第8話 夏休みの朝
夏休み、いつも忙しい筈のハルが珍しく家に来た。
「ようミツル、海行かね?」
道理で今日はダイバーが付けるようなレンズの暗いゴーグルをしている訳だ。
「何だか楽しそうだな」
ハルの顔をみてふと思う、俺にそう想わせる為にわざとゴーグル付けてるなと。
それから俺は、家の外に停めてあるハルが乗って来た車に玄関から注目する。
「そういえば、あれって誰が運転して来たんだ?」
「俺の部下だぜ」
「そうか。じゃあ準備して来るからちょっと待ってろ」
そう言って、僕は急いで部屋に行き水泳バックを持って帽子を被り家の人に出かける事を告げ玄関に戻る前に台所に寄って水筒に氷を少しとお茶をいっぱいいれ、レンジの上に置いてあるお母さんが用意してくれていた弁当と一緒に別のバッグに詰めて準備が整う。
「お、ようやく来たか」
ハルはゴーグルを頭にずらしバンダナで目隠しした状態でルービックキューブをしていた。
「よし、行くぞ」
それを無視する。
「おいおい、そりゃあ辛いぜ」
「へらへらしたその面見てると腹が立つ」
「ドヤって奴か?」
「そうそれ」
ドヤ顔と言う。
「やるか?」
ハルはルービックキューブを差し出してくる。
僕はそれを無言で受け取り。
「ふーん」
全面揃っているそれを眺め終えると、ハルに差し出す。
「ありがと」
「って、やらねえのかよ」
それから二人で車に乗り込む。
「おまたー」
「お邪魔しまーす」
四人乗りの軽自動車、後部座席にハルと二人で乗っても少し余裕があり、詰めればもう一人乗れそうだ。
車の中で被ってた帽子を水泳バッグに被して別のバッグと共に膝の上に抱える。
「あ、そうだ。こいつらの紹介でもしとくか?」
そう言ったハルは前に座る一組の男女を指す。
「え、ああうん。……どう思う?」
と言うのは、初対面ではあるのだが知らなくはないのだ。
「そうだなー、どうするお前ら?」
ハルは前の二人組に聞く。
「俺はどっちでも構わないぜ」
「私も同じく」
運転席に座る金髪で色の薄いサングラスをしたアロハシャツの男と助手席に座る同じくサングラスをした白いTシャツにデニムのショーパンを履いた赤っぽい茶髪のお姉さんが答える。
「とりあえず名前だけでも、ジェシカとクロウだ」
勿論知っている、僕が付けたのだから。
「よろしくね、ふたりとも」
「おう、よろしくな”ミツル様”」
「はい、こちらこそ”ミツル様”」
「それじぁあ早速、海に行こうぜ‼︎」
「レッツらゴー!」
ハルの掛け声に合わせて声を上げると、クロウがサイドブレーキを下げて車が走り出す。
しばらくすると、クロウがタバコを取り出す。
「あ、吸っていいかミツル様?」
「いいよ」
「あざーっす」
クロウは窓を開けてタバコにライターで火をつける。
今日も一日が始まる。