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【Episode4】船出

 サバイバル0円生活4日目。


 ・・・あ?その前の3日間のこと?

 知らねーよ、そんなもん。思い出したくもないぜ。





 ともかく、だ。僕たち(主に僕)は辛い辛いサバイバルの日々を乗りえて、この日、ようやく新天地へと向かうことになった。



「サア、準備ハイイカ?ウー?」


「あたちはいつでもおっけーなのじゃ!」


「僕も準備はできてるぜ!」



 真っ白だった僕の肌は、ほんのりと焼けた。そして、筋肉の盛り上がりや質感が見えるようになった。ちょこっとだけな。



「この島ともお別れだな・・・。名残惜しくは・・・ないな。」


「おなかへったー。はやくまちにでて、おいしいごはんたべたーい!」


「ケーキ、ケーキ!ウー!」



 やれやれ酔狂もあったものじゃない。


 ・・・ま、いっか。こういうユルさが僕たちのいいところだろうからね。



「それじゃ、チャッチャと行きますか!」



 僕は剣を振りかぶり、海の向こうを指し示した。



「出でよ!海を突き進むジェット―"ザ・ブレードスター"!!」



 剣が光る。そして、刃が質量を越え、大きな船へと進化していった。


 そして、着水!


 深紅に包まれた細長い胴体と大きなウィングは、まるで海を割いて現れる太陽、それを表した剣のようだった。



「どうだ!この前とは見違えるだろ?」


「おー!ちゅうにくさいなまえはともかく、すごくかっこいいのができたのう!」


「今マデ見タコトモナイ船ダ!デモ、コレナラ町ニ出ラレル!」



 そりゃそうだ。でないと、この3日間のしんどい努力が何だったんだって話だよ。



「して、ひとつぎもんなのじゃが?」


「何、ツクヨミ?」


「なぜに"おおぞらをとび"そうな、すたいるをしておるのじゃ?とぶのか?」



 ふむふむ、そこはみんな疑問に思うところだろうな。



「しかし、残念ながらコイツは飛べない。」


「ほう?」


「考えてもみてくれよ、ツクヨミ。

 理由もなく最初から飛空挺が使えるとか、ロマンがないじゃん?もちろん、某大作RPGみたいに、主人公が飛空挺部隊の隊長だったり、もしくは劇団で空を駆けまわっているなら話は別だぜ?

 でも、苦労せずに楽々世界を飛び回れるなんて、僕と物語のポリシーに反するよ。」


「めたいはつげんをしおって・・・。いろいろ、きみのいっていることはぎりぎりじゃぞ?

 ま、それはおいておいて・・・ほんねは?」


「いや、ホンとムリっす。技能不足っす。強いて言うなら、最大MPが足りてないんで。」



 いや、実はね、飛べるかどうかは試してみたんだよ。毎日の特訓の後、みんなが寝静まっている間に色々試してみたんだが、結局飛ぶどころか浮くことすらできなかった。

 けど、さっき言ったように冒険を続けていけば、いつかは飛べるようになるはずだと思う。今はその日を期待を込めて待つしかないだろ?



「いや、いいんじゃいいんじゃ。このあいだ、ちからをてにいれたばかりじゃからのぅ。いきなりぶーすとをかけんでいいわい。」


「あ、ああ、了解。」





 そして僕たちは船に乗り込んだ。



「ほほう!せまいかとおもうたが、あんがいひろいもんじゃ!

 かいてきかいてき!」


「喜んでもらえて何よりだ!

 それと、一応小さいながら保存庫の設備もあるから、サバイバルでとった食料を持ち込めるぞ。」


「おー!

 くだもの!あたちはくだものがよいぞ!」



 ツクヨミはキャッキャッと子どもみたいに騒ぐ。最初に会った時の大人びた印象からはかけ離れている。もしかしたら、身体同様に精神年齢も幼くなっているのか・・・?



 対して、うーちゃんの方はわりと冷静だった。



「フムフム、ワタシノ知ッテイル船トハ大違イダナ。オ前タチノ世界デハ、コウイウノガ普通ニ飛ンデイルノカ?」


「いや・・・―。」



 一応言っておくが、この船は僕の妄想だぞ?ゲームに出てきそうなキザなデザインを意識したんだ。だから、こんな船は、僕のいた世界ではしばらく生まれそうもない。


 しかし、だからこそ僕はこの船が気に入っている。





「そろそろ出発の時間だ!」



 食べ物は積み込んだ。飲み物も十分。もしもの時の釣りざおと、うーちゃんお手製の傷薬―。

 あとはちょっと心配性が顔をのぞかせているのが気がかりだけど、きっとこの輝く海にとっちゃあ、なんてこともない。



「いっけー!!」



 僕はレバーを引き、アクセルをかける。ゴオオとエンジンの音とともに、機体が揺れ出した。



「おお。うごいてる!うごいてるよ!」


「あったり前だろ!船なんだから。」


「そうじゃな。そうじゃった!」



 前の座席にいるから顔まではわからないけど、ツクヨミもうーちゃんも楽しそうだ。うーちゃんに至っては、わざわざツクヨミの頭の上に乗って、風を受けている。おかげで小刻みにブルブル震えてて、若干おもしろかった。



「ところでさぁ、うーちゃん!」


「ナンダ?」


「言われた方角に船を進めているんだけど、どんな町につくんだ?」


「おお、それはあたちも気になってた!」


「エットナ・・・、ワタシモ観光客ニ聞イタダケダカラ、ヨクワカラナインダガ、ドウヤラ魔王ノ城ニツクラシイ。」


「へぇ~。」



 え?


 魔王の城?





 魔王っていうとアレか?


―よく来た勇者よ。

 わしが魔王である。もしも、わしの味方になれば世界の半分をくれてやろう。


 とかいう奴じゃないだろうな!

 もしくは、いきなり「ぜ~んぶ破壊だぁー!」とか言ったりするのか!?





「いやいや、へんけんがすぎるじゃろ・・・。

 かんがえてもみぃ。ゆうしゃのけんが、とおくのしまにほうちされていて、しかもまおうのしろから、かんこうきゃくがくるとか・・・。どうかんがえても、へいわなせかいじゃろ?

 まおうとて、ふつうのおうさまとかわらんのではないか?


 そこのとこ、どうなのじゃ、うーちゃん?」


「ウー?ウワサデハ、ソコノ魔王ハ、ヒトヲ食ウノガ日課ラシイ。他ニハ、人魔問ワズ、"中身"ヲクリヌイテ遊ブノガ趣味トカ、ヒトノ頭ヲ捻キッテ、ジュースノヨウニ飲ムトイウノハ聞イタコトガアル。」



 とんだ化け物じゃねぇーか!

 アレだよ・・・?頭に棒を突っ込まれて、弄ばれるなんてゴメンだぞ?



「マジかー・・・。いきなり最終局面かよ。いきなりム○ーの城なのかぁ・・・。」


「だいじょうぶじゃ!あたちはともかく、きみとうーちゃんはまおうていどじゃあ、びくともせんじゃろ?

 とっととたおして、しんのゆうしゃになるのじゃ!そして、このたいとるも、『ゆうしゃからはじまるいせかいせいかつ』にかいめいするのじゃ!」


「・・・おいおい。」



 なんかコイツ、楽しんでないか?


 でも、ツクヨミの言っていることも一理あるな。魔王を倒してから、異世界を旅するのがいいに決まっている。特にこの旅が神様の身体探しならなおさらだ。それらがどこに散らばっているのかわからないから、それの邪魔になりそうな存在は早めに潰しておいた方が後々困らないだろうからね。


 あと、魔王を倒した勇者とか、絶対に各地でもてはやされるじゃん!ウハウハじゃん!



「それじゃ、進路は真っ直ぐ。どんな荒波も乗り越えて、イッチョやってやろうじゃないの!魔王退治に!!」


「おー!!」「ウー!!」

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