第23話 神の陶酔
「死んだか」
爆発に呑まれたジェシカの生命の気配の消失を感じ取り死を確信した神を名乗る男は手を下ろす。
「あーあ。こんな呆気ないんじゃ、やっぱもう少し遊んでおけば良かったな。マジで退屈だぜ」
男は胸ポケットからハンカチを取り出すと、口から流れる一筋の血液を拭き取ると手から出した炎で血の付いたそれを燃やし後ろに放り捨てると砂浜に落ちた頃には灰になる。
「ん?」
そして、何となく自分の胸を撫でると先程刀で貫かれた傷が塞がっているのを確認する。
「ふっ、これが神の力か」
そのまま手を内ポケットに伸ばして煙草を取り出し一本咥えると手から炎を出せるにも関わらずライターで火を付ける。
「まあ、これだけはやめられないよな」
口から煙を吐きながらライターと煙草の箱をしまう。
「ん?」
男はこちらに近付く何者かを目視する。
「おい手前、俺と戦え」
銀髪に金の目、白い肌で背丈はミツルより低く少しぶかぶかの上下を着た裸足の少年。
「……すー、ふー。おい小僧、それは神に言っているのか? 今ならまだ地べたを舐めるだけで許してやる。だが次つまらねえ冗談言いやがったら唯じゃ置かないからな?」
男は煙草をふかす。
「つまりもう一度言えばやる気になるんだな。そんな趣味は無えんだが、いいぜ、いってやるよ」
だが次の瞬間、銀髪の少年は後頭部に銃口を向けられる。
「言わせねえよ。俺は冗談が大嫌いなんだ。あと餓鬼も嫌いだ。だからさっさと死ね」
男は携帯灰皿に煙草を潰す。
少年の背後にはピンク色の霊影。
ピンクの霊影が引き金を引く。
銃声の後、数秒の沈黙。
「……気は済んだか?」
「何⁉︎」
銃弾を食らった筈の少年は撃たれも倒れない。
そして少年が背後の霊影を親指で指すと、それを合図に放たれる後方からの狙撃により多数の銃弾を食らった霊影は倒れる。
「ちっ、流石にちょっと痒いな」
少年は銃弾の当たった後頭部を摩る。
「なあ、そろそろいいか?」
「どうなっている、ヤツの銃弾はあらゆる生物を一撃で仕留める銀の魔弾だぞ。それを食らって無傷だと、そんな生物が存在していい筈がない⁉︎」
「つまりお前の知恵が浅かったってだけだろ。随分と小さな世界にいたんだな」
「何だと⁉︎ 俺は神だ、全ての世界を支配する絶対的唯一の存在だ。今に見ていろ、貴様が喧嘩を売った相手がどれ程巨大で絶望的だったかを」
男は灰色の霊影を槍で貫く。
すると、霊影は粒子状の物質になり男の体に吸収され、黒い男に灰色が加わる。
「ふう……。一体でこれ程か。やはりあいつよりも俺に相応しい力だな。さて、全て吸収する前に試してみるか」
男は狙いを少年の背後、ミツルの向かった海の家に定める。
「いや、むしろこの状態でも十分かもしれないな」
男の手から黒と灰色の混ざった魔力が放たれる。
一瞬の出来事だが、少年を横切ろうとりは魔力は彼から男に向けて蹴り返される。
「何⁉︎」
男は直ぐ様槍で弾き、後ろに飛んだ魔力が爆発すると、広範囲の海水が吹き飛び巨大なクレーターが出来る。
「おい、手前今ミツルを狙いやがったな?」
少年は殺意を抱き男の胸を貫手で貫く。




