結:繋ぐ徒花 壱
食べられる、というのは恐ろしいものだ
それが人の形をなしているなど、あってはならない
冒涜がすぎる
それが、目の前で執り行われようとしてる
「すおう、ご飯だよ」
「うん」
全身白染めで端正な顔立ち
まるで御伽話に出てくるように綺麗な、村の長である男に連れてこられたのは、地獄だった
血染めの社
血痕が残る床
血色の、小さな、鬼
ここで行われていることは物を知らない子供の私でも容易に想像がついた
でも、逃げられない
膝が笑ってしまっている
緊張で、全身がちがちで、今立ち上がれたとしてもすぐに転がってしまうだろう
嗚呼、それならもういっそ諦めてしまおう
生きることを諦めよう
そうだ、天涯の孤独からも解放される
忌み嫌われることもなくなる
嗚呼
それなら
居心地くらいは良さそうだ
目を、瞑る
もう光を見ることはないけど、これでよかったのだ
できることは何もない
だって
「…ねえシロ、この子叫ばないどころか声もあげない
どこか悪いのかも」
私には、声がない
「この子は声が出ないらしいよ」
「可哀想だよ
せめて、生かしてあげよう?」
「いいよ、じゃあしばらく一緒に住まわせてあげよう」
え?
私はしばらく目をあけて呆けてしまった
明らかにこの鬼は人を食べてる
今だって歯牙にかけようと私の肩を掴み喉元に鋭い歯をあてた
でもやめた
やめたのだ
「そういうわけだから、しばらくよろしくね。クチナシ」
そうして白い彼は、教えてもいない私の名前を呼んだ