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　序

　僕が生まれるよりずっとずっと……ずっと昔の話。

　今から八百年も前の事。人類、獣人、リザード、エルフなど世界中のほぼ全ての種族が対立する大きな戦争があった。

　その戦争は何十年か続いて、やがてどの種族も兵士や資源が無くなり、停戦という形で幕を閉じた。

　でも、その戦争のせいで魔法と科学は衰退してしまった。

　強い魔力を持つ人間は当時、強力な兵士として使われて、大勢が死んだ。今では、魔力を持つ人自体が減っている。

　そんな問題はどの種族も抱えていて、種族特有の優れた能力ほど、その傾向は強いのだそうだ。

　停戦から八百余年。今ではそれぞれの種族は大きな争いごともなく平和に暮らしている。

　だからこそ、戦争は僕にとってはただの「昔の話」でしかなかった。

　やがて戦争を語る人もいなくなり、その物語はより一層埃をかぶっていった。

　それなのに。

　それなのに、僕は彼女を見つけてしまったのだ――。