となりの事業部のヴェスプッチ終
結局、ヴェスプッチとは以降ずっと話せず、
ついに彼女が辞令で別の支社にいくことがわかった。
ただあの日以降拒絶された俺は
何か一つ話しかければいいと思うのに、
口も、体も、まるで金縛りにあったかのように動かすことができない。
その縛りが1日、1日経つたびに重くなる。
そのまま、彼女は飛びだってしまった。
俺は、あの時、彼女が被っている仮面に対して、
何も言わなければよかったのだろう。
もし、言うとしても、
もっと心の砕けた関係になるべきだった。
きっと、時期尚早だった。
そして、彼女にももっと配慮できるようになるべきだった。
きっと『新大陸』って言葉も名前的にキャラが立つから使った。
集団の中で生き抜くための、彼女なりの必死な立ち回りだったのだろう。
だからこそ、航海士の帽子まで被って本当の自分を人間社会から守った。
勝手に深入りするような場所ではなかったのだ。
女の子と話せた=女の子になんでも話かけていい訳ではない。
そりゃキャバクラでもスケベすぎる話は後ろの怖いお兄ちゃんが出てくるし、ムードに浸る余韻もないのに、ホテルに誘うなんてのもご法度だ。
てか、そんなの当たり前なんだ。
なんで気付かなかった。
リテラシーがないのはわかっていたが、なんでもっと慎重にいかなかったのだろう。
これぞ俺の「驕り」だった。
女性と話せたことの達成感がその後のプロセスを無視し、破壊したのだ。
ただ、ヴェスプッチは俺に女性と話す『勇気』を与えてくれた。
確かにヴェスプッチのことはまだ多少なりとも引き摺っている。
でもそれ以上にビビらずに女性へと話せるようになった。
女性と仕事のバディとして組んでも、ちゃんとコミュニケーション取れるようになったおかげで仕事面での評価も上がってきたし、まだ結婚をしたい訳ではないが、合コンとかいってもなんか浮いちゃう人間にはならなくなった。
2次会へと一緒にいける人間になっただけでも進歩と言えよう。
***
彼女は俺に『新大陸』を見せてくれたんだー。
***
そう、思っている。
また、いつか会えた日はもっと立派な俺で、アイツに会おう。
「成長したね。」って笑顔で言われるようにー。
皆様、此処迄ご査読頂き、誠にありがとうございます。塵芥杜暦新と申します。
ちなみに読み方は想像にお任せします。嘘です。
「ちりあくたもりれきしん」
と詠んでます。一応。むしろなんか言い当て読みあればご教示下さい。
僕はただの一介のサラリーマンにしか過ぎませんが、どうせ一度の人生ならとこのようにショート小説書いたり、時勢について少し語ってみたりしたがる者でございます。
今後も仕事の抑圧から解放されたくなったら文を書き進める。
そんな感じになっていくのかなーとは思います。
さて、今回初めて書いた「となりの事業部のヴェスプッチ」ですが、自分自身男子校だったもので、ちょいと女性を神格化しがちな傾向にあります。その部分にフォーカスを当てて書いた感じです。
んで「女心と秋の空」というように女性の心をとらえるのは難しい。たぶん与謝野晶子ぐらいしかできません。ってところも書けたらなって。んで男は女を知ってまた大人になっていくのさ。ってのをなるべくカオスに書きたかったって感じです。
これは長編化できるなら、色んな事象への「新大陸」発見を「俺」と「ヴェスプッチ」がやっていくみたいな。そんな日常もかけたらなーと思っています。
今回は1作目ってこともあるので、スパンと切ってエンドへ向かいました。
もし、この設定で色々やって!って要望があったら、また、ヴェスプッチはやってくるかもしれないです。(誰か絵師さんの力をオラに分けてくれ・・・・・)
以上、些末ながらお付き合い頂き、ありがとうございました。