となりの事業部のヴェスプッチ②
アイツとは何者か-。
名前はファラン君。とでもしておこう。
幼馴染で昔からの付き合い。男。
俺と違って年少さんから大学生迄ずっとモテ続けた。
女性の需要に対して、一個体では供給をしきれていない。
ずるい。
取分寄越せや。
社会人になってからもそれは変わらずで、結婚する気も更々ないようだ。
とにかく俺は女性へのコンタクトのハウツーを聞くことにした。
「珍しいなー。お前がリアルの女性への接触を求めるなんてさ。よっぽど気になったんだろうな。大学時代合コン誘っても空っきしだったお前が、だもんなぁ。で、どんな娘なんだ?」
経緯を話す。
アイツはみっくちゅジュースを置き、語りだす。
「ヴェスプッチって名前はすげーな。
俺はあの時代よりもローマとかマケドニア、ギリシャが好きだからさ。
ファランクスについて語り合いたいもんだよ。
かくかくしかじか・・・」
忘れていた。アイツは俺と話すとアホになる。
とにかく子供の頃からコイツも歴史が好きで、なかなかのもんである。
その中でも、大好物はファランクス。
この現世でも最強の軍隊として已まない。
女性の前では雄弁なコイツは2人の男子校トークになると、こうなるのだ。
「すまん。取り乱した。
要はお前に必要なのは、『勇気』だ。
踏み出そうという『勇気』。
今までもそうだろ?
お前は俺が与えたチャンスに対して拒絶し続けた。
その結果がコレだ。
女とまともに話せず、そして免疫もないから、どう働きかけていいかわからない。
極論だがその時点で人間の50%を否定しているようなもんさ。」
プロセスはともかく、
結果妻帯者じゃないお前が言うなやと喉から声が出かかったが、それはやめた。
そんなことしたって無駄。
俺は今日進む為に、その後押ししてもらう為に来たのだから。これは激。
友が故に言葉も突き刺さるし、むしろありがたいと思うんだ。
生まれ変わるんだ俺はー。
ファランの野郎には飲み物代をおごってその場を後にした。
ファランはうれしそうにみっくちゅジュースを持って帰って行った。
明日は昼を一人で食う生活を辞めようー。
そう、ヴェスプッチを何とか誘ってみる。
そう、決めたとある日の休日。