かっこいい所を見せてやる
さて、女神様が自分の出番的な意味で、敵の攻撃力を削いだところで、
「よし、今度こそいいところを見せるぞ!」
エルフなウィークが張り切っていた。
今まで“虫”的な意味でまったく活躍できなかったエルフのウィーク。
シャルも頑張れと手を叩いている。
そこでした方からにょきりと、黒い何かが魔物から生えてきてそれがウィークを襲う。
足払いをかける様にそれは現れたが、ウィークは軽く地面をけり上げて紙一重でよけると、そのまま宙返りをするように弓を構えて撃つ。
本体に近い根元の部分でその弓から矢が放たれたと同時に大きな炎が上がり焼きちぎれる。
けれど地面に近い根元の部分から再び生え始める。
確かにこの霧状の魔力は下の方が濃い。
重力に引かれている、のか? と思って、それくらいの濃度であれば再生はできるのかと俺は見ていると、ウィークは早めに本体を倒す事にしたようだ。
少し離れた場所から壁を切り弓を構え、放つ。
しかも10本程度がものの数秒で本体の部分に突き刺さり、その部分が線を結ぶように輝きだして、その場所から炎が噴きあがる。
焼け焦げたゴムの様な匂いがして、ボロリと本体の一部が崩れ落ちる。
けれどそれは表層部分であったらしく中はまだもう一層、違った性質のものであるようで、色が青色をしている。
しかも、その本体部分が再生しようとしているらしく、ぐずぐずっと音を立てながら緑色の肉が膨れ上がっていく。
それを見たウィークが今度は、瞳の様な部分に狙いを定めて打ち付ける。
先ほどよりも大量に降り注ぐ矢が当たると同時に一斉に、魔物の本体全体の肉を消しさる。
そこにすかさず先ほどよりも大きな矢を用意して、肉が再生する前に打ち付ける。
その中心部をめがけて。
それは一瞬だった。
キンと硬い物に当たる音がして、何かが地面に転がり落ちる音がした。
それと同時にその魔物がさらさらと崩れ落ちていく。
その一部は先ほどまであった白い霧の様なものになり、消えていく。
そこでトンと地面に降り立ったウィークがシャルに、
「どうだった? 俺の戦闘!」
「カッコイイと思ったわ」
「惚れ直した?」
「うん」
頷くシャルがウィークに抱きついて、ウィークは照れているようで顔を赤くしている。
ようやくいいところを見せれて嬉しいのだろうが、何故俺の前でそんな風にいちゃいちゃしだすのか。
よし、邪魔しようと、健全な男子らしい感情に突き動かされて俺は、
「実はウィークさん、こんなに強かったんですね」
「ふふふ、まあな。エルフ族の中で1番の弓の名手だからな」
「そうだったのですか。あ、あんな所に毛虫が」
「ひい!」
「嘘です。……所で、あの魔物の核は頂いていってもよろしいでしょうか」
さりげなく虫がいると言って驚かせてから、ウィークが構わないと言うのでその石を回収する。
青い石。
濁っているが角度を変えると赤く輝いたりしている。
女神様が傍にふよふよしてきたので試しに俺は、
「これによって先ほどの魔物が生まれたのですか?」
「そうよ。ちなみにこれは、“この世界の物”ではないわ」
となるとこれは、この前から接触しているあれに関する物になる。
これも一緒に調べてもらった方が良いだろうと俺は決めて、それとは別に女神様には、
「ここにこういった事があると知っていたのですか?」
「いえ、ただ何か変だなという程度の物は感じていたわね。それもあって、タイキとここに“遊び”に来たわけだし。それに……魔族の子達は強いからあの程度どうにか出来ると思って。今回は暇だから私もサービスしたけれどね」
悪戯っぽく笑う女神様に、確かにこのウィークは強かった。
動きも含めて、戦闘慣れしているようにも見えた。
彼らならば、あの魔物にも対応できるだろう。
そう思っているとそこでウィークが近づいてきて、
「それで女神様がひとつお願いがあるのですが」
「あら、何かしら」
俺の頭の上に胸を乗せるというそろそろ頭が重くて大変だなというある種の諦めの気持ちを俺が抱いている頃に、ウィークがそこはかとなく憐れむようにちらりと俺を見てから、
「あそこに転がっている剣を頂いていってよろしいでしょうか」
ウィークの指さす先には伝説の剣などが幾つも転がっている。
それを見た女神様が、
「いいわよ、好きになさい」
「ありがとうございます!」
といったような会話をして、ウィークは大量の剣やら何やらを集めていったのだった。
それからこの遺跡を後にして、地上に戻ってきた俺達。
地上の光は眩しい。
そう思いながらもそこで俺達はシャルと別れる。
「ミルルによろしくとお伝えください。そしてシルフはそろそろお家に帰っていらっしゃいと叱って頂ければと」
「……シルフは俺の言う事は聞きません。むしろ嫌みを言われてしまいます」
「あらあら、気に入られてしまっていますね」
「……そうなのですか?」
「そうですね、ふふ、行きましょう、ウィーク」
「それでは失礼するよ、タイキ君、その内遊びに行くかもしれないがよろしく」
そうウィークも俺に言って去っていった。
その内俺達のうちに来るのかなと俺が思っているとそこで、
「さあ、そろそろ戻りましょう。久しぶりに遊んで私も楽しかったし」
「はいはい。……そういえば今回の事で気付いた事があったのですが」
「あら、何かしら」
「えっとあそこの魔法の霧みたいな物は、重力に引かれているようでしたが」
「あの霧の粒子は魔力の塊だけれど、実はあれが更に粉々になった様な物が、サーシャの様な“幽霊”なの。“精霊”も同様ね。どちらも魔力密度が低いから浮いていられるの」
「という事は魔力密度が濃い“精霊”の場合、重力に引かれて地面に落ちると?」
「ええ。まあ、本当はあそこに漂う霧は霧同士が反発しているのもあってあんな風に漂っている部分もあるのだけれどね。ふふふ」
そこで女神様は楽しそうに俺を見て笑い、
「そう、魔力密度が濃い“精霊”は人の様に地面を歩くしかないわね」
「なんですか、今度はなんのフラグ何ですか」
「さあ、何なんでしょう。さて、戻りましょうか。そういえば……手に入った物の一部を換金していく? そこのお店で」
女神様が指さす先には、材料買いますと描かれた看板が掛けられた小さなお店だったのだった。




