どうしてここに!
そのミルルをちょっと大人にしたような女性は、大きな斧をもって、女の子らしい悲鳴を上げながら巨大ゴキ○リを真っ二つにすると同時に炎が上がる。
かと思えばすぐ傍にいたほか二匹も倒してしまう。
悲鳴を上げながら。
もしかして俺、助けに来る必要がなかったのかなと思ってしまう。
だってこのミルルに良く似た女の人は、悲鳴をあげているが強い様だし。
そう思いながら手出しせずに様子を見ていると、そこで女神様が俺の肩を叩いて、
「それであの巨大な黒い奴を倒さないの? タイキ」
「いや……俺、ゴ○ブリの大きい奴は好きじゃなくて」
そう答えつつ、こんな風に大きくて素早い感じも嫌だなと俺は思う。
これだけ大きいのに素早いのは嫌だ。
俺の家にも出るが、逃げ足が速いし時々空を飛ぶ。
あれは嫌だ、そう俺が思っていた所で耳障りな音がした。
音の方向を見ると、あの黒くて大きいアイツが空を飛んでこっちに向かってきている。
以前使った事のある雷の魔法を選択する。
「雷で消滅させよう……“遠雷の鋭き剣”」
選択画面を選択。
足元に光り輝く円陣が浮かび上がる。
空を飛んでいる黒いアイツに、冷や汗が浮かぶ。
やけに長く感じる呪文を唱える時間。
早く、早くと俺は心の中で焦っている内に呪文を唱えて終わり、
「“遠雷の鋭き剣”」
以前と同じように、俺の左右の小さな円陣から棒状の光の柱が伸び、それが金色に輝くと同時に、上の方に球体の光が出来、そこから雷が伸びる。
それらが大きな剣のように何本もその飛んできた、黒いアイツの魔物につき刺さっていく。
金色の光が眩しいと思っている所で、ふっとその黒くて蠢く空飛ぶあれが消えた。
そして消失して魔石を落としていく。
ころんと落とした魔石と羽は、羽は素材として使えそうだなと思いつつ、もったいないので我慢して俺は回収した。
魔石は無色透明の物で、偏りのない、純粋な魔力を集めたようなもののようだ。
しかもどことなく魔力も強い。
あんな風に容易に倒せる相手で、こんな良質な物が手に入るのなら確かにお得な遺跡だと俺は思う。
そこで、全ての巨大ゴキブ○を倒したらしい、ミルル似のお姉さんが俺の近くにやってきて、
「助かりました、ありがとうございます」
「いえ、俺はたまたま遭遇しただけですし、えっと、俺が倒したのは一匹でしたし」
「ですが、手助けして頂いた事には変わりありません。ありがとうございます」
優しく微笑む落ち着いた女性。
ミルルももう少し大人になったらこんな柔らかい雰囲気になるのだろうかと、そう思っているとそこで、
「おーい、シャル、そっちかぁ~」
「……誰が返事をしてやるものですか」
ふんと機嫌が悪くなり、目の前のミルルに似たシャルというらしい女性が呟く。
けれどそんな彼女を先ほど呼んでいたらしい男がこちらに気付いたらしく見つける。
「はあはあ、ようやく見つけたよ、シャル。いい加減機嫌を直してくれよ」
その男性は、耳がとがった美形だった。
エルフ、とういう物なのかもしれない、というか、多分そうだ。
美形だし、そう俺はコンプレックスを抱えているとそこで、
「おや、君は……もしかして、シャルの手伝いをしてくれたのかな?」
「え? いえ、俺はたまたま歩いていたら悲鳴が聞こえたのでそちらに向かった所で、その、魔物に遭遇したので一匹倒しただけです」
「いやいや、そういった厚意だけでも嬉しい。それに君、もしかして人間かい? 珍しいね、こんな所で」
「あ、はい、色々ありまして。ここがお得な遺跡だと聞きまして」
「お得な遺跡……いや、間違ってはいないが、お得だからってここまで来たのか」
何処となく疑われている気が俺はした。
けれどかといって、魔王ロリィに連れてこられたなどとは言えない。
どうしようかと迷っているとそこで、
「俺の名前は、ウィーク。そして彼女がシャルだ」
「そういえば私は名乗っていませんでしたね。シャルと申します」
微笑むシャルの笑顔は、やはりミルルに似ていると俺は思う。
魔族の国だし、血縁者なのかなと俺が思っているとそこで、ウィークが、
「それで君は一人で遺跡へ? 何かあった時に助けを呼ぶために、二人なのは冒険者の基本だと思っていたが、そんなに君は自分の力に自信があるのかな? ……あ、いや、済まない。ぶしつけな質問だった。忘れてくれ」
「……いえ、俺はボッチではないです。それにこのすぐ傍にもう一人いるじゃないですか」
そう言って俺は女神様を指さす。
女神様は楽しそうに笑っている。
そしてウィークとシャルは、不思議そうに首をかしげている。
また女神様は何かをやっているのだろうか。
そうとしか考えられなかった俺は女神様に、
「二人には見えていないようなので、見える様にして頂けると助かります」、
「あら、そうなの? 折角ちょっと遊んでみたのに仕方がないわね。タイキのお願いは聞いてあげるわ。“可視光操作”解除っと」
俺には何が変わったのか分からなかった。
けれど現れると同時に二人が驚いたように、
「「女神様、どうしてここに!」」
息もぴったりにそう叫ぶ。
どうやって説明しようかなと俺が思っているとそこで女神様が、
「それでね、タイキ。そこにいるシャルちゃんは、ミルルのお姉さんなのよ?」
何となく血縁じゃないかなと思っていた俺は、女神様のその言葉に確証を得る。
それと同時に、シャルが、
「もしかして貴方がその……タイキさんですか?」
「ミルルから聞いてているのですか?」
「ええ、一応は。……なるほど」
何がなるほどなのか俺には分からなけれど、シャルはそう言ってから俺に、一緒にこの遺跡を回らないかと誘ってきたのだった。
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