第五話
ようやく物語が進みました。
今回も楽しんでいってくれると嬉しいです。
学校が終わり放課後になるとすぐに雪菜は、部活の助っ人に行ってしまった。
「また雪菜は、部活の助っ人ですか……。こんな時ぐらい、休んでも罰は当たらないと思うんだけどね。」
「確かにそうだな。けど、本人が楽しそうなんだから、良いんじゃないか?」
昇降口を出て、グランドの方を見ると活き活きとした雪菜の姿が見える。
「まぁ、確かにあそこまで楽しそうな表情を見ていると、すぐに帰れとは言いづらいね。和人は帰って、また勉強?」
「まぁ、そうだな。学年が変わって教科書も新しく届いたから、予習をしないと……」
「勤勉なのも良いけど、もっと周りのことも見ないと足元掬われるよ。」
「ん? どういうことだ?」
「迎えの車が来たみたいだから、僕はもう行くよ。勉強頑張ってね。」
「お、おう。」
誠彦が何を言いたかったのかよく分からなかった。誠彦が言うことは、いつも間違っていることが少なかった。一応、忠告を受けたことだし、もう少し周りのことも気遣ってみるか。
雪菜の方を一度、見てみると楽しそうに部活しているのが見える。誠彦の忠告が頭から離れなかったのか、携帯を開いて雪菜にメールを送る。
「まぁ、家で勉強するのも学校で勉強するのも、あんまり変わらないよな。一応、優姉に帰るの遅くなるってメールしておかないとな。」
今度は、優姉にメールを送ると学校の中に戻っていった。
静かに勉強できる場所って言ったら、図書館ぐらいだろう。自分の教室でもよかったが、広すぎる空間だと勉強してても、落ち着かない。図書館なら広くても本があるだけ、まだマシだ。
図書館に行くと出会いたくもないやつに出会ってしまった。そういえば、あいつがいつも図書館で勉強していることを忘れていた。
「げっ」
「あからさまに嫌そうな顔をしましたね。はり倒されたいんですか?」
俺の目の前に立っているのは、学年二位で生徒会副会長の浅葉仁美だ。浅葉は、ロングヘアーで傍から見たら大人しそうなイメージを持つが、はっきりと言ってそんなことはない。浅葉は、凄く口が悪い。何かあれば、出てくる言葉は毒舌くらいだ。毒舌を言わせたら、こいつに勝てるやつはいないと思えるぐらいだ。
「そんなことねぇって。副会長さんは部活をサボって、こんなところで勉強か?」
「別にサボっているんじゃありません。今日の分の仕事は既に終わらせたので、勉強をしに来ただけです。それよりも学年主席さんがここで勉強をするなんて、珍しいですね。何か悪いものでも食べたんですか?」
今日、悪いものでも食べたのかって二度目なんだけど……。
「別に悪いもんなんて食べてねーよ。ただ、友達を待っている間の暇つぶしだよ。」
「そうですか。ってあなたにも友達と呼べる人がいたんですね。そこに驚きです。」
本当にこいつを殴ってやりたい。てか雪菜といい浅葉といい、俺に関わってくる女性って変わってるやつが多いんだよ。
そんなことを考えていると携帯が震えた。携帯を開いてみると、雪菜からの返信だった。
『もう助っ人終わったよ。今から着替えて、そっちに行くね。』
「学校で携帯を触るのは、校則違反です。その携帯は、生徒会で預からせていただきます。」
俺は、逃げるようにして図書館から出て行った。逃げるようにしてと言うより、実際に浅葉から逃げた。
俺は、早足で学校の外に出た。そして、雪菜に『校門前で待っている』とメールをして、学校を出た。
校門でしばらく待っていると、雪菜がすぐにやってきた。
「待たせちゃってごめんね。てゆうか和人が一緒に帰ろうだなんて、珍しいね。やっぱり、今朝の件、気にしてるの?」
「まぁな。それじゃあ、さっさと帰ろうぜ。」
俺は少し恥ずかしいから、先に歩き始める。
「和人、ちょっと待ってよ。」
雪菜は、少し走って俺の隣まで駆け寄ってくる。チラッと横目で雪菜の顔を見ると嬉しそうに笑っていた。
「今日、買い物をしたいんだけど、付き合ってくれる?」
「孤児院のみんなにか?」
「そうそう。今日は、みんなに差し入れとして、少し奮発してあげたいんだ。それに今日が誕生日の子もいるからね。」
感覚派の雪菜は、以外にも料理も上手い。と言っても感覚で作るからか、独創的な料理で見た目はいまいちだ。
数十分歩くとスーパーが見えてくる。スーパーの中に入ると、すかさずにカゴとカートを取って、食品売り場を見始める。
「今日は、いったい何を作るんだ?」
「今日は、みんな大好きカレーだよ。これならきっと…みんなも喜んでくれるよ。」
そう言いながら、嬉しそうにカゴの中に玉ねぎやら色々と放り込んでいく。
「おいおい、どんだけカゴに入れるんだよ?」
雪菜がどんどんカゴの中に入れていくせいか、上のカゴは既にいっぱいになっていった。
「だって、たくさん作らないとすぐになくなっちゃうんだから。たくさん買っておいて、損はないよ。」
「それで金は、あるのか?」
「もちろん、あるよ。って、あれ?」
鞄の中をお財布を出そうとしても、見つからないのか鞄の中身を何回も探している。そして、みるみるうちに目に涙が溜まり始める。
「和人、どうしよ?」
「はぁ、お金を貸してやる。貸すだけだから、必ず返せよ。」
「和人、ありがとう。」
俺は、財布の中を確認すると足りるかと少し不安になった。貸すだけなら、まぁ問題ないだろう。
最終的に雪菜が買った金額を見ると俺の財布の中身のぎりぎりだった。雪菜の両手には、買い物をし終わった大量の袋がもたれていた。
「重くないのか?」
「大丈夫だよ。これぐらいなら、普段持っているバットよりも軽いよ。」
確かにまるで重くないかのように、軽々と持ち上げている。
スーパーからのいつもの帰り道なのに何だか違和感を覚えた。住宅街を通っていても、まったく人の気配がしないのだ。住宅街なら確かに誰かと遭遇するのは、あんまり多くない。だが、夕方の買い物から帰ってくるような時間帯ですら、誰一人とも出くわさないなんておかしい。
「雪菜、少し急ごう。」
「そうだね。」
雪菜も違和を感じていたのか、早足で住宅街を抜けようとする。
だが、目の前で黒塗りの車が二台をほど止まって、大の男が何人も出てきた。
「目標の人間を発見。これより確保します。」
「なんだお前ら? 誰かの手先か?」
「それを答える義理は、ない。」
車を来ていない反対側から逃げようとしたが、そっち側からも車が来ていた。
「ちっ、八方塞がりかよ。」
体の後ろ側から何か痺れた感覚が襲ってきた。体に力が抜けていくのと同時に意識が遠のいてゆく。
「和人……助けて!」
「ゆき……な……」
そして完全に意識を失った。
雪菜はどうなったのかなどは、おいおい書いていきます。
さて、いよいよ盛り上げて書いていきたいと思います。
次話も楽しんでくれると嬉しいです。