名のない猫
じわりと暑くなる六月、僕は彼女と出逢った。
入学当初、僕は陸上部に入っていた。短距離をやっていた僕だが入部早々に足を怪我してしまい、退部せざるを得なくなってしまったのだ。そして、授業後にこうして時間をもてあましてる。
とりあえず今日はいい昼寝場所を探そう。この高校は昔の古い校舎に新しい校舎をつぎたして作ったものらしく、創立からたいへん長い時がたつ伝統あるところらしい。そのせいか変わった構造になっており、三年間ここにかよっていてもきっと踏み入れることがない、いや見つけることさえできない場所が多くある。ほら、この古校舎の中には猫だっているんだから。
「って、、、は、、猫?」
ここは僕の予想の範囲を超える。
「に"ゃぁ"〜〜」
自身の風貌にあった声でなくその猫は僕の方を一度しらけた目で見ると、重そうな体をのしっと動かして歩いていく。少し進んだとこで足を止めこちらを見る。
「に"ゃぁ」
こっち。
そう言われた気がしたのは、僕の頭がそう言ってほしいとみがってに願ったからだろう。僕はそいつを追うことにした。その猫は案外かろやかな足どりで階段をかけあがる。気づいたらもう先に階段は無くなっていた。
「ここは、、」
長い廊下の先に教室が1つ
「びじゅつしつ、、?」
目を凝らして見るとそう書いてあった。ホコリのにおいが鼻をかすめ、日の光だけが窓から入るこの廊下の奥、そこにあるはずなのにぼんやりとみえるとびら。もしかしたらこの高校の生徒の中で僕だけが唯一しっているような場所かもしれない。少しの不安と大きな好奇心をにぎりしめ僕は一歩ふみだしていた。
ガラッと乾いた音を立ててとびらをあける。