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第36話

すると、突如として起きる大爆発の音にミツルとレアン、シルバーの三人は耳を塞ぐ。

「くっ、何が起きた——⁉︎」

「——おっと、漸く雷神の覚醒か⁉︎ ……だったら早い所ここから離れておくか」

爆発が起きたのは二箇所。

ナツキの向かったゴールドのいる地点とハルやトーマ達がスイカ割りをしている筈の海の家だ。

「——んー‼︎」

爆風によって浜辺の砂が巻き上げられるので目に入り、ミツルは思いっきり目蓋を閉じる。


「——ナツキ‼︎」

爆風が治まるとレアンは砂浜を蹴って真っ先にナツキとゴールドのいる波打ち際に向かう。

「おい、マジかよ。ミツル様を一人放置するか普通? お陰で俺は生命いのちの危機だってのにここから動けないだろ?」

「——ふう……。びっくりした……!」

続けてミツルが耳を塞ぐ手を下ろし目を開け辺りを見渡す。

「あれ、……ヴェルデは?」

シルバーの横にいた彼が見当たらない事に気が付き尋ねる。

ヴェルデ……?」

聞き覚えの無い名前にシルバーは首を傾げる。

「あ!」

ミツルはここで彼がレアンの本名を知らない事に気が付く。

「そりゃあ知らないよね。ヴェルデって言うのは——」


駆け出してすぐ、レアンはナツキの元に辿り着く。

「怪我は無いか、ナツキ⁉︎」

彼は真っ先に幼き者の身を案じる。

ナツキと二人っきりだとレアンはタメ口になるのだろうか。

「何しに来やがった?」

余計な事をとイラつきを見せるナツキに対しレアンは彼の頭や素肌の上に着る黒い皮の半袖ジャケットに付着した砂を払い落とす様に撫でながら独り言を呟く。

「うーん……。どうやら無事な様ですね。怪我も無く私は安心しましたよ。流石はナツキ、最高硬度の皮膚を誇る銀の人狼ウェア・ウルフなだけ有りますね‼︎ ジュルリ! ……おっとヨダレが——⁉︎」

最初のタメ口は、どうやら咄嗟に出た物だったらしい。

レアンは慌てて口を拭い唾を飲み込む。

「……で、そんか下らねえ事の為にミツル一人放置して来やがったのか?」

「ミツル様は大丈夫ですよ。子供とは言え少なくともナツキよりは歳上でしょうし。……あ、でもミツル様は確か怪しい黒いと二人っきりでしたね」

「おい⁉︎」

「大丈夫ですよ」

声を荒らげるナツキをレアンは冷静な態度で落ち着かせる。

「いざとなればここから撃ち抜けば良いだけの話ですから」

そう言うとレアンは取り出した拳銃でガンスピンを決めて握るとナツキに目を向けたまま、まるで後頭部に目が付いているかの様な正確さで背後数十メートル離れたシルバーに銃口を向ける。


「ヴェルデ?」

首を傾げるシルバーを見て、彼等が初対面で名前を知らない事を僕は思い出す。

「あ! そりゃあ知らないよね。ヴェルデって言うのは——」

「もしかして、あれの事ですか?」

「え?」

シルバーの指す方角、先程ナツキを向かわせた倒れているゴールドのいる波打ち際。

波に打たれる海パン姿に白いマント、腰に高価そうなつるぎを携えた筋肉質で美形の金髪男性、チヒロの部下でシルバーの相棒、“黄金騎士„ことゴールドが俯せで倒れている。

シルバー曰く、本名はソーと云うらしい。

その側に立つ素肌の上に黒い半袖の革ジャンとお揃いの短パン姿でズボンポケットに手を突っ込んだ裸足の銀髪少年“真面目な不良„こと人の姿をしたナツキとそれに向かい合う少年の身長に合わせて屈んだ緑のワイシャツに暗い色の背広を着た“ドSな狙撃手„レアンことヴェルデの姿が確認できる。


……知る人もいるだろうが、ワイシャツはホワイトシャツを日本人が聞き間違えた事で生まれた造語の様な言葉でホワイトとある様な本来は白のワイシャツのみを表す言葉だ。

なので本来“緑のワイシャツ„や白のワイシャツは間違いで日本でしか通じないのだが当時の僕はその事を知らない。

この様に他国の物や文化が間違って伝わりその国で広まるのは良くある事だろう。


「いつの間にあんな所に……。ん?」

ナツキの側にいるレアンを確認した僕は、ゴールドから電気の様な青白い光が放電した一瞬の出来事を目撃する。

何だったのだろうか……。

「——所でミツル様?」

「え? あ、はい!」

再確認しようとした所でシルバーに声を掛けられる。

「何でしょうか?」

問いかけると、シルバーはそらを指す。

「ん?」

僕はそれに釣れられて上空を見上げる。

「何あれ⁉︎」

目にしたのは、雲一つ無い青空に稲妻の様な光が円を描きその中心で積乱雲の様に見えるが形の無い虹色の

輝きを放った奇妙な現象だ。

「——なあミツル?」

「うわあ⁉︎」

突然声を掛けられ前を見ると、声の主のハルが僕と鼻の触れそうな距離にいて驚き反射的に後退あとずさりする。

「何だよお前!?」

「——ほい」

「ん?」

ハルは片手に収まらない程の大きなスイカの破片を僕に差し出す。

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