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【Episode2】レジェンドスライム『うー』

今回ほぼ見返してないので、文章としておかしいところがあるかも・・・。

 僕たちは利害の一致を確認した後、ビーチ沿いを歩いて散策することにした。幸いと言っていいのか、こちらの世界も元の世界と同じく春みたいな気候だったため、歩くのに苦痛はなかった。


 しばらく歩いた時、神様が急に立ち止まり、くるりとこちらを振り向いた。



「そういえば、まだきみのなまえをきいてなかったのぅ。」


「ああ、そうだったな。

 僕の名前は八岐翔。普通の大学生だ。

 特技は何もないけど、できることなら何でもするよ。よろしくな。」


「うむ、たよりにしておるぞ。


 さて、こちらもあいさつせねばな。


 あたちは、かみさま―あらため、つくよみともうす。

 いまはなにもできぬが、ちからがもどったら、きみにしんの"かみがなすわざ"をみせてやろう。」



 ・・・え?今、ツクヨミって言わなかったか?聞き間違えじゃなかったら、とんでもない話だぞ。



「なぁ・・・、ツクヨミって、つまり、古事記とか日本書紀とかに出てくる、"あの神様"のことなのか!?」



 僕は息を呑んで聞いた。



「にんげんかいでは、そのようなしょもつなどで、かたられておるようじゃのぅ。

 ああ、まちがいないわい。あたちこそ、もっともとうときみこのひとはしらにして、よるをすべるかみじゃ!

 おそれおののくがよい!ふふん!」



 ツクヨミは得意気に、そして、高飛車に高笑いする。


 が、僕の方は血の気が引いた。


 これ・・・すっごくヤバいんじゃないの?

 まず何がヤバいって、僕がそんな大層な神様の力を持ってしまったことだ。使い方は全然知らないけど、うっかり間違ったら世界が破滅しそうな気がする。

 正直、手が震えて来たぜッ・・・!


 それに、別の意味でもヤバい。

 ここまでの間で、この神様にメチャクチャ失礼なことしまくってることだ。こいつはともかく、他の召し使いとかに知られたら、殺されそうだ・・・。



「お?どうしたのじゃ?

 きゅうに、かおいろがわるくなったようなきがするが・・・。」


「い、いえいえ、そんなことはございません!

 そんなことより、おみ足は辛くございませんか?」


「なんじゃ・・・?べつにしんどくはないぞ。」


「日差しが熱うございませんか?」


「あ・・・?むしろ、これくらいがちょうどいいとおもうが。」


「ちょっとでもご不満があれば、このわたくしめが命を懸けて全身全霊で尽くします故―!!」


「きゅうにたいどがかわりすぎじゃろ!?きしょくわるっ!


 ・・・まさか、あたちが"つくよみ"だっていったのをきにしておるのか?」



 ギクリッ!


 どんな精密機械よりも正確に図星を刺された。そのせいで、額からヒヤ汗が吹き出す。



「はぁ・・・。


 よいよい、そういうきづかいは。いまさらじゃろう?

 それに、ふほんいじゃが、あたちのほうこそ、きみにおべっかしなきゃいけない。きみががんばらなきゃ、あたち、しぬからのぅ・・・。」



 そりゃ良かった・・・。



「・・・それにしても、神様でも死ぬのって怖いんだな?」


「あたりまえじゃ。しごのせかいをしっているぶん、きみたちよりよけいにな。

 しかし、あたちはここでしぬわけにはいかんのじゃ。なんたって、あたちはしこうのかみさまじゃからな!」



 えらっそうに鼻を鳴らす。

 ウゼェとは思いつつも、何故だかこの小さな女の子が哀れにも感じた。





◆◆◆





 しばらく散策してわかったことがある。


 ここは島だった。中央部に緑が鬱蒼としているせいでわからなかったけれど、そこまで大きくない。幸いキャンプの資材には恵まれている。

 加えて、島の周囲は見渡す限り海ばかりだ。脱出しようにも簡単にはいきそうにない。



「はぁー・・・。

 どうすっかなぁ、コレ。」


「う~む・・・。

 まさか、ほんとうになにもないとはおもわんかった。」



 現代っ子と力のない神様にとっては、最悪の状況だ。八方塞がりと言っても間違いない。


 一旦休憩も兼ねて、浜辺の小石と長めの枝を拾って、気晴らしに野球をした。



「何とかしてよ、ツクえもん。

 ここはさぁ、なんかスゴい力でパパパッと・・・。」


「なんじゃ、どらえもんみたいにいいおって・・・。かみのちからをうしなったあたちにゃ、なんもできんことぐらい、しっておるじゃろ。」


「だよなー。」



 便りにならねーなぁ・・・。



 ・・・ん?いや、待てよ。

 こいつが力を持っていなくても、俺のがあるじゃないか!ツクヨミの力が半分もあるなら、打開策が産み出せるんじゃね?



「なあ、俺が神様パワーで、海を割るとか空を飛ぶとかって、できるのか?」



 僕の提案に、ツクヨミはまたまた渋い顔をした。



「できなくはないが・・・しっぱいするとたいへんなことになるぞ?」


「具体的には?」


「ふむ。しかし、いうより、じっさいにやってもらったほうがよいかのぅ?


 ―ほれ、これをゆびではじいて、そこにあるおおいわをくだいてみろ。」



 そう言って渡されたのは、小石というにはかなり小さい粒だった。


 これでどうしろと・・・?



「よゆーよゆーじゃ!ちからのだしかたなんて、にんげんとかわらんわい。

 じぶんのなかで、つよいきもちをいめーじして、ここだ!っておもったときに、ときはなつんじゃ。



 ―それじゃ、さんはいっ!」



 ムチャクチャな・・・。


 けれど、やらなきゃわかんない。僕ならきっと上手くやれる!



「ええい、ままよ!!


 ―小石シュゥウウウート!!」



 指に集中させた熱い気持ちを、小石に乗せて弾いた。小石は、その気持ちを原動力として、青い炎をまとい、目標の大岩をめがけて猪突猛進した。



 チュドォオオオンッ!!



「「うわっ!」」



 あまりの衝撃で、近くにいた僕たちは数メートル程吹き飛ばされてしまった。



 結果から言うと、大失敗だと思う。

 小石が大岩にぶつかった途端、火薬の山に燃料を投下したみたく、大爆発が起きた。そして、大岩は跡形もなく消滅した。

 所詮、小石で全力を出しても何もならないだろうと楽観していたんだけど、トンでもない事態になってしまった。

 この子の「失敗するとトンでもないことになる。」という意味が理解できた。うっかりすると、本当に世界を消し飛ばせそうだな・・・。神様パワー、マジパネェ・・・!



 ツクヨミはワンピースの裾を払って、説教をする小学校の先生みたいに腰に手を当てた。



「どうじゃ―?


 まずかみのちからというものは、とてつもなくきょうだいなのじゃ。ほんらいはせかいのみなをすくえるようわけてつかわなければいかん。それをぜんりょくでこたいにむければ、かじゅうにたえきれずいまみたいにけしとばすことになるぞ。

 それに、ちからのつかいかたで、せかいはかわってしまうのじゃ。たとえば、あかんぼうにおとなのちからやのうりょくをあたえたとしよう。そのこはそれらをゆうこうにつかうだろうか?いや、つかわないし、つかえない。それはあたまのよしあしではなく、つかいかたをしらぬからじゃ。そして、どうつかえばしんにたにんやじぶんのためになるかをしらぬからじゃ。

 これらをまとめてしまえば、じぶんのりきりょうもわからずこのちからをつかうことはきけんじゃぞということじゃ。まずはちいさなことからこつこつどりょくをしていって、あつかえるようにしていかねばならん。


 ―よいな?」



 正直、異世界に来てまでお説教を聞かされるとは思わなかった。とりあえず、適当に返答しておくか。



「ハイハイ。要は使わなきゃいいんでしょ?」



 まぁ、当然ではあるけれど、ツクヨミはプンスカと頬を膨らませた。



「ぐぬぬ・・・。ききづらいことをよいことに、はぶきおって!」



 そして、腕を組んでそっぽを向いてしまった。

 ここまでの一連の姿は、強気な性格のお嬢様みたいで、イメージしていた神様とは違っていた。ナンか変だなーと思いながらも、気が楽になったような気もした。





「・・・ん?なんじゃあれは?」



 しばらく口を利かないでいると、突然、ツクヨミが鬱蒼とした緑を指差して声をあげる。


 僕は指先の先に目を凝らした。


 そこには、青色の半透明の柔らかそうな塊が、ゆっくりゆっくりこちらに向かってきている。



「何だろう?」


「すらいむ・・・じゃないか?いせかいものやげーむでていばんの。」


「なるほど。つまりはこういうことか・・・。」



========================


▼ スライムが あらわれた!


========================



「おいっ!どらくえっぽくいじるのはよいが、あれ、どうするんじゃ。どんどんちかくによってくるぞ!!」


「たかがスライムだろ?ゲームとかのスライムってザコ中のザコじゃん。今の僕にとって、慌てる相手じゃないよ。


 何なら僕のロングシュートで樹木のシミにしてやるぜ!」


「ちょっ!!まだてきかどうかもわから・・・


 ―あ~あ。」



 警告を言い終わるよりも前に、蹴りを一撃食らわせた。見事スライムは木に激突し弾け飛ぶ。


 やったぜ!


 ここまでは予告どおりだったんだけど、しかし、終わりではなかった。



「へへへ、チョロいもんよ!」


「かける!!うしろうしろ!

 こやつ、まだしんでおらんぞ!それどころか、とんでもないはやさで、こちらにむかってきおる。」


「な、ナニィ!?」



 ツクヨミの叫び声につられて振り向くと、スライムが既に目の前まで迫ってきていた。


 さっきまでのゆっくりした動きは、ただの様子見だったのだ。でも、こちらが攻撃したせいで、今は明らかな敵意がある!

 僕はツクヨミの警告を聞いておくべきだったと後悔した。


 そうこうしている間に、スライムは僕たち目がかけて弾丸のごとく跳び跳ねた。



「攻撃してくるか!?でも、打ち返してやる!」



 右腕にパワーを貯めて、スライムに打ち付けた。今度こそ破裂してスライム状の体液が四散した・・・



―はずだった。



「かける!みぎうでがとけておるぞ!」



 ・・・え?


 僕はきょとんとして殴った方の手を見る。その腕から先は、生臭い煙が立ち上ぼり・・・骨がまる見えになっていた。

 傷を視覚した僕の脳は急激に活性化し、痛覚を感じ始める。



「うごおおおォォオオオ!!?

 い、痛ェェエエ!!!」


「まだおわってはおらんぞ!たちあがるのじゃ!!」


「ウオオ・・・ウガァ・・・!!」



 意識が飛びそうだ。

 正気もまともに保てない・・・。

 ツクヨミが何か言っているけど・・・よくわからない・・・。



 その時、あの子の叫び声が聞こえた。



「キャアアアァァ!!」



 ぼやける視界でその声の方向を向いた。


 ツクヨミが今にもスライムに襲われそうになっている。このままだと、あの子は確実に溶けてなくなることは、死にかけた僕の頭でも容易に想像できた。



(あの子・・・あの子だけは助けなくちゃ・・・!)



 神様だからでも、死ぬと元の世界に帰れなくなるからでもない。純粋に、力のない小さな小さな女の子を守らなきゃいけない・・・ただそれだけだった。


 瞬間、知覚が覚醒する!



「ウオオオオォォォォ!!!」



 今度は悲痛の叫びじゃない。闘志の雄叫びだ!


 全身に力を込め、そいつに向かって駆け出した・・・いや、飛んだ!一瞬でスライムの目の前に出た僕は、"なくなったはずの右手"に力を込めて打ち込む!



―ドオオオォォン・・・!!



 爆撃のような怒号と共に、スライムの身体は、間違いなく弾けとんだ。





「・・・



 ・・・・・・



 ・・・・・・・・・ハァ、ハァ、やったか。」



 ツクヨミが駆け寄ってくる。

 何とか間に合ったようだ。この子には何の別状もなさそうだ。



「きみ、からだが・・・はんぶんとけておるぞ?」


「ああ、あいつの最後っぺだ。

 僕はもうダメみたいだな?」


「ぷふっ・・・!」


「!!?」



 真剣に死にそうなことを伝えたのに、鼻で笑われたし・・・。



「いやいや、さっこんのてれびのこんとより、おもしろすぎるじゃろ。」


「ヒドい神様だ・・・。」


「おちつけ、にんげん。あたちほどのかみさまは、そうそうしにゃせんわぃ。なにもせんでも、すぐにかいふくする。

 はやくかいふくしたけりゃ、ぜんしんにちからをめぐらせてみぃ。すぐにしゅうふくするぞ。」



 僕は力を振り絞って、何とか言うとおりにしてみた。



 すると、瞬く間に力が戻っていく・・・。

 ホント、神様ってスゲぇや!



 気づけば体が元通りになっていた。



「―な、しなんじゃろ?」


「ヤバいっすね。

 むしろどうやったら死ねるんだってくらいだ。」


「うむ、しのうとおもわなければ、むりじゃな。それに、しのうとおもっても、かんたんなことではない。

 だから、あんしんするのじゃ。」



 さすが、本人自身がチート能力と言うだけあって、とてつもなく強力で、頼もしい。



「それより・・・みをなげだしても、たすけてくれるなんて、そんなことをしてくれたのは、おねーちゃんだけじゃ。

 べつにかんしゃするほどでもないんじゃが、か、かんしゃしてやるわぃ!」



 当たり前だろ!

 神様の中の神様を助けるなんて、こういう状況でもなければ、あり得ないよ。


 てか、この神様、ツンデレ属性を持っていたのか・・・。そんな気はなかったが、もしかすると、コッチが本性か?



「・・・ま、ありがたく賜っておくよ。


 で、これからどうする?こんなモンスターがウジャウジャいるなら、余計にさっさと脱出しなきゃいけないんじゃないか?」


「ああ、そうじゃな―」


「ウー!!チョット待テ!」



 どこからか声が聞こえた。

 慌てて辺りを見回す。

 そして、僕たちは衝撃的なものを見つけた。



 さっきのスライムだ・・・!



「ツクヨミ!危ない!!」



 とっさに庇う。

 でも、そのスライムに攻撃する様子はなかった。



「ウー!ワタシ、悪イスライムジャナイヨ。

 ソッチガ攻撃シテキタカラ、仕返シタダケ。」


「そ、そうなのか。

 それは悪いことしたな。ケガとかないか?」


「ウー、オ前二殴ラレタ。デモ、大丈夫。ワタシ、不死身ダカラ。

 ウー、モウ、元気!」



 あちゃ~、やっちまった。

 危うく無垢なモンスターを殺すところだった。



「何も知らずに攻撃して悪かった、ごめん。」


「すまんかったのじゃ・・・。」



 謝ったところで、スライムから完全に敵意が抜けた。本当に悪いスライムではないらしい。



「とりあえず、じこしょうかいをしよう。

 あたちはつくよみともうす。よろしくたのむ。」


「僕は八岐翔。普通の人間だ。よろしく。」



 そこでスライムは、後ろめたそうにもじもじしていた。



「ワタシ、名前ナイ。

 生マレタ時カラ、ココニ住ンデルカラ必要ナカッタ・・・。」



 僕たちは顔を見合わせた。



(どうする?何か気まずいが。)


(かんたんじゃろう?ないならつけてやればよい。

 たとえば・・・う~ん・・・うーうーないているから、『うー』なんてどうじゃ?)


(お前・・・案外可愛い名前付けるんだな。)


(む~、あたちにもんくあるっていうの?いいじゃない、うーちゃん。)


(いや、悪くはないけど。)



 ワガママだなぁー。



「ただいまはなしあったけっか、きみのことは『うー』ちゃんとよぶことにした。

 よいかのう?」



 驚くことだが、この適当極まりない名前は予想に反して気に入ってもらえた。



「ウー!!タダノスライムニ名前ヲクレルナンテ、オ前ラ神様ミタイダナ!」


「おう!あたち、かみさまだ!」



 何を言っているんだ・・・。間違いではないけれど。

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