第16話 まだ早い
「ナツキ、ストップ!」
戻る途中、僕はナツキを制止する。
「おぉ、ちゃんと言う事聞くんだね。良かった良かった」
ナツキから下りた僕は空を見上げる。
「さて、何かピリピリしてるみたいだけど、あっちはどうかな?」
覗き込む様に空全体を眺める。
いつの間にか快晴だ。
「何処見てんだよお前?」
僕は後ろから少女に声を掛けられる。
「よし、行くかナツキ」
ナツキに飛び乗る。
「おいこら、無視すんじゃね無え⁉︎」
すると、後ろから蹴り飛ばされる。
「痛えー⁉︎」
「あ、やばい。力入れすぎた⁉︎」
蹴られた拍子にナツキから落とされ、足元の岩肌にうつ伏せで思いっきりぶつけたので蹴られた背中とぶつけた前面が物凄く痛い。
「おい、蹴飛ばしたあたしが言うのもおかしいが、大丈夫か?」
涙が溢れる程の痛みにトーマの声も僕には届かない。
「キ……、クッ……、フッ……、スン……、ブルルルルル……、ル、ル……」
「おいおい、泣くなって。ちょっとむしゃくしゃしてて力入り過ぎただけなんだよ?」
しかしトーマの声は届かない。
いや、本当は聞こえているが痛みと泣くのを堪えるのに精一杯なのだ。
「ハア……、ハア……スッ、ハア……」
「こりゃ聞こえて無いな」
しばらくして落ち着いてくると、何故か無性にフライドチキンが食いたく、メロンソーダが飲みたくなった。
しかしそんな物ここにある筈が無い。
「本当悪かったって、な?」
「ハアー……、……スー、フー。喉乾いた」
「は?」
僕は首に下げた水筒のお茶を飲む。
「お前、まさかわざと聞こえない振りしてたんじゃ無いだろうな?」
そんな事は無い。
ただそんな余裕が無かっただけだ。
しかし一度も触れていないトーマには伝わらないのだろうな。
さっきの蹴りはノーカウントらしい。
「ンー!」
そんな事よりお茶は氷いっぱいでキンキンに冷えている。
「うまい。さて、弁当食べる為に砂浜に戻るか」
「だから無視するな!」
すぐさまナツキに跨り浜辺へ向かう。
「あいつは4人目だからな、まだ早いんだよ。それに3人目は既に首を長くして待ってるだろうし、順番にしたしいな。昼飯の前に知らせとくか。つー訳でナツキ、出来るだけ急いでくれ」