表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/15

第9話「魂の契約①」

新連載です!

ブックマーク、評価が励みになります。

何卒宜しくお願い致します。

「ふむ……お前達の意思と気持ちは良く分かった。とりあえず一次試験は突破というところだな」


「え?」

「お父様」


 聞き慣れた声が、唐突にした。

 抱き合うアルセーヌとツェツィリアの傍らに、いつの間にかルイが立っている。


 先ほどは、一瞬だけ慈父のような優しい表情をしたルイであったが……

 今は一変し、全く感情を表してはいない。

 冷たい氷のような眼差しで、ふたりを見つめていた。


 ツェツィリアは、アルセーヌからそっと離れ、ルイへと向き直った。


「一次試験は突破? ……では、お父様。認めて下さるのですね? 私がアルセーヌと愛し合うパートナーになる事を……」


 アルセーヌとツェツィリアがパートナーに……

 問われたルイは、肯定も否定もしない。

 軽く鼻を鳴らし、


「ふむ……だが、言うは易く行うは難し……だ」


 と意味深な言葉を述べた。

 その諺は、傍らで聞いたアルセーヌも知っている。


 ……口で言うのは簡単、しかし実行するのは難しいという意味だ。


 ルイの言う意味は、アルセーヌにも分かる。

 人間と異種族の愛を成就させるのは、不可能ではないが困難極まりない。

 更にツェツィリアは、様々な種族に忌み嫌われる夢魔なのだから……


 当然ツェツィリアも、ルイの言った事は承知している。


「はい……お父様の仰る通りですわ」


 だが……

 同意したツェツィリアへ、ルイは更に厳しく言い放つ。


「ツェツィリア、まだまだ認識が甘い……お前達の愛は、口先で言うほど簡単ではない」


「は、はい!」


 「ぴしり!」と言われ、いつもは冷静に、落ち着いて話すツェツィリアが珍しく動揺する。

 厳しい言葉を聞き、傍らでアルセーヌも唇を噛み締めていた。


 ルイは更に言う。


「片や夢魔、こなた人間という、素性の全く違うお前達ふたりが……真に、愛し愛される関係になるには厳しい試練が生じる……」


「は、はい!」


「ふたりが愛を成就させる為には、いくつもの困難と逆境を乗り越えねばならぬのだ」


「はい、お父様! 頑張ります! ツェツィリアはどんな困難も、必ず乗り越えてみせます」


 きっぱりと決意を述べるツェツィリアへ、ルイはひとつの質問を投げかける。


「だがツェツィリア……お前は私との契約を忘れてはいまいな? 魂の契約を」


「はい……それは分かっております」


 ルイとツェツィリアの会話を、見守っていたアルセーヌであったが……

 とても気になる言葉が聞こえ、つい口を挟んだ。


「け、契約!? ルイ! 契約って何だ!」


 アルセーヌは思い出したのだ。

 ……ツェツィリアも言っていた。

 それも……確か、魂の契約と……


 ルイは、問いかけたアルセーヌを鋭い眼差しで見据える。

 冷え冷えした怒りの波動が放たれ、急に辺りの大気が凍り付く……


「おい……小僧。確かに私を、その名で呼べとは言った」


「ひ!」


「だが……けして呼び捨てにはするな……口の利き方には気を付けろ。二度は許さぬ」


 口調こそ平たんではあった。

 しかしアルセーヌの物言いが、ルイの機嫌を損ねたのは明らかだった。


「う!」


 ルイの恫喝を聞き、アルセーヌは全身が硬直した。

 まるで伝説の巨人の手で、強く握り潰されるような圧力を覚える。


 先ほどの会話でも感じた。

 ルイは、アルセーヌなどあっさり殺すと。

 虫けらのように……


 可愛がっているらしいツェツィリアの『想い人』であったとしても、全く関係ないだろう……


 ただならぬ雰囲気に、ツェツィリアがふたりへ割って入る。


「お、お父様っ、も、申しわけありませんっ! 私が彼に代わってお詫び致しますっ」


 「失言した」アルセーヌの代わりに、必死で詫びるツェツィリアをスルーし……

 ルイは腕組みをし、小さく頷いた。


「まあ良い……小僧、お前の気持ちに免じて特別に答えてやろう。魂の契約とは文字通り、魂を対価に結ぶ契約だ」 


「た、魂を対価に? で、ですか?」


 アルセーヌは、ルイが言った、魂を対価とする契約を聞いた事がある。

 魔導書で読んだ事もある。

 確か……怖ろしい悪魔が持ちかける……

 契約成就のあかつきには、死をもたらすという、禁じられた契約だ。


「うむ……人の時間で計る事10年前……私はツェツィリアへ問うた。生きるか? それとも死ぬかと」 


「生きるか、死ぬか……」


「その際、ツェツィリアは答えた。はっきり、生きたいとな……だが当時のこの子には素晴らしい素養はあっても、あまりに幼くひ弱だった」


 ルイがそう言うと、ツェツィリアは我慢出来なかったのか、つい口を挟む。


「はい! お父様は命を助けてくださり……更に……心身ともに弱かった幼い私を鍛え、様々なものを与えて下さいました」


 しかしルイは、ツェツィリアの言葉に反応せず、アルセーヌへ話を続ける。 


「……時を経て、ツェツィリアが夢魔モーラへと完全覚醒し、身も心も完全な魔族となった時……魂を私に渡す。つまり魔界の住人となり、私の忠実な配下となる、そう約束したのだ」


 ツェツィリアが、ルイと交わした『魂の契約』

 完全な魔族となった彼女が、魂を明け渡し、魔界に棲むルイの配下となる。


 『魂の契約』……

 それはやはり、『悪魔の契約』同様に、怖ろしい死の契約だったのだ……

いつもご愛読頂きありがとうございます。


※当作品は皆様のご愛読と応援をモチベーションとして執筆しております。

宜しければ、下方にあるブックマーク及び、

☆☆☆☆☆による応援をお願い致します。


東導号の各作品を宜しくお願い致します。


⛤『魔法女子学園の助っ人教師』

◎小説版第1巻~7巻

(ホビージャパン様HJノベルス)

大好評発売中!


◎コミカライズ版コミックス

(スクウェア・エニックス様Gファンタジーコミックス)

☆最新刊『第3巻』大好評発売中!!

第1巻、第3巻重版!

※月刊Gファンタジー大好評連載中《作画;藤本桜先生》

☆11月18日発売の月刊Gファンタジー12月号に『最新話』が掲載されます。

一見超ドライですが、本当は優しいルウ、可憐なヒロイン達の新たな魅力をどうぞお楽しみください。


また「Gファンタジー」公式HP内には特設サイトもあります。

コミカライズ版第1話の試し読みも出来ます。

WEB版、小説書籍版と共に、存分に『魔法女子』の世界をお楽しみくださいませ。


マンガアプリ「マンガUP!」様でもコミカライズ版が好評連載中です。

毎週月曜日更新予定です。

お持ちのスマホでお気軽に読めますのでいかがでしょう。


最後に、

「帰る故郷はスローライフな異世界!レベル99のふるさと勇者」《完結!》

「絶縁した幼馴染! 追放された導き継ぐ者ディーノの不思議な冒険譚」

も何卒宜しくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ