ご覧の有様です
それから俺達は、様々な虫のよう怪物に遭遇した。
突如として現れる度に、俺達三人は凍りつき、そんな俺を女神様は楽しそうに見ている。
巨大化したその虫を見て、そろそろ気持ちが悪くなってきたと俺は思う。
アイテムも大量に手に入れたし、そろそろゴールしてもいいんじゃないかという気持ちにさえなってくる。
ミルルのお姉さんであるシャルも、そしてその彼氏のウィークも顔色が土気色だ。
どうやらこの二人は俺よりも虫のようなあれが苦手らしい。
だったらどうしてここを選んだのだろうと疑問がわく。
なので二人が凍りついている間に適当な魔法でその魔物をサクサク倒した後に俺は聞いてみた。
「お二人共、どうしてこの遺跡へ? どうやら二人共虫が苦手のようですが」
その問にシャルが微笑んで、
「色々な材料が一杯取れてお得だからです。その分強い力も必要ですが、これから入用になりますし、このウィークのプロポーズに答えようかなと思って、その切掛にする予定だったのですが……ご覧の有様です」
更に笑みを深くしたシャルの唇の端がひくひくしている。
まさかこんな風になるとは思わなかったのだろうが、そこでウィークが小さく震えながら、
「俺が頑張るから、これからは……」
「……もういいわ」
「そんな! シャル」
「だってウィークがここまで虫が苦手だとは思わなかったもの」
「で、でも……」
「だから、他の遺跡にしましょう。そこでは今回の遺跡に入る前に私に言ったように……私のことをきちんと守ってね。それが条件です」
悪戯っぽく笑って、シャルがウィークに告げる。
それにウィークが先ほどまでは泣きそうだったのが嬉しそうになる。
そしてそのままシャルに抱きつこうとするが頭を掴まれて抱きつけずにいた。
まだ駄目よという事なのだろう、それにウィークはしょんぼりしている。
これはきっと、結婚したら尻に敷かれてしまうんだろうなと思うような一幕だった。
そこで、シャルが俺に、
「でも、タイキさんからはミルルのお話や、他の女の子のお話もとても良く教えて頂いて、とても、ええ、とても華やかに生活されているんだなと」
後半部分に刺のあるような、その言い方に俺は気後れしながらも、
「え? は、はあ……そうですか」
「ええ、何故か女性ばかり周りに集めていらっしゃるそうで」
「いえ、男性の友人を作る機会が全くないんです。……本当です、疑惑の眼差しで俺を見ないでください」
「……まあ、女の子に囲まれているのが心地良のもわかるけれど、男性の友人を作るのもいいと思うわ。ギルドに行けば他の冒険者とも一緒に仕事をする依頼もあるだろうから、それにいってみるといいかもしれないわね」
「ありがとうございます。そうですね……普通の同性の友人はいたほうがいいよな」
そろそろ女性ばかりで、俺がいじられるのもなんか不条理な気がしてならないしと俺が思っているとそこでウィークが、
「それで、この世界に来たのは何時頃なんだ? タイキ君」
「まだ一ヵ月っていないかと」
「! それであれだけの魔法を使い、道具まで? 凄い……女神様のお力添えで?」
そういえばこのウィーク、先ほどから俺の杖を見ていた。
ただその眼差しは、欲しい、羨ましいといったものよりももっと危険で、この杖を分解してどんな構造になっているか調べたいといった意味で危険だ。
愚かな事だ。
これはすでに錬金術を使えば幾らでも量産できる杖だというのを、彼は分かっていないようだな。
ふはははは、と思いながら、このゲームのような異世界では、もしかしてこれは貴重品なのだろうかと思う。
では目立たないようにあまり使わないようにしようと俺が決めていると、そこで女神様がそんなウィークに楽しそうに笑い、
「そうよ、私がほんの少し力を貸しただけ。私やタイキ、そして貴方達も含めたこの世界の人間は皆、想像しうる現実を作り出す力を持っているの。そのために様々な努力やその他もろもろが必要だけれどね」
「でもそのほんの少しが、彼の場合は普通の人達よりも、それも魔族よりも多いように思います」
「ええ、だって私にとってタイキは“特別”ですもの。この世界の、私も含めた“異物”だもの」
「“異物”?」
「ええ。水面に石を投げれば波紋が広がるように、たった一つの“異物”が言葉を、力を振るって、そこから連鎖的に世界は変化していくものよ」
それを聞きながら、今度は俺が、
「あの、俺、この世界にそんなに変化はもたらしたくないというか、エロくない方のR18設定に進みそうなのであまり目立ちたくないのですが」
「ふふ、例えば短い文章や概念が、それを受け取った人の知識や経験で爆発的に増幅されて、それを受け取った人が更に違う知識と経験で見たとしたら、多数の違った解が“物語”が生まれていくと思わないかしら」
「それは人に影響を与える“何か”が無いといけない。俺にそんなものがあると思えません」
「あら、私の目が節穴だとでもいいたいのかしら。よーし、そんなタイキにはお仕置きよ~♪」
「ぎゃあああああ」
俺は久しぶりに女神様の胸に顔を埋められその柔らかい感触に、大丈夫大丈夫、俺はまだ何も感じないと必至になっていた。
そしてしばらくぐったりとしているとそこで俺は放されて、
「うーん、もう少し抵抗してくれたほうが私としては嬉しいのにね。後は悲鳴を上げてくれるのもいいのだけれど、最近無反応すぎてつまらないわ。次はもう少し過激に行こうかしら」
「女神様、それはどことなく悪役の台詞に聞こえます」
「あらそう? 私が正義といえば正義だから、問題わないわ。私は女神だもの」
お家に帰りたい、そう俺は切なく思った。
こんな傲慢な女性にもてあそばれるのは嫌です。
そしてそんな俺を、じっとなんとも言えないような表情でウィークとシャルが俺を見ているので、ここで俺は言わねばならないと思った。
「こんな風な女神様のような女の子が人数分いて、俺は幸せだと思いますか?」
「……いや、女の子に囲まれているだけで狡いから、同情は出来な……ぎゃぁあああ」
そこでそんな答えを呟いたウィークが、シャルに足を踏まれた。
そしてそのシャルは冷たい目でウィークを見て、
「そんなに女の子に囲まれたかったら、お金をいっぱい払ってそれ用のお店に行ってきたら? きっとちやほやしてもらえるわよ? 後、婚約指輪は、後日郵送で送り返しますのであしからず」
「ま、待ってくれ、シャル、今のは出来心で俺にはシャルだけなんだぁあああ」
悲鳴を上げると同時に必死にシャルに言い訳するウィーク。
そんな時、コロンと遺跡の上の方から何かが落ちてきたのだった。




