青髪の少女
どうやら入学式には間に合いそうにない。
とりあえず空から落下してきた青髪の少女を起こしあげる。
「えーと、大丈夫?」
「目が回ります~」
青髪の少女は落下したときに頭を強打したらしく目を回していたがなんとか会話ができそうだ。
その下敷きになった英冶は未だに悶絶してらっしゃるが。
「君の名前を教えてくれるかな?」
俺はいたって紳士的に少女に名前を尋ねた。
すると少女は自らの服から埃を払いながら見向きもしないで答えた。
「すいません急いでいるのであなたの相手をしてる暇はありません。」
めっさ早口やん。
まぁだが俺はそんなことでは傷つきはしない。
俺は知っているからだ。こういう女は俺に興味がないとうことを、過去の経験で。
「ま、またこのシチュエーションか・・・」
そう呟きながら英冶がようやく起き上がる。
そう、こんなことが過去に2回はあった。
ここからの展開のことなど、俺は嫌なほど理解している。
「夜崎、英冶さんですか?」
青い髪を振りながら、少女は首をかしげる。
「あぁ、そうだ。俺に何か用事か?」
空気を読んで英冶は素知らぬふりをして尋ね返すが、こんなラノベの典型みたいな展開を読むなど空気を読むより容易だ。
少女は笑顔で英冶に言葉を発する。
「私たちの世界の救世主になってくれませんか?」
「おっけー」
おぉ即答か。
まぁそれもそのはず、何を隠そうこの英冶さんはこれまでに何度も世界を救ったことのある実績をもっていらっしゃる。
誰に言っても「は?」という言葉しか返ってこないが事実なのである。
俺もこいつとは長いつきあいになる。こんな場面に何度も遭遇したことがある。
俺もこいつがいなければ、そんな『選ばれし者』みたいなものは妄想の類だと思っていただろうが・・・
こいつは何故かそういうものに選ばれまくる。
俺は一度も選ばれたことないのにズルくね?
「本当ですか?やたー!」
青髪の少女がピョンピョン嬉しそうに飛び跳ねる。
話を進めるために俺が少女に質問をしてみた。
「で、結局君の名前はなんなんだい?」
「あ、あなたまだ居たんですか?」
こらえろ俺。
「居たんですよだから名前はやく」
「人に名前を尋ねるならまず自分からでしょう?」
「高島平助・・・」
「平凡そうな名前ですね」
そう言い放って鼻で笑いやがった。
「名前は関係ねぇだろ!!平和に助け合いなさいっていう両親の壮大な願いがこもってんだよ!!」
「あら別に馬鹿にしたつもりはなかったけど気にしてたのならごめんなさい?」
謝罪の気持ちが込められてないのは顔だけでわかるわ。
と、ようやく英冶が少女に話しかけた。
「まぁ平助も悪気があって言ったわけじゃないし、君も許してあげてよ」
「はいっ!」
その場はそれで収まった。
あれ?俺が悪役になってないか?
「で、君の名前は?」
「マリン・リウムです!」
どうやら英冶の質問にはきちんと答えるようだな。
これが『選ばれし者』とそうでないものの違いか・・・
「で、アクアさんは俺に何をしてほしいの?」
「あ、リウムと呼び捨てで構いません!」
「じゃぁリウム、用件を聞こうか」
「はい、ますはこちらをご覧ください」
そう言うとリウムは空中に液晶画面みたいなものを投影した。
「どうやってるんだ?これ」
「あ、これは『神秘』と呼ばれる私たちの世界独自の技術です!」
「魔法みたいなもんか」
「今はその認識で構いません」
投影された画面には左右に分かれた二つの国らしきものが投影されていた。
「左の国が私たちの国である『マリア王国』です」
「じゃぁ右は?」
「かつての同胞であり、今の宿敵『グレゴニア帝国』です」
ここで俺が口をはさんでみる。
「かつての同胞ってどういうことだよ?」
「あなたには関係ないでしょ今重要な話してるんで席を外してください」
相変わらず辛辣だな・・・
すると、英冶が助け船を出してくれた。
「あー、一応そいつも連れて行くから」
「えぇ!?この冴えない男連れて行くんですか!?」
「まぁ今までもそうだったからな」
「・・・分かりました。夜崎英冶さんがそう言うなら」
なんとか俺とも会話してくれそうだ。
「では話しましょう。同胞『グレゴニア帝国』は今、何者かによって占領されています」
そんなどこかで聞いたことのある展開を、俺はどこか懐かしく聞いていた。




