第25話 ある朝
1人目、2人目と来たら次は3人目の話になるだろう。
それにはまず、過去に遡る必要がある。
僕としても本当は順番に来て欲しかったが、中々思い通りにいかないものだ。
あの時も、その次も。
4月16日(水)
その日の朝、いつもの様に一人で登校する。
「——おはようございまーす」
門をくぐると校長先生をはじめ、数人の生徒が“あいさつ運動”と書かれた旗の横に立っており、前を通る生徒一人一人に挨拶をする。
「おはようございます」
俺はいつもの様に前を通りあいさつを返す。
「今日も無事、間に合ったな」
歩きながら見上げると、校舎の真ん中あたりに付いてる時計の針は8時20分を指しているのが見える。
いつも家を8時頃出ていつもこの時間に到着している。
「——おーい、はたのー!」
「ん?」
後ろから声を掛けられ振り返ると、こちらに手を振る少年が一人。
「おおー、おはよー!」
こちらも彼に手を振り返す。
すると彼はこちらに駆け寄って来る。
「珍しいな、お前がこの時間に来るなんて。いつもは俺が教室に入った後に来てるくせに?」
「そうか? お前がおせーんじゃねえとか?」
彼は学校の時計を見る。
「うわ⁉︎ マジでいつもより早いやんけ。ラッキー」
「良かったな」
「——うっせー、黙れ!」
そして頭を叩かれる。
「いってー。何すんだよ?」
僕の訴えに彼は首を振りながら答える
「全然痛くない」
「そりゃ、お前は痛く無いだろうけどな……」
「——んな事より、さっさと入ろうぜ?」
彼はそう言うと校舎に入る。
「……それもそうだな」
僕は叩かれて痛い頭を摩りながら彼の後を追う。
1年の頃からの親友との何気ないやり取りから僕の1日は始まる。




