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自虐ネタ?

 女神様の言う、いい方法。

 そんなにいい方法じゃないような気が俺はする。

 特に女神様がニコニコ笑っているあたりが特に、危険しか感じない。


「あら、もしかして警戒しているのかしら」


 女神様が楽しそうに笑っている。

 俺だって学習しているんですと言い返そうと思ったが、止めた。

 言った所でどうこうなるとは思えないからだ。


 なので溜息を一回ついてから俺は、


「それで、いい方法とは?」

「人造精霊をまずは作り出しなさい?」

「……前にあまり作らないようにって言っていませんでしたっけ」

「それにばかり頼ると危険という意味よ。程々に、ということよ? 何事も、ね」


 程々、ね。

 今の話から察するにそれほど危険はないだろうし力も使わないのだろう。

 そう思いながら再び創りだす。


 相変わらずの無表情な少女の姿のそれ。

 とんと地面に降りてから、それは俺に、


ご主人様(マスター)ご命令を」


 淡々とした声で俺は告げられる。

 この少女人形のような人造精霊だが、どうしてこんな姿になっているんだろうといつも思う。

 子供よりは育ったお姉さんの方が好きだし、何がどうしてこんな中二病というか、あざといものになってしまったのか。


 そう思ってじっと見ていると、その少女のようなそれは相変わらず無表情のまま首を傾げて、


ご主人様(マスター)ご命令を」

「あ、ああ、そうだな。それでそうすればいいんだ?」


 この後どうすればいいのか俺は分からず、女神様に聞くと、女神様がふふっと笑いながら、


「この人造精霊の視覚とタイキの視覚を“同期”させるの」

「……この人造精霊と俺の視覚を同じにするって……そんなことが出来るのか?」

「ええ、試しに命令してみればいいわ」


 女神様に促されて、その少女精霊に、


「えっと、視覚を俺と同じにして欲しいんだけれど、出来るか」

「はい、ご主人様(マスター)のご命令とあらば」


 淡々と告げる人造精霊。

 自分が創りだしたのに、何が出来るのかがよくわからないのが不思議な感じだ。

 しかもこの事務的に話す感じがロボットのようにも見える。


 精霊というと、感情豊かで我儘な、サーシャの杖の精霊ミィのイメージが強かったがこちらはこちらでぜんぜん違う。

 “感情”というものが全く存在しないようだ。

 それが俺にはとても違和感を覚える。


 俺が作ったものだから、なおさらだ。

 そこで人造精霊が、


「では、視覚の“共有”を行いますか?」

「あ、ああ、そうしてくれ」

「では……失礼します」


 人造精霊の少女が手を掲げ、そこから白い光が走る。

 螺旋を描いてそれは登ってきたかと思えば、俺の目のあたりでくるりと輪を作って、目を開けていられないほどに輝く。

 思わず目を瞑ってしまった俺だが、瞼の後ろから光が収まったのを確認してから目を開くと、俺の目の前にしたから見上げた俺がいた。


 何だか凄く気持ちが悪い。

 背の高さとか感覚が慣れない。

 車酔いをしたような奇妙さを俺が感じていると、そこで女神様が、


「それで、この技の問題点は、体が無防備になってしまうってことなの。すぐ側に別の敵がいても、視覚で捉えられないってことだしね」

「女神様……俺のお腹のあたりを触るのは止めてください」


 ゾワッとする触れる感覚に俺はそう言うと、女神様が更に楽しそうに、


「つまりこの状態であれば、タイキの体を好きにし放題に出来るのよ?」

「……“同期”解除で」


 俺は人造精霊にそう命令した。

 了解しましたという淡々とした声で人造精霊は答え、俺の視覚が戻る。

 そこにはむっとしたような女神様がいて、


「あら、折角教えてあげたのに、もうやめてしまうの?」

「何となく俺の貞操の危機だった気がしたので」

「信用がないわね。まったく、ここで、抱いてやる、くらい言えないのかしら」

「……それが言えるんだったら、多分色々な女の子とハーレムな感じになっていたし、彼女いない歴=年齢ですらなかったように思うんですが」

「……自虐ネタ?」

「自虐ネタです。さてと、しかたがないので空を飛ぶためのアイテムでも取り出しましょう」


 そう言って俺は、女神様の相手をしないようにしながら道具を取り出して背中に貼り付ける。

 ブーンという、虫のような音が聞こえる。

 地面をけって飛び上がると、上の方にも女のような人間の“幽霊”のようなものが浮かんでいる。

 

 そこを通った人の魔力の残渣が、この白い霧状の魔力と反応して人型をしているらしい。

 よく見ると、その壁にある横穴には、白い半透明なものが集まっている場所がある。

 逆に、その半透明なものが一つも集まっていないものが、端の方に一つあった。


 その白いものが大量に集まっている所を見ると、同じような人物が何人もいるようだった。

 同じ人物が何度もその穴に出入りしているということは、


「そこに何度も入るような、必要な何かが生えていたり転がっていたりするのか?」

「案外宝箱があるのかもしれなくてよ?」

「ふと思ったのですが、宝箱って、俺達の世界の子供用の丸いケースに入った全種類を集めたくなるような……」

「でもこっちの宝箱は無料なのよ? とても良心的でしょう? だから入りましょう」

「宝箱と限らないような……」

「だったら入ってみればいいわ。どちらが正しいか証明しましょう?」


 そういたずらっぽく笑う女神様に釣られて俺は入っていく。

 俺が入ると同時に、穴のかべにに光が灯る。

 人の気配を感じて明かりが灯るらしい。


 もしくは何処かに赤外線で感知するシステムのようなものがあるのかもしれないが、こう、俺達の世界にもあるというか実現できる技術だよなと、この魔法を見ながら思う。

 そして、歩くこと30歩。

 目の前に宝箱が現れる。

 それも3つもで、全てが閉じている。


「ね、言ったとおりでしょう?」

「……この中に宝箱に偽装した魔物だったりしませんよね」

「いいから全部開けなさい。ここの宝箱は、開けても比較的早く復活するの。だから他に行く前に、知っている者は、ここに立ち寄っていただけの話。しかも外からそれほど遠くないしね」

「なるほど」

「もうすこし、女神様の言うことを信じなさい?」


 笑う女神様に俺は、そういえばこの人は女神様だったなと思って、さっき話している途中、別の誰かのような気がしていたなと思う。

 俺は女神様を、一体誰だと思ったのだろう。

 親しみのある誰かだったような気がするのだけれど。


「ほら、タイキ、宝箱を開けなさい!」


 そこで女神様に急かされて俺は、宝箱を開いたのだった。

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