襲撃
これは一週間程後。
邪神教のある男、幽魔刻人の話である。
俺は刻人。
邪神教のネクロマンサー。
俺は幼い頃邪神教のある幹部に助けられた。
助けられた時にある術式を掛けられたらしいんだ。
で、それで半分人間、半分幽霊ーーいわばゾンビになっちまった。
少しゾンビとは違うな。透明でもないし透き通ってもない幽霊、て所か。
まあ、身体能力は上がるわ、ゾンビや幽霊みたいなアンデッドを操れるようになるわで、正直助かっているんだけどな。
人間とは大差ない姿だから人間との接触は簡単だ。強いて言えば目の色が左目だけ青になったってところか。だが幻想郷だからな、こんな奴は山のようにいる。大して気にされないさ。
恩を返すために邪神教に入ったが、どうにも胡散臭い。
リーダーや幹部は勿論、俺みたいな底辺も強い。
研究者や冒険者で稼げば良いのに宗教を作るのが胡散臭いんだ。
思想はまあ宗教って感じ。
信仰する神を我々の手で蘇らす、ていうな。
その為に闇の力を集めているんだ。
まあ、この手の宗教に有りがちな世界征服とかは考えてないらしい。
隠蔽しているのかと考えたがあと少しで幹部クラスの俺にも教えられていないんだからな、どうせないだろう。
最近はこの周辺の有害な妖怪や化け物をみんな倒して邪神が復活出来た時に安全になるようにとか言っている。
周辺の村や町には評判が良いらしいし案外悪いところでは無いのかもな。
その時、ジリリリリとベルが鳴った。
このベルが意味するものは侵入者。
つまり、ここに侵入者が来たと言うことだ。
そしてバン!と扉が開け放たれる。
そこには刻人の上司であるジェンスが立っていた。
ジェンス、幹部の中でも屈指の剣使い。仁義に厚い邪神教メンバーの一人。
「刻人、ここはあぶねえぞ!ここは俺様が持ちこたえてやる、早くゾンビどもを集めてこい!」
「すみません、ジェンスさん!」
「おう、任せろ!」
通路に出て広間に駆け出す。
広間からなら全てのゾンビや幽霊を呼び出せる。
「集まってこーい!!」
広間にゾンビや幽霊がなだれ込んでくる。
その数、100。圧倒的な数だが、刻人は違和感を感じていた。普段集まってくる数は、1000は越えていたからだ。
だがそんな事は気にせず刻人は元の通路に向かって走り出していた。
そして刻人が見たものは、倒れているジェンスと、傷が大量に付いているのに息すら乱さず立っている太刀を持つ男。
「ジェンスさん!!」
「駄目だ、刻人……奴はお前には無理だ……!」
ジェンスはそのまま物言わぬ死人と化した。
「ジェンスさん、しっかりしてください!ジェンスさん!!」
「次はお前か、ガキ」
刻人は男を睨み付け言う。
「お前か、ジェンスさんを殺したのは!」
「うるせえな、ガキの分際でよぉ!!」
いつの間にか刻人の横に男が立っていた。
そして、一瞬で男の太刀が抜かれたと思うと、刻人は床に突っ伏していた。
「ふん、こんな奴ほっとけば死ぬな。あばよ、ゴミ」
そして刻人の意識は途絶えた。