お得な遺跡の内部で
開いた宝箱から出てきたのは、青色の魔石だった。
濃度が高くて質がいいものだ。
「サーシャが喜びそうだな。魔力的な意味で」
「ほーら、タイキ、他の女のことを考えている暇があったら、別の宝箱を開けなさい?」
「他の女って……」
そう告げると女神様がフフッと笑って、
「ちょっとヤンデレキャラ風にしてみたの。男の人って病んでいるくらい可愛い女の子に愛されたいんでしょう? それでぐさっと」
「……いえいえ、怪我はしたくないですし死にたくないです」
「そうなの? 前からマゾ仕様だなと思っていたのだけれど、タイキにはそちらの趣味はなかったのね。折角勉強したのに残念だわ」
全然残念じゃないように女神様が言う。
全くまたこの女神様は……と思いながら俺は、二次元に限るという言葉を知らないのかと思う。
やっぱりそれくらい可愛い女の子に愛されてみたいなというような願望は多少なりともあると思うのだ。
だから俺は、決してマゾではない。
そう俺は思いつつそこで、何で俺達の世界のそういった二次元的な属性をこの女神様は知っているのだろうと思う。
次いで、一体何を勉強してきたのかと不安に思う。
だが俺は口には出さない。
口に出した瞬間、多分、じゃあ学んだことを実地で教えてあげましょうか? みたいな展開に……なるはずがないなと俺は嘆息したくなった。
こうも誘惑されると、変な期待を持ちそうになるので気をつけねば。
俺はそう冷静に考えて、次の宝箱を開ける。
女神様は、つまらないわぁ、などと騒いでいるが放置だ。
浮かび上がりながらその巨乳を俺の頭の上に乗せているが、ただ重いだけなので俺は気にしない。
平常心平常心。
俺は全く気にしていない。
そこで次に開いた宝箱からは、“青い輝き”を持つ銀色の金属が出てくる。
「“青い月の片鱗”、確かとても軽くて防御力も攻撃力も高くなるのだけれど、アイテムの見落としが大きくなるのか。でもアイテムの見落としって、どんなだ?」
ゲーム内であれば、遭遇するアイテムの率が変化するのは分かるけれど、これの場合はどうなるんだろう。
視覚が突然狭くなる変な魔法とかかかっていないといいが、と思っていた所で俺の心を読んだかのような女神様が、
「この場合は、敵を倒した後に手に入るアイテムが壊れやすくなるだけよ?」
「そうなんですか? どれくらいの確率で?」
「90%くらいが壊れるだけよ」
俺は即効で街に戻ったらこの金属を売り払うことに決めた。
やはりこういったものは、必要な人が持つべきだろう。
というよりは、俺の方も在庫が沢山あった気がするのだ、この金属は。
なので肩を落としながら別の宝箱を開くと、ボロボロの地図が出てくる。
それはこの世界のものの地図だ。
遺跡らしき場所が印が付けられているが、今よりもずっと少ない。
「何だか作りかけってかんじですね」
「そうね、この時はまだ今よりも作りかけではあったわね」
「つまりこれは年代物の骨董品だと。……マニアに売れるか」
そう思いながら、とくに気にしないで俺はその地図をしまった。
これで宝箱は全て手に入れたので、
「じゃあ、次は人のあまり行かない穴に入ってみましょうか」
「さっきの横穴かしら。でもあそこ、どれにはいってもこの壁の左右の道に合流するわよ? ただ途中まではあまり敵もいないから、楽かもしれないけれど」
「それならそのほうがいいですね。俺は今は一人ですし」
「あら、私は数に入れてくれないのかしら」
「……女神様は手伝ってくれるのですか?」
「戦うのが面倒だから、敵が出ないようにするわね」
「その場合お得な遺跡としての効果は?」
「無くなってしまうわね」
肩をすくめる女神様。
お得な遺跡としての効果は、その敵を倒したときに手に入るアイテムらしい。
だったらできるだけ敵と戦闘した方がいいのかと俺は思いつつ、
「俺が死にそうだったら手助けしてくださいね」
「当然よ。もっとも、タイキがこの世界で“死ぬ”ことなんて無いと思うけれどね」
くすくす笑う女神様に、まるで不死身みたいじゃないかと俺は思って、そういえば肉体も強化されている感じだったよなと思って、不思議な気持ちになったのだった。
百合のような花から、種が大量に放出されている。
この種自体は女性用の顔に塗る化粧品になり、意外に需要があったりしたはずだ。
ただこの種は強力な力噴射されていて、傍に近寄った魔物などを倒してしまうのである。
けれどこの植物は一度放出したら、しばらくは種を放出しなかったはずだ。
だが先ほど響くどどどどどどという音はなにかといえば、その種が連続的に発射しているのだ。
しかもその種を手に入れるべき発射する方向に大きな丈夫そうな網が張ってある。
なるほど、考えたなと思いつつ、周りに広がった種を集める。
そこで、葉っぱのような魔物が現れてそれを倒すと、白い綿毛のような繊維を落とす。
大量に。
これを糸にしてもいいし、“空の液体”というものを使って、火薬の材料や接着剤、人形などにするのである。
ちなみに危険なのは“空の液体”であり、これはただの繊維である。
ただ一匹倒してもこんな十個近くアイテムが手に入ることなんてなかった。
先ほども鳥のようなものを倒したら、大量の羽毛と肥料が手に入って、明らかに魔物の体積よりも多いだろうという状況だった。
確かにお得な遺跡だなとお思いながら、次の敵を倒しに更に進んでいく。
お得な遺跡の割に、壁が光るくらいのコンクリートの部屋のようなものが続いていて飾りげがない。
きっと装飾に使う魔力をアイテムに回しているんだろうと俺は適当に考える。
先ほどから女神様は俺を見て、側で漂っているだけで何もしてくれない。
というか俺の力が強すぎて、手出ししなくても大丈夫な状態らしい。
でもそれはそれで何となく一人で戦うのは、なんか嫌だなと俺は思う。と、
「きゃあああああ、いやぁあああ、来ないでぇぇえええ」
そこで俺は、次の部屋あたりから悲鳴を聞く。
女神様と俺は顔を見合わせてから、どうすると女神様が楽しそうに聞いてきたのでいそいで、何でそんなに余裕が有るんだと俺は焦りながら、そこに向かって走って行く。
そこにはミルルをちょっと大人にしたような女性がいて、巨大ゴ○ブリのようなもの相手に悲鳴を上げて……次の瞬間、彼女がその巨大ゴキ○リを殲滅する光景を俺は目撃したのだった。
あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします (*´∀`)ノ




