第2話 承 ゴキブリとの死闘
「こわいよー、こないで……‼︎」
「……」
そこで僕が見た光景は、ゴキブリに怯える先ほどの白い羽の人だ。
「マジかよ」
正直言って、僕はゴキブリが苦手だ。
世の中には好む者もいるだろうが僕を含め大多数が嫌っているだろう。
とにかく僕はゴキブリ自体が嫌いなのだ、触るだなんてとんでもない。
しかしそのゴキブリはそこをチョロチョロするだけでどこにも行こうとしない。
「……あーん、もう! わかったよ、やればいいんだろ⁉︎」
仕方なく僕は覚悟を決めてゴキブリを掴む。
「ぎゃー‼︎」
そして絶叫と共にすぐさま外へぶん投げ、そのまま目をそらす。
その後ゴキブリがどうなったかは知らない。
「あぁー、怖かったー……!」
と、僕はさっきゴキブリを触った右手を眺める。
「うぇ、……気持ち悪!」
今でも感触が残っており、無意識にズボンで払った後ハンカチで強く擦る。
「う、……ひっく……」
そして、さっきの羽の人を見るとついに泣き出している。
「おい、もういないから泣くな」
僕は右手で少年の肩に手を置く。
そう、先ほどゴキブリを触った手で。
「ぐずん……。……うん、ありがとう」
涙を拭った少年の潤んだ瞳は澄んだ碧色をしていた。
「ところで、なにやってんの?」
少年が問いかける僕は、彼に掴んだままだ。
「ああ、さっきゴキブリ触ったから綺麗にしてるんだよ」
そう言って、彼の服で手を拭く。
「ぎやーーーー‼︎」
「冗談だって、ちゃんと綺麗にしたから」
乾拭きだけど。
「もう、びっくりしたよ!」
「ごめんごめん、悪かったって。ところでお前誰?」
「ぼく、エミ。さっきはありがとう。きみは?」
「俺は……」
「——ようミツル、やっと会えたな」
「え?」
名前を言おうとしたら横から声を掛けられる。