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ヒーロー
「卒業アルバムに載せる作文を書かされただろ」
互いの近況報告を終え、脈絡もなく友人はそんな話を始めた。哲也は「ああ」と頷いて、カップを持ち上げた。友人は、コーヒーを啜る哲也を見ながら笑みを浮かべた。「俺、欲張って、あれもこれも、って色んな夢を書いたんだ。尤も、他愛もないものばかりだから大概のものは既に叶えた。犬を二匹飼いたいとか、剣道で二段以上とりたいとか、お巡りさんになりたいとか。ただ一つ、叶えてない夢があるんだ」友人は悲しげに笑い、人差し指を立てた。「正義のヒーローになるって夢なんだけどな」