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僕らのアオイ瞬間は。  作者: 藍 みつき
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きっと瞬間的なものだった


僕らには何もかもが瞬間的だった。



『先がわからないから人生はおもしろい。』


そんなことを言う人はきっとそういえる時間を過ごしてきたんだろう。けれど残念ながら僕は違うみたいだ。未来が見える超能力でも使えるようにならないかな。まぁ、そんなコトを言ったら君は僕を馬鹿にしてくしゃっと笑う、だから言わないけど。





「そんなところで寝ると風邪ひきますよ」

学校の古ぼけた美術室。授業後の日課となった昼寝をしている最中に、蒼井 詩織 が言ってきた。夢のなかから少しづつ引きずり出されていく僕、あぁまだ寝足りない。

「あのさ、起こさないでって言ったよね」

「じゃあここで寝ないでって言いましたよね」

「あー、ここ僕の隠れ処だから」

「なに言ってるんですか、ここは美術部の場所です」

「えっ、美術部ってあるんだ」

「失礼ですよ、というか早くそこどいてください」

学校唯一の自称美術部の彼女は手際よく僕の寝ている机の上のものをどかしていく。そして僕を睨みつける。そろそろ僕はここをどかないと彼女の機嫌を損ねてしまうらしいから仕方ない。

「なに描いてるの?」

彼女は僕の言葉をさし置いて淡々と筆を動かしてゆく。さっきまで眩しいくらい白かったキャンバスはもう3分の2位まで深い青だ。なんだか潜れそうな感じがするのは気のせいか。

「海と空の境界線見たことありますか?」

「境界線?」

「実は私、1度も海に行ったことないんです。海と空の境界線ってあるのか気になって、小さい時からずっと」

そう言って彼女は手を止めることなく想像の中の海を丁寧に描く。けれどなにかを思い立ったようにピタリと手を止めこちらを向いた。

「明日、土曜日空いてますか?」

「えっ、?たぶん空いてるけど、」

「じゃあ私を海に連れていってください」

彼女は僕を困らせる。時おり、いや、少なからずその気まぐれさに僕は振り回されていた。そして彼女は知っているのだろうか、今は海に行くような季節なんかじゃなくて、暖かい部屋の中でコタツに入りながらみかんを頰ばる季節だということを。

その肝心な彼女はまだ来ない、寒い。

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