。


「ストレス発散に悪党をボコボコにしても、役人に怒られないし」

「確かに・・・」


周りの人は二人をドン引きしたのだった、後に盗賊狩り(ロバーズハンター)と喜一()は言われる事になる。


「北は寒いから、上着出すかな」

「確かに、雪原方面は今の時期も雪が残ってる」


ゴシックロングコートを出して、一応チェックしてるとチェルさんは鞄を開きマフラーと、茶色のダッフルコートを出すが・・・下着が無造作に詰め込まれて居る。


(普通に乙女な下着だな・・・)


ブラのサイズはまあ・・・あえて言わずに居よう。


「・・・見た?」

「可愛い布を少々・・・」

「いつか成敗する・・・」


手刀の構えをし真っ赤な顔で居た、一応恥ずかしいらしいが、なら人の眼の在る場所で広げないで欲しい。

それにしてもリボンやら、縞模様や水玉にフリル付きとか乙女な可愛いパンツだ、妹のは今は大人系なヤツだったな確か。


「まあ、普通に周りにも見えてるけどね」

「うぅ・・・」


やっと気付いたらしく、両手で顔を隠し自分の失敗に気付くのだったが、チェルさんは普通にポンコツ系な女子らしい。


「服と下着の入れる場所は、分けて整理整頓は基本」

「キーくんは私のお母さんみたいな事言う」


イヤイヤ、普通に誰でも思うから。

北に行くに連れ天気が悪く成る、更に目的の街クレメンスに着く頃に成ると、夏に降る雪・・・



喜一達が向かう先は、雪が余り積もらないがたまに吹雪になり、雪が降り止まない雪原の大地が広がる、寒さに強いモンスターに珍しい素材や遺跡が眠る地である。



雪原の入り口の街クレメンスに到着した、駅を出ると何故か雪が舞ってるのに、何故か寒く無ければ厚着してるとムシムシする。


「こっちの雪原入り口の方が、気温高い」


グラストさん達の拠点の街の、北上に確か同じ様な場所に街が在ったな。


「故郷から反対はやっぱ違う・・・」

「そうなんだ・・・」

「うん──」


何かを思い出してる様に、チェルさんは遠くを見つめて居た。

コートを脱ぎ万能空間に仕舞う、何故かチェルさんが恨めしそうに睨む、線路はまだ雪原の先まで続いてるらしい。

万能空間作っても構わないが、出来れば何かの入れ物・・・バッグとか何かの袋とか、偽装出来そうなのにしないとね。


アーティファクトとか言えば、何か見逃してくれそうだし自分の隠蔽用のも、作る必要在るかも・・・手遅れかも知れないが。


チェルさんの宿代を稼ぐ為に、チェルさんに聞くと。


「街の近くの森や、余り人が居ない場所にモンスターが居る」

「此方のモンスターに慣れる必要有るから、一狩り行くか」

「宿に泊まれないと不便」


野宿の防寒対策を早く考えないと、色々旅に不便に成りそうだ。

夕暮れ近くに街を出て、少しするとモンスター? に遭遇した。


【喜一達の前に複数の、酒蒸し饅頭スライムが現れた】


「・・・何だコレは!」

「スライム」

「饅頭だろ?」

「饅頭形のスライム・・・、酒蒸し饅頭スライムは特に珍しい」

「饅頭をスライムにすんなよ!」

「? 普通に色々なスライム居るよ」


何か頭痛がするのは僕だけだろうか?

プルルンとしてるし目らしきのも在るが、見た目完全に酒蒸し饅頭なんだが・・・


「普通にショートソードで倒せる」

「・・・スライムて基本、物理攻撃効かない筈だった常識が・・・」

「キーくんがなに言ってるか、理解できない」


チェルさんは要らない武器を下ろし、ショートソードを鞘から抜き、酒蒸し饅頭スライムに素早く向かい斬る。

1体を斬ると光の粒子になり、更にチェルさんは酒蒸し饅頭スライムを斬る。


「美味しそう・・・」

「モンスターだよね?」

「美味しそうな見た目が悪い、水まんじゅうスライムは特に食欲をそそる・・・」

「──・・・」


喜一は呆れて、ジト目でチェルシーを見るのだった。


チェルさん普通に食いしん坊だけど、重い武器を無駄に沢山装備してるから、燃費悪いのではと思った。


「沢山倒して食べる」

()()()()()()宿代稼ぎだよ」

「そうだった」


試しにクロスクレイモアを出し、軽く構え素早い動きで固まってる6体・・・で良いのか?

酒蒸し饅頭スライムを横凪にスイング斬りして、剣風で吹き飛ばし倒す。


「なかなか良い得物、私もそれ欲しい」


クロスクレイモアを軽く担ぎ、チェルさんに向き言う。


「自分の武器は自分の稼ぎで買わないとね」

「ムッ・・・痛いことを言う」


グリフォン銀貨や金貨が粒子から現れる、何故か酒蒸し饅頭の包装された箱まで現れた、あとコアクリスタルも回収何か色々使えるらしい。


「キーくん、私久々に金貨八枚」

「僕は普通に金貨十二枚」

「キーくんチート」

「運が僕の方が、少し良かっただけだよ」

「チート運」

「そんなチートは無い!」

「もっと狩る!」


意地に成って、モンスターを探すチェルさん。


【近くからチェルシーの前に、巨大酒蒸し饅頭スライムが現れた】


「ロング・・・置いたままだった」

「何をやってるんだかね!」


チェルさんは剣を構え、大地を蹴る様に走り向かうが、巨大酒蒸し饅頭スライムが口から何かを出し、チェルさんに小豆色の何かが掛かるが・・・


「あんこ液ベタベタ・・・」

「あんこ液かよ!」

「サカムシムシ・・・ムシシシ・・・」

「何かキモいモンスターだな・・・」

「サカムシムシームシー!!」


何故か悪口と理解したようで、巨体を高速転がりでやって来たが、普通に真っ二つに斬った。


「ギャグモンスターだな」

「キーくんに、美味しいモンスター狩られた」

「あんこ液まみれで、言われてもなぁー」


酒蒸し饅頭は全てチェルさんにあげた、微妙に不満な顔をしてたが・・・

ドロップに酒蒸し饅頭のマスコットリュックが、何故かドロップしたが・・・可愛くない、しかも何かドヤ顔。


「なかなか可愛い!」

「女子の感覚はやはり理解出来ん・・・」


魔力を使い出来るか分からなかったが、普通に万能空間をリュックに付与したが・・・


「沢山入るよキーくん」

「沢山は入らないかな・・・」

(僕の万能空間許容量の3%位だし・・・)


ともあれ万能空間の許容量は、色々付与により変わるかもの実験が必要らしい。

街に戻るとチェルさんは色々見られてた、まあ甘い香りもしてるし酒蒸し饅頭を食べ歩いてるし、色々こそこそと街の人に言われてた・・・何故か僕まで。

宿は年季の入った宿に入り、風呂は無いがシャワーは在るらしいので、チェルさんは急いで使った。


結局シャワーで洗っても、あんこらしき甘い香りはチェルさんから、暫く香った。

宿のベッドは綺麗だったので、当たりの宿だった・・・野宿がましな位、汚いベッドは世の中には在る。


夕食は硬いパンと野菜スープ、モンスター肉の香草焼き。

何故かチェルさんは宿のおばちゃんに、巨大な皿のサラダのてんこ盛りに、シャケ・・・サーモン? のバター炒めらしき食事が出されてたが、何故かチェルさんは絶望しながら此方を見たが、目を合わせない様にした。


どうやら宿のおばちゃんは、お菓子ばかりで栄養偏って無いかと心配で、サラダのてんこ盛りを出したらしい、まあ普通に有難迷惑だな。


その日はグッスリ眠れた・・・

翌朝チェルさんは姿を消した・・・


「連れの嬢ちゃんなら、何回もトイレに入って・・・今朝見てないね?」

「まさか・・・」


トイレで半分死んだ顔で、宿のおばちゃんに救出された。


「やっぱり、沢山野菜食べると体調悪くなる・・・」

「ゴメンよ嬢ちゃん」


仕方ないので万能薬を出した。


「多少苦いが直ぐ治るよ」

「・・・苦いのイヤだけど、トイレに何回も行くのはもっとイヤ・・・」


宿のおばちゃんに水を渡され、しおしおゲッソリなチェルさんは薬を6錠飲み、苦々しい顔で味に文句タラタラな表情を出してた。


「復活!」

「まあ普通の万能薬ではないし、知り合いから貰った薬だしな」

「何か不安になるから、それ以上言わないで」


何が不安かは知らんが、植物妖精の秘伝の万能薬だから変な物は入って無いしな。

朝食を食べ再び装備を整え、チェルさんは酒蒸し饅頭リュックと長剣。


僕はクロスクレイモアを帯刀し、採取用ベルトポーチと水分補給用の水筒を携行し、目的の小さな道の街道を進む。

途中で冒険者や旅人に出会ったが、道を進んでたがいつの間にか元の道に戻ってたらしい、途中で川が消えたりと不思議な現象に気が付いたら戻って来たらしい。


「皆迷子?」

「さあね」


少し上空のオーロラらしき光と、雪の降り方が一部怪しいがそのまま進み、確かに途中で川が見えなく成りだが地図上には近くに川が在る、更に進むと地図に無い二股の分かれ道を無視して来た方向から、二股の真ん中にを歩き進む。

地図では真っ直ぐだし鳥が見間違える筈はない、間違えたらダンジョンや洞窟では使役する価値が保々失くなる。

生きたダンジョン以外・・・


道がなかった二股の真ん中を暫く歩き進むと、山の切れ目の道に入ると雪は消え緑溢れる、普通の街道に出た。


「なんだか分からないけど、ウナギは何処?」

「色々ツッコム要素だらけだが、ウナギしか興味ないのだな」

「ウナギ食べたら、次は秋刀魚」

「秋刀魚は自分で何とかしなよ」

「キーくんのいけず・・・」


地図を見ながら進み、今日はヘンテコなモンスター出ないなと思ったら・・・


【喜一達はハククサイに遭遇した】


「ハククサイだ!」

「イヤ、白菜のモンスターだろ?」

「アイツ青臭い・・・」

「冬の鍋の具材だな」

「キーくんが食べ物の誘惑を言う」

「誘惑はしてない」


ハククサイ達がジャンプして、根子の方から突撃して来た。


「所詮白菜の有象無象うぞうむぞう、当たりはしない」

「遅い!」


ジャンプ突撃するハククサイを、鞘から抜いた長剣で切り落とす。


「楽勝!」

「ならあげるよ!」


良い高さの白菜を蹴りそれを、チェルさんが斬る。


「ベルさんは顔面で受け止めたのに」

「普通にモンスターを、ボールの様に蹴れるのはキーくん位だし顔面でなんて、私はそこまでニブチンな反射神経してないし、誰かは知らないけどその人は、冒険者向いてない」


本人不在でチェルさんに、冒険者失格扱いされたのだった。

そして倒したハククサイのドロップは、やはり白菜で何故か糸コンニャクが入ったパックまで有った。


「中途半端な食材を・・・」

「?」


喜一の言葉にチェルシーは、食べる以外料理に興味が無いので分からずに居た、基本チェルシーは野宿しない旅をするスタイルだ。


グリフォン銀貨八枚と銅貨二枚を手に入れた、回収したら再び道なりに南下しながら進む。

再び川が現れ山に囲まれた、盆地らしき場所に辿り着き二つの川と平行する様にす住む。


途中で後ろから荷馬車が来たのは驚いた、どうやって来たかは分からないが進むと、今度は人を乗せた乗り合い馬車が僕達が来た場所の方に向かう。


「いきなり交通量増えたね」

「出た街に乗り合い馬車は、無かった気がする」


今の喜一達では例え探し出したとしても、利用出来ないがそもそも旅人でも、滅多にはこの地に辿り着く事は容易たやすくは無いのである。


左右に別れた道を左に進み、昼に成ったから近くの開けた場所で、軽くホットケーキを作る前に『自分の食事は自分でね』と言ったら、絶望的な顔をされた。


「キーくん酷い!」

「携帯食に干し肉やドライフルーツ、乾パンや日持ちレーションとか持ってる・・・待てよ?」


不意に蒸気機関車の鞄の中身が、脳裏に過ぎると食べ物の存在を見た覚えが無い。


「そんなかさばる物は持ってない・・・」

「良く普通に旅して来れたね・・・」


僕は普通にそう思った。


「色々な人に食べ物分けて貰った、ただ美味しそうに食べてたのを見てただけなのに・・・貰えるまで」

「・・・チェルさん」

「ナニ?」

「極悪人だね」

「私は何もしてない」


チェルさんは分かってないらしいが、腹ペコな少女に長々と見られてたらた、食べてたのを分けるわな。

しかも貰えるまでと最後言ってるから、余計にたちが悪い気がする。


「僕は絶体に! チェルさんには、長く見詰められてもあげない」

「キーくん酷い!」

「僕は甘くはないし、つまみ食いしたら此処でウナギまでの道案内は終了ね」

「うぅ・・・仕方ない、残ってる酒蒸し饅頭を食べる」

「まだあるならそれ食べなさい!」

「キーくんだけ一人美味しい食べ物、ズルい」


チェルさんにトドメを刺す。


「ズルくない、自分の食べ物を自炊するだけ・・・食べたいなら、自分で自炊するんだね」

「うぅ・・・キーくんがまた、お母さんみたいな事を言う!」


底無し胃袋の為に、僕がしんどく料理作るなんて嫌だ。


「さてと普通のパンケーキ・・・と」


じゅるり


何か聞こえたが無視し、もう混ぜ終えてるホットケーキの生地を出し、ガステーブルに火を付けフライパンを温め、バターを溶かし濡れ布巾で少しフライパンを冷まし。

火力を下げ再びフライパンを戻し、生地を流し込みゆっくりふわふわを目指し焼き皿に乗せる、一枚目は目の届く場所に置く。


「チッ」


今何か良からぬ音が聞こえたな・・・

再びバターを引き二枚目をゆっくり焼き、ふっくらなホットケーキが完成、一応万能空間にホットケーキを避難させ。


「チッ」


また何か良からぬ音が聞こえたが、先に道具の片付けをして小人達特製の、何かのフルーツジャムを取り出しホットケーキに挟んで。

ナイフで四等分にしてまた万能空間に戻し、お湯を取り出し小人特製フルーツ紅茶パウダーを、お湯で溶かしてテーブルとキャンプチェアーを出し、優雅にキャンプホットケーキを食べる。


「このフルーツ何だろ?」

「私が食べてあげる」

「やらん」

「ケチ」

「じゃあ一人でウナギ食べに行きなよ」

「うぅ・・・」


実際はこの先の道をを進んだ先に、ウナギ屋が在る街が在るから一人で行けないことも無い。

まあ奢ると昨日言ってしまったから、金貨五枚位は奢る予定だけど・・・

酒蒸し饅頭を食べながら、此方を怨めしそうに見るチェルさんだが、無視をし美味しく食べた。


食べ終わり街道に再び歩き出し、一時間で到着し旅人だからと門番に言われ、仕方なく銅貨五枚を払い街に入った。

街は石畳に木組みに石レンガや、漆喰やコンクリート等規則性無い家が建ち並ぶ。


街を歩き探す事にした、一応川に近い方の道を歩いて行くがチェルさんは、川の魚を見て目を輝かせる・・・

暫く歩いてると独特の香りに、鰻屋は直ぐと分かる。


「いい匂い」

「鰻を焼いてる匂いだね、職人が汗水流して一生懸命に焼いてるから、焼く工程で時間掛かるんだよ」

「そんな事より早く、早く!」


うなぎやと達筆な筆捌きの暖簾の店に入った、他の国の文字は普通にうなぎやと書かれて居た。

チェルさんは扉の明け方が分からないらしく、矢印在るのに取っ手かノブを探してるみたいだ。


「こんにちは」

「いらっしゃい、もうじき閉店時間だよ」

「そう開けるのか・・・」

「二名かな?」

「そうです」

「適当に座りな」


川が見える席に僕は座り、チェルさんはカウンター席で出来る工程を見るらしい。

お品書きを見て鰻丼にしたがチェルさんは・・・


「お客様はいかがしますか?」


女将さんらし女性が、僕の次にチェルさんに聞くと。


「全部で」

「・・・え~と」

「うなぎの料理全部でお願いします」


たぶん女将さんは困った顔をする。


「全部は・・・」

「そんなにうなぎわは無いぜ」

「親方、俺が仕入れて来ますか?」

「じゃあお嬢ちゃんのは、お前の修業の成果を出してみろ・・・まあ、仕入れて来た後な」

「私は待つのイヤ」


店が鰻を焼いてる音以外、静かに成る・・・


「早く行ってこい」

「ハイ、親方」


弟子らしき若い職人が裏口から急いで出た、それと同時に他から眠そうな顔で店の奥から、今急いで外に出た若い職人に似た人が出て来た。


「仕込み・・・あれ? 珍しいな、閉店時間間近に客が居るなんて、親父にしては珍しい」

「・・・・・・」


息子を睨む店主。


「後で説教されても私は助けないよ」

「姉貴は出戻りだからて、でかい顔するなよな」


何か空気がギスギスして来たのだが・・・


「やれやれ・・・家のガキ共は・・・」


溜め息しながら店主は鰻を焼く、暫くして鰻丼がやって来ると何故か此方にくるチェルさん。


「これは此方のお客様のです」

「そんなぁ~!!」

「何で自分の所に運んで無いのに、自分のだと思ったんだ?」

「肝吸い御待ち」


急いでチェルさんは戻った。


「あの娘本気で全部食べる気ね・・・」

「普通に此処に来る前まで、酒蒸し饅頭を大量に食べてますが、普通の胃袋ではないですよ・・・たぶん」

「・・・たぶんなんだ・・・て、連れですよね?」


今までの経緯を話すと。


「大陸外のお客様か・・・向こうには、私が知らない鰻が有るんだね」

「滅多には獲れない鰻らしいですが、夏にはそれなりに獲れるらしいですよ」

「世界はひろいねぇ~」

「その国が在る大陸に修業に行こうかな」

「行けるもんならな」


ニヤリと笑う店主。


「お父さん、修業した国を教えてくれないからね」

「エルフの宿屋の店としかな・・・」


喜一は知らない、楽な方法でこの大陸に来れる方法を。


今のは聞かなかった事にした。

お茶をお代わりし完食し会計に向かう、チェルさんは食べるのに忙しいらしい。


「御会計はグリフォン銀貨二枚に成ります」


グリフォン銀貨二枚を払い・・・

何か金貨五枚では済まない気がしたから・・・


「後彼女の分で金貨九枚払っておきますが、オーバー分は自分で払わせて下さいね」

「分かりました・・・またおいで下さいませ」


チェルさんに黙って店を去り、街を出ると分かれ道まで行き日暮れまで進む、森から爽やかな風か吹きチェルさんには色々振り回されたが、色々経験出来たしその経験は食事代にして置いて来たので、文句は無いだろう・・・たぶん


森の間の街道を抜け暫く歩くと、また分かれ道が有ったが、急ぐ旅でも無いし真っ直ぐに行かずに山の方に行く様な道に向かい、歩くが・・・


【喜一はモンスター? と遭遇した】


「にゅ?」

「モコモコした生き物だが、耳は猫だし声も猫だな・・・」


桜色したモコモコ猫? らしき生き物は、何かうるうる瞳で僕を見て来る。

何か心引かれた僕は・・・


「一緒に旅するか?」

「にゅ~」


足にスリスリして来たので了承と受け取り、抱き上げてると片手に乗るミニマムな生き物、手の平には肉球の感触がするので、猫みたいだが・・・世の中には不思議なモコモコ猫が居るらしいたぶん。


「にゅ~」

「お前に名前は桜色の毛並みだし、さくにゃーでどうかな?」

「にゅ~~!」


何か嬉しそうだから、安直な名前のままにした。

こうして僕は旅の相棒が出来た、さくにゃーを肩に乗せ夕暮れに成る前に、街か集落を目指して進んだ。


◆◆◆◇◇◇


「御待ち!」

「うなぎ美味い!」


喜一が出た後も未だに食べてるチェルシー、目を輝かせうな重を食べ始めた。


「・・・この子普通に食べてるけど、普通なら一人で何種類も鰻食べないわよ・・・」

「だから彼氏に捨てられたんだろ?」


そう言われ女将らしき女性は、弟に言う。


「違うわよ、まあ人の噂よりあんたは腕を磨きなさいよ」

「姉貴に言われたくない台詞だ」

「アイツ何時に成ったら帰って来るんだ?」


未だに仕入れに行ったまま帰って来ない、もう一人の弟子に苛々する店主。


「また変な目利きしてなければ良いけど」

「姉貴、それは悪い意味のフラグだ!」


仕方なく昼休憩から仕込み予定だったが、未だに客は居るし他の料理を作って時間稼ぎする事にした。


「俺が他の料理を作る、姉貴はあのバカを早く連れて来てくれ」

「頼んだよシンタ」

「後、拳骨一撃食らわして来いリアナ」

「アイヨ、父さん」


鰻屋の営業はまだまだ続くのだった。


◇◇◇◆◆◆




赤く染まる街並み、モンスター防御の壁は無く電信柱の様な物が、街の周りに立って居た。

街の入り口には誰も居なかったので、普通に入り夕食の買い物に走る女性に、見切り品を考え値札に唸る八百屋らしき店主。

見切り品目当てに目が血走る主婦達、店じまいを始める露店の一部に宿屋らしき建物を発見した。


「宿屋でありますように」


漆喰が一部接がれたレンガが見えてる、建物を目指して行くと看板が在るのが見えて、『門前宿の山羊亭』と書かれてたが食事も出来る場所みたいだ。

まあ門前と書かれてるが、門? かは分からない柱は確かに在ったが、良く使われる門前とは何か違う気がする。


宿屋前に付いて取っ手を握り扉を開く。

店の中は年季が有りそうな床に、丸いありふれた木製テーブルに片目眼帯をした冒険者や、何か防寒具の様なピンクローブ? の女性、仕事終わりらしき作業着姿の団体が乾杯をして居た。

カウンターらしき場所には、ザ・おばちゃん的な女将さんらしき女性が居て近くには、僕より年下らしき少女が僕に在り来たりな挨拶をする。


「いらっしゃい・・・珍しいね、行商人以外の客は」

「いらっしゃいませ、一名様ですか?」


女将さんらしき女性の次に、コックか店主らしきオッサンに声を掛けられる。


「宿屋ならソコの家の嫁に言ってくれ」


カウンターに向かい僕は言う。


「一泊と食事をお願いします」

「連れ居なそうだね、若いのに一人旅とは偉いね」

「何でお母さんは、私とお客様を交互に見て言うの?」


女将さんは言う。


「先に食事にしな、部屋は今行商人の一人以外居ないから、好きな部屋にすると良い。

風呂は有るが・・・娘と混浴はダメだよ」

「母さん!」

「娘を傷物にしたらコロス!!」


ニヤニヤと女将さんは笑い、娘さんは女将さんをポカポカ叩き、厨房から殺意のオーラを感じた。


「その気は無いので・・・」


何故か厨房からの殺意が、違う殺意に変わった気がした。


「自分で作った方が安全かな?」

「少年は料理も出来るのかい、娘とは違うね」

「余計な情報を流さないで」


客達は温かな目で娘さんを見て居た、ニヤニヤとまだ笑う女将さん。


「一泊銀貨九枚だよ」

「安!」

「風呂は銀貨五枚ね」

「・・・」

「娘はプライスレスさね」

「お母さん!」


僕は色々遠慮したいので・・・


「・・・他の方に譲ります、ゴメンナサイ」

「私何故かフラれたよ、お母さんの悪フザケのせいで!」

「フラれたねユーリー」

「お母さんのバカァー!!」


なんだか知らないが、頑張れ娘さん。

懐から財布を出し、代金を払い。


「宿は奥だよ、二階は誰も居ない部屋だらけだよ、自炊なら階段の先に行けば外に出る扉が在るよ。

風呂はお客用は階段の近くの通路の先だよ」


さくにゃーを洗いたいし、先に部屋を決めラフな服装・・・まあ、一応部屋着長袖Tシャツとズボン姿で一階に戻り、お風呂セットを万能空間から出して風呂に行く。


風呂はお客時間帯と札が有り、木製の扉をスライドして中に入り、脱衣場で脱ぎ風呂に突撃した・・・


何の変哲もない風呂としか言えない、コンクリートで作った湯船に、数ヶ所の蛇口と鏡・・・木で作ったらしき桶。


「まあ汗流せれば何でも良いか」

「にゅ?」


さくにゃーを洗い、自分も洗い桶にお湯を入れさくにゃーを入れ、二人? でお風呂を堪能した。

さくにゃーを風と炎の基礎魔法を合成した、熱風で乾かし自分の髪も乾かす。


調理が出来る服装に変え、洗濯はまあ今日は止めた。

木をくべる竈と水場と調理場が在るだけ、万能空間から買溜めしてある食料を取り出し。


「外ならカレーが鉄板だが、僕は今猛烈に肉が食いたい!」

「にゅ?」

「さくにゃーには魚だね」

「にゅ~ん」


分かり易いなさくにゃー。

さくにゃー用に万能空間の鮮魚から、太刀()()()のモンスター肉の一部を出す。

最初の旅の港で買ったが、秋刀魚では無いらしい・・・

まあ身だけしか売って無かったので、詳細は不明な魚モンスターだ。

魚用まな板を出して焼き易い大きさにする、肉用まな板を出し太刀秋刀魚は皿に置き、さくにゃーを見るとまだ? て顔の様だ、米を洗い土鍋に入れゆっくりガスコンロで炊く。


ハラミをステーキ肉風に切り皿に乗せ、グリルを万能空間から出して小人印の備長炭を出す。

炭区画に備長炭を入れ、炎の魔法で備長炭に着火するまで熱を与え、赤くなったら網と鉄板を載せる。


太刀秋刀魚を網にハラミステーキ風は鉄板で焼き、良いタイミングまで焼く。

何か複数の視線を感じるが無視、団扇で火力を調整しハラミステーキ風は完成。

太刀秋刀魚はひっくり返した方も、火が通ったらしいが魚の焼けた匂いは、店に影響を与えたのは言うまでも無いが、僕がそれを知ったのは食べ終わり片付けをした後の話だ。


「何を焼いたんだい?」

「魚と肉ですかね?」


訝しげに聞く女将さん。


「私の知らない匂いだね?」

「僕も初めて焼いたモンスター魚部位ですし」

「モンスター魚の肉か・・・」

「海ですが」

「行商人でも難しい物を、良く手ぶらで持ってたね?」


更に訝しげに聞く女将さん。


「それは秘密です」

「何だか知らないが、便利なアーティファクトが在るんだね」

「・・・・・・」

「少しそれを分けて貰えないかね?」


女将さんが困った顔で言うが。


「そう言われても・・・」


満足そうに手の平で寝るさくにゃー、人間一人分をペロリと食べる姿は、チェルさんと良い勝負かも知れない。


「匂いの物をて客が沢山来てるんだよ」

「そう言われても・・・」

(無茶言うなこの女将さん)


結局折れない僕を諦めて、店に戻った女将さんだった。

翌朝外の調理場は使用禁止に成って居た、まあご飯は簡易レーションで水を入れ科学感応で炊くご飯と、納豆と卵に納豆専用醤油を出し、適度に混ぜてご飯を丼に出し更に混ぜ。


お茶を淹れて、緑茶と納豆ご飯を食べる。

何か好奇な視線を感じるが無視、さくにゃーには出汁用の高級鰹節に煮干しを出したら、直ぐに無くなった・・・一体どうやって食べたのだろうか?


食器を洗い、茶柱が立つ湯飲みを見ながら考える、街を観光したら何処に行こうかと。




チェル「キーくん居ない」

女将さん「貴女が食べてる時に出たわよ、貴女の食べた大半は彼が払ってくれてたけどね」

チェル「グリフォン銀貨何枚?」

女将さん「金貨よ」

チェル「そんなバカなぁー!!」


チェルシーは自腹でギリギリ払えたが、喜一が多めに払わなければ、チェルシーは食い逃げ客に成って暫くバイトの日々だっただろう。

あと何故グリフォン銀貨て思ったかは、金額を見ずに食べてたからである。

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