作戦開始
日暮れだ。
夕日に照らされながらリニアが帰ってくる。
俺は結局あれから武器を買いに行くことは叶わなかった。
「ただいまーっす」
「リニアは何買ったんだ?」
「『包帯』っすよ」
え、お前さっきも『包帯』持ってなかった?
まぁ多いに越したことはないのかもしれない。
「じゃぁ作戦は明日の早朝開始でいいな?」
英冶がそう仕切ってくるが、いいわけない。
俺武器ないし。そもそも作戦とか初耳だし。
「作戦って、俺聞いてないんだけど」
「あ、同じくっす!」
「私もだよ」
まさかの全員挙手。
これはホウレンソウがきちんと出来でないんじゃないかね?
「そうか、言ってなかったか。」
英冶はそう言うと俯いたまま黙ってしまった。
おい、まさか今考えてるんじゃないだろうな。
10秒くらいたっぷり黙っていた英冶は勢いよく顔を上げて放った。
「まぁ、突撃して暴れようぜ!ってことで!」
「作戦でも何でもねぇ!」
「各自の自主性に委ねるよ」
こいつ、自分が主人公補正で守られてるからって適当すぎだろ!
俺は普通に死ぬ可能性MAXなんだが!
そう思っていたら今度はリウムが帰ってきた。
足取りはやや重たそうだ。
まだ国が黒幕ということについて悩んでいるのだろうか。
「リウム、辛いだろうけど頑張れよ」
そんなありきたりな事しか言えない。
が、返ってきたのは予想外の言葉だった。
「お金落としました」
「え?」
「お金落としました」
「お、おう」
はは、わーお。
「えぇ!?じゃぁ武器買えなかったの!?」
「笑ってくれていいですよ。大丈夫ですよ、私この身一つで戦いますから」
大丈夫じゃねぇ・・・
「え、英冶、どうするよ」
「とりあえずお金くれたシーマにごめんなさいだな」
「そ、そうだけど、そうじゃなくて、」
ええい!とりあえず謝れ!と目でリウムに訴える。
「す、すみません。シーマさん。いつか必ず返しますので」
「い、いやいいんだ。私からすれば端た金だ」
気まずいな。
しかし、これで武器が手に入らなかった人が増えた。
「英冶、これじゃさすがに乗り込むのは無理だろ」
「そうでもないだろ」
「そうでもあるよ!」
俺は身一つで国を相手にできる程の強さは備えていない。
そう心で叫んでいると英冶が『グローブ』の片方を俺に差し出した。
「平助は左利きだったろ?俺右利きだから片方やるよ」
「お、おう。サンキュー」
なるほど、『装置』はこうやって分け合うこともできるのか。
試しに左手にはめて振りかぶる。
お、何だか良い感じ。
右足を上げて思いっきり体を捻り、力が十分に溜まったと思った瞬間に拳を前に打ち出した。
人一人が飛びそうな程の風が吹き荒れる。
「英冶ほどの出力は出ないか・・・」
英冶はこれで町の一角を半壊させやがったからな。
分かっていても少し悔しい。
「で、リウムの武器はどうすんだよ」
「リニアの『包帯』分けてもらえよ。どうせ余ってるだろ」
『包帯』って、リニアにしか使えないんじゃないの?
あ、でも今買ってきたのは市販のだから使えるのか?
「はい、あげるっス!」
「ありがとうございます」
そんな疑問には誰も触れずに優しい世界が繰り広げられる。
「じゃ、晩飯にするか」
どこから出てきたのか、英冶は全員分の弁当を持っていた。
その後は、本当に明日戦うのか疑問に思うくらい平和だった。
皆それぞれ思うことはあるのだろうが、誰も口には出さず、
ついに夜は明けて朝がくる。
「行くぞ」
そんな英冶のかけ声で決意を固める。
朝日を背に背負いながら全員は『絨毯』の上で目的地を見据える。
『絨毯』の向かう先は言うまでもなく、この国の城。
その城を囲う城壁を『絨毯』は越える。
異常に気づいた者もいるだろうが、もう遅い。
「おはよーございます!!」
朝の挨拶と共に英冶は城の入り口、その少し上の壁に向かって『グローブ』からの一撃が放たれる。
城の入り口は一瞬にして瓦礫の海と化す。
俺たちは『絨毯』に乗ったまま城の中へと入っていく。
「最終決戦だ」




