第22話 灰色の影と神の力
「……その程度か?」
ジェシカの蹴りの直撃を男は食らうが微動だにしない。
「こっちのミツルには逃げられたか。まあ、いいだろう。その方が少しは楽しめるからな」
「くっ!」
一度後ろに下がり体勢を立て直したジェシカは、その後放たれる男の攻撃を交わし続け、一瞬の隙を突いて懐に入り込む。
「ーーもらった!」
これは必ず決まる。
しかしそう思った直後、ある疑問が脳裏を過る。
あまりにも出来過ぎていると。
確かに私は不意を突いた。
しかし先程の槍さばきを見たところ、男のガードが間に合わない程では無い筈だ。
最初の蹴りで私を舐めているのか、それとも他に狙いがあるのか。
最悪の事態を想定して瞬時に攻撃を中断し、男の股の間を転がる様に潜り抜ける。
「ぐはぁっ」
振り返って見ると、男は灰色の刀で貫かれていた。
もしあのまま攻撃していたら、私がああなっていたであろう。
そう思いこの選択に間違いは無い事を認識する。
「ぐっ……、さっさと抜け、このクソアマ!」
男を貫く灰色の刃がゆっくりと引いてく。
刀を持つ者は、同じく灰色をしており、長い髪をポニーテールにした女性の様な人の形をした影の様な存在だと言う事は確認出来る。
「痛ったた。つーか、今のお前らはただの霊影で女も男も無いんだったな」
霊影と呼ばれた灰色の影は刀を見つめ、付着した血液を払い落とすと肩に担ぎ男を見る。
「さて。そろそろ遊びは終わりにして、こっちのミツルを追うとするか」
男がジェシカに向けて手をかざすと、そこに黒いエネルギーが集まる。
教会に属し、魔術に関わってきた彼女にはそれが魔力である事がわかる。
その力はとても巨大で、食らえば一溜まりも無いだろう。
「じゃあな人間。所詮お前らは神の退屈凌ぎにもならねえんだよ」
男の魔力エネルギーがジェシカに向けて放たれる。
「……そう、私はここまでなのね。わかったわ」
そして、魔力の大爆発に包まれる。




