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非日常の出会い

 相当な強者であるグンナルを困惑させた、壮絶場景の刻は僅かだった。

 本来の前座で余興である。一応に、次がメインだと観客もちらほらと先に足を進めて行く。当然、テレーゼの騎士たる矜持は別だったが、この場で叱咤する訳にも行かず、彼女は、アシッユに若干絡んでいた。

 

 ただ、その場景を他所に、当たり前でライネンに、呆然と驚愕を出させたクローゼは、グンナルの肩に当然と手を置いていた。


「始めから、俺が分かってたら、もう少し出せただろう。なかなかだった。また、試合(しあ)おうな……グンナル」


「あんたはなんだ?」

「ああ、それより、さっきのはなんだ?」


 馴れ馴れしいのもだが、普段から質問に質問で返すなと、クローゼは自身で言っているのを棚上げで、好奇心を出していた。その雰囲気は、いつもの鍛練を終えた風である。


 彼に剣の才能は恐らく無いが、それでも欠かさず続ける鍛練と特異な力で相当になった。


 それでも、試合(しあ)うでは、勝てない者もいる。また、彼側近を含め相手をする者は、誰というでも無く、その力を開花させてきた。


 テレーゼの前に彼についていた騎士は今、ゴルダルード帝国最強の騎士になっている。一軍の将という才が先に立つ、テレーゼにしても、彼女の上には数える程しか強者はいない。


 そんな日常の延長のままに、それと同列な感覚で当たり前に話し掛けるクローゼに、流石のグンナルも渋い顔をする。


「次があるなら、言うわけ無いだろう」


 そう、当たり前だが、切り札なら種明かしはそうそうしないだろう。


 ――敢えて出すなら『刻打ちの技』である。効果は、単純に相手の動きを弾指の間止めるものだ。

 威圧の咆哮(ソウルブレイク)や邪眼等でも可能であるが、グンナルのそれは、一瞬で凡そ一秒を止める。分かりにくいかも知れないが、そう言う事になる――


「確かに。まあ、何かやったのが分かればそれていいさ。案外素直なんだな」


 クローゼはそう言って、「なっ」となるとグンナルの肩をポンポンとして、近くにいたライネンに振り替える。


「ライネン殿。最強の文字はそのままて良いと思う。私が保証する」


 と訳のわからない言動で、ライネンに更なる混乱をあびせていた。


 ただ、一応にクローゼらしい様子になる。


 それを見る、やれやれと言った風のエイブリルも、そう捉えていた。実際に、あの流れで制止を入れるのは、不自然だと彼女は判断した。


 ――感じはいつもの様に柔らかくなったから、これはこれで良かったのね。


 と、エイブリルは、この先で暴れられるよりは良かった、との雰囲気になる。


 いつもの様子を言えば、クローゼが『ピクニック』と言うクエストの視察や、『サバゲー』という彼専属の私兵の訓練に、『運動会』と言ってしまう、大規模な軍事訓練等を終えた後は、さっぱりした表情になる。


 今のクローゼは、それと同じ雰囲気だった。


 この中流れで、当然と言えば当然だが、事情を把握していない諸侯から主従契約の申し出もあった。ただ、それもあしらい、きっちり、傭兵団が支払うには些かな金貨を受け取る。


 そして、若干どうでも良い雰囲気でクローゼは、競売の場となると建物に向かった。付き従う者達は始めからそうであったが、クローゼが当然と中に入るので、続く事になる。


 ただ、入り口では、キュトラ云々では無く、止められもしない。

 そこには、入り口に立つ主催者側の者もいたが、それなりの大金を持つ恐そろしいほど強い男を、止められもしないなら、止める必要はないの様子に見える。


 そして、人流れは大きなホールに続いていた。





  主催者側の説明が続くホールには、それなりの様相の者達がいた。先程の見物客も大半は、当然な様子に入っている。


 そんな中、クローゼは入って来たままの様子で、ホールの横壁辺りに立っていた。グンナルとの手合わせで満足して、興味が薄れているように見える。


「で、シャケ。何が出てくるんだ」

「私が承知しているまでで言えば、 イスフェアの男女が――」

「――イスフェアってなんだ? あ、それもだが、ビギンガーってなんだっんだ?」


 キュトラの答えの前に、クローゼは質問を被せる。エイブリルが、一瞬、答えようとしたのか僅かにクローゼの背中を見直した。ただ、隣のキュトラがクローゼに、後からの問いに答えた。


「ビギンガーは、北壁付近の部族……いいえ、武装集団と言った方が……。大方が、極北鹿に引かせた雪車(スレッジ)を使い、『賊』紛いな事や、グンナルとか言う者の様に、傭兵等をする者や、雇われの私兵等をこなす者の総称と言う所です」


「ほぉー。なら、あいつら、みんなそうなのか?」

「いいえ、あの傭兵団はファルリンド王国北部の者かと。ビギンガーは、恐らくグンナルとか言う者だけだと」


 思わず聞いただけな雰囲気が、クローゼにはあった。ただ、なし崩しにキュトラに向いて行く。


「ふ~ん。なんだ、あいつだけか異能の戦士(ベルセルクル)ってのは。あれだろ、何か特殊な技か術使うんだろう」


「あの男が、異能の戦士(ベルセルクル)なのは間違いありません。特殊ななら、一般的には、左様で……実際は分かりませんが」


「ああ、そうか。それで、イスフェアは人か、部族か何か?」


 その会話の感じに、一段高い舞台上から、競売の開始の合図らしきが被さってきた。


「御来場の皆様方、大変お待たせいたしました。これより、今開催の競売の締めくくり。恐らく、これ程の商品をお届け出来るのは、最後かと存じます」


 それで、クローゼは舞台の方へ顔を向けた。取り敢えず、見る目的だったが、主催者の司会進行らしき男の言葉に、首を鳴らす仕草をする。


「商品か……」


 ――単純に〇身〇買だからな。実際、聞くと気分が良いもんじゃないな。


 呟きに合わせて、現実的な事を思わずであった。ただ、そう言う世界き来てしまったのだから、そう言うものだと、自身を落ち着かせる。


 ――まあ、思っいきり、人〇してるし、倫理感がどうのと、言える立場でも無い。


 擦り合わせの上で、諦めを乗せたクローゼの独り思いの世界は、続けられていた司会の男の「それでは開始致します」で止まる。


 言葉と同時に、奥まった場の幕が開き、中から人影らしきが歩み出てくる。うつむき加減で、クローゼには表情はわからないが、水色か? の透き通る長い髪が印象的に見えた。


 歩み来る中で、デコルテが強調された真っ白なコットのドレス風に、縫製で強調された身体のラインが目を引く。その強調を、床に引きずる程度の長さで、シースルーを思わせる脇刳丈長の上着(サーコートベール)が際立たせていた。


 そして、促されたのだろう、上げた顎で分かる優麗な顔立ちが、清楚な雰囲気と相まって、クローゼに、神々しさすら魅せていた。


 ただ、首にある違和感を除いて……。


 しかし、その場の者達はそれを無視すかに、誉め称える歓声をあげる。その状況で、困惑がクローゼを抜けて、彼の心を揺らしていた。


 ――フリーダ? はぁ? エルフ? えっ?


 混乱の思考に至った、クローゼのその先には、吸血鬼(ヴァンパイア)のアリッサやカルーラらの起因である、起因の吸血鬼オリジナル・ヴァンパイアなフリーダと、瓜二つな、エルフらしきの不安げな表情があった。


 フリーダは魔王オルゼクスの正妃であり、獄神ガイアザークに、宿した神具の欠片を貫かれ、クローゼの腕の中で消えて言った女性になる。


 ――ひょっとしたら、生まれ変わり? 転生したのかも。いや、なんだ?


 思い返しから、困惑に続き、クローゼの回る頭は更に混乱する。


 それほど、彼に取ってフリーダは、母性という点で特別だった。勿論、敵だったのだが、しかしである。

 そして、クローゼにしてみれば、そんな彼女がそこには居たのだ。ただ、エルフらしき、イスフェアという亜人ではあったが。


 続く賛美な雰囲気と、その女性の益々不安げな表情に、クローゼは自身の混乱を自力でねじ伏せる。


 そして、近くにいる、アッシュに声を投げる。


「俺の見間違いか?」

「いいえ、俺も……たぶん、同じ事思ってます」


 クローゼの言葉以前に、アッシュは目を丸くしていた。そして、アッシュもある意味で母親の様な、フリーダという女性を見間違えはしない。


「フリーダだろ」

「耳が、あれ、でも、フリーダ様です」


 クローゼの確認に、混乱が見えるアッシュは、それを肯定した。それを見たクローゼは、キュトラを一瞥して、声を出した。


「俺も参加する。と言うか、あれは駄目だ。何とかしろ」

「えっ、あ、あの」


 たじろぐキュトラは、クローゼの怒気か覇気にあてられたのか、次の言葉はでなかった。

 そこに司会の男が、参加方法の確認と続けて開始する旨の話を場に流れしてくる。


 それでクローゼは、更に、催促をキュトラにぶつけた。


「何か、札がなんかと言ってるぞ。兎に角行け。暴れたくない。いや、駄目とか言ったら実力行使する。いいか、そう伝えろ!」


 横暴を乗せた言葉に、急かされたキュトラは「はっ、はい」と舞台の側に走っていった。


 周りには聞こえていた。若干、空間が出来る。恐らく、先程のを見ていた者が何かを流したのだろう。

 それに、エイブリルもテレーゼも困惑する。ただ、その様子に、クローゼは平然を舞台の側に投げる。


「と言うか、金貨何枚か言え、俺が払う!」


 良く通る魔力のこもった声に、今度は場全体が騒然とした。


 エイブリルもテレーゼも止めなければの雰囲気だが、彼女達も、対面では無いがフリーダの事は知っている。そう、クローゼからも聞かされ、エイブリルに至っては、前任の副官の報告書で、どれ程なのかを知っていた。


 その状況で、主催者側がクローゼの納得を得て収拾するまでには、暫く刻を必要とした。

 ただ、主催者側に明らかに選択肢は無かった様で、当然、クローゼも参加する事になる……。



「全く、何が形式だ! 非合法の癖して。こっちは、百歩譲ってやって払うと言ってる」


 随員の彼女達も、拘る感じなクローゼの雰囲気は、初めてだった。掛ける言葉を探す様子に、競売を開始する初値――最低枚数三〇〇枚が提示された。


「五〇〇だ!」


 クローゼの声が響く。凡そ、彼が今持っている全部である。一般的な感覚で言えば、既に一〇倍であった。

 単純に、クローゼの声に乗せる覇気と先程雰囲気が、次を封殺するかに見えたが、反対側から声がする。


「五五〇」


 一瞬、クローゼは声の方を見る。人だかりで誰か分からないが、続く彼の「はぁあぁ、誰だ!」の暴言らしきで引き波の空間が出来、声の男があらわになった。

 それで、一見して優男風な長身の男がクローゼにも見えた。


 ――なるほど、声を出す奴がいるのか。


 と、クローゼはそのまま「脅しが足らなかったな」と呟き、テレーゼとエイブリルの視線をさらっていた。




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