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先手を仕掛ける

 更にもしものことを考えて、入口にアリアドネの糸を設置する。

 何時でもここに戻ってこれるようにだ。

 在庫があるのだがもう少し作っておいた方が良いなと、後はなんとかあの引っ張られる気持ちの悪さを改善できないかと俺は思う。


 そして俺達は遺跡に突入した。

 遺跡の中は明るい。

 謎の文明の遺産なこの遺跡だが、相変わらず奇妙な世界が広がっている。


 あの偽怪盗が何処に待ち伏せしているかは分からないし、慎重に行くべきだと思っていたがクロードも含めて全員が走るように入り込んで行く。

 俺は焦った。


「おい、もう少し慎重に行かないと……」

「どうせ待ち伏せして罠を張って待っているだろうから、良いんじゃない? わざわざ出口じゃなくてここに来たのは迎え撃つためでしょう?」


 鈴が楽しそうに答えるのを聞きながら、何でこの世界の人達にそんなに馴染んでいるんだよと俺は思う。

 思いながらも、進んで行くと、魔物と接触する。

 だが、そこでクロードが剣を取り出して一瞬でそれを倒してしまう。


「……馬鹿な」


 俺はつい呟いてしまうがそれにクロードが、


「あの薔薇の剣やら何やらは、個人を特定されないための変装なんだ。私は普段はこんな風に、普通に戦っている」

「えっと……すみません」

「分かればいいのだ。しかし君の実力がほぼ見れないのが困る。サーシャ姫が気に入るというのだから実力はあるのだろうが」


 そう言っている所で再び魔物が現れる。

 それをミルルが弓で応戦する。

 それほど強くない魔物ばかり。


 まるで危険な少し強い魔物は、息をひそめているのか、もしくはすでに刈り取られてしまっているのかといった風である。

 よくここに冒険者が来るので魔物が少ないと聞いていたが、潜れば潜るほど、前にもまして魔物が弱く少なく感じる。

 その違和感が、俺の中で警鐘を鳴らす。


 幾つか開けた場所を通り過ぎて、まだ奥深くまで潜る必要があるのだろうかと俺が思っていると、ようやくミルル達が立ち止まった。

 その先からは、ぞわぞわとした悪寒が俺の中を這うような気持ち悪さを感じる。

 壁に背をぴったりと付けて中の様子を伺う。 

 

 俺は一番後ろだったので何も見えなかったが、クロードの隣にいた鈴が、


「うわー、今までと比べ物にならないくらい強くて気持ち悪い魔物がいる。しかもその隣に、あの偽怪盗がいる……やっぱり準備万端ってことなのかしら」


 そう呟く鈴だがそこで俺の方を見たクロードが、


「タイキ、お前は強力な力を持つ魔法使いだったな」

「それは、はい」

「ここから魔法を打って、先手を仕掛ける。殺さない程度に上手く調節してくれ」

「えっと、俺の魔法は人相手は殺せないようにできているんです」

「そうなのか。ならば情報を聞きだすのに捕まえるには……好都合だな」

 

 クロードが笑ったのだった。






 そういった事情から、俺は魔法を選択する。

 ターゲットは二つ。


「そういえばあそこにいる魔物は俺は見た事がないが、クロードは知っているか?」


 それにクロードは首を振り、次にミルルとシルフを見るが首を振る。

 最後に鈴を見るが、


「ゲームでは見かけなかったわね。ただ……」

「ただ?」

「あそこの出っ張っている部分あるじゃん」


 鈴の指さすその先には、鳥の翼の様なものがある。

 あの形に俺も見覚えがある気がして、試しに呟いてみる。


「“灰色の水晶大鷲”の翼に見える」

「あ、やっぱり。それでね、これは推測なんだけれど……この遺跡の魔物をああやってひと塊にして一つの生物にしているんじゃないかなって」

「……だからこんなに体力値が高いのか?」

「全部か加算された体力というわけではないだろうけれど、多いね」

「……仕方がない。強めの魔法を選択しよう。どの道隣にいるあの怪しい偽怪盗も一緒に倒す事になるんだろうし」


 そう俺は呟いて、選択画面を呼び出す。

 その中で強そうな魔法で、複数を相手にして……でもこの場合は二つの目標に集中する威力の強いものとなると、


「無難に炎系の魔法でも選ぶか。“無限鎖の炎インフィニティ・フレア”っと」


 現れた魔法選択画面に触れて、俺の口から呪文がこぼれ始めて……それと同時だった。

 その偽怪盗がぐるりと俺達の方をまっすぐに見る。


「タイキの魔法の魔力で気づいたみたい。というわけで私達は巻き込まないようによろしくね」


 鈴が俺にそう告げると、ミルル、シルフ、クロードが飛び出していった。

 接近戦が得意なタイプで戦闘には華やかといえば華やかだなと俺は思う。

 やはり魔法使いは地味なのか……そう思いながら俺は呪文を唱え始めたのだった。






 クロードが魔法を跳ね返すように剣で切り込むが、炎がすぐそばをかける。

 それを剣戟で吹き飛ばし更に攻撃を加える。

 本来ならばこの偽怪盗を先に叩きのめしたいが、あの危険さに近づけずにいた。

 

 そこでミルルの矢が偽怪盗に向かって放ちシルフが大きい鎌で攻撃を仕掛ける。

 クロードは、まず本命からなのかとある意味女性の怖さを知るがそこで、


「「え?」」


 ミルルとシルフの疑問符が重なった。

 その偽怪盗へと攻撃を加えるが、まるで霧に攻撃したかのように手応えが無い。そこで、


「ミルル、シルフ、ちょっと新しい武器を手に入れたから離れて!」

「はいって……ちょ、鈴さん!」

「そこのクロードお兄ちゃんも離れたほうがいいよ!」


 シルフが気づいて、クロードにも声をかける。

 何事かというようにクロードが振り返り、慌てたようにその場から離れる。

 それと同時に鈴の周囲に一斉に銃が数十本も出現して、


「よし、魔力は大量に込めたばかりだから、思う存分使えるわね。一斉照射!」


 そう呟くと同時に魔物とその偽怪盗に、光の玉が次々と連続して撃たれて、触れると同時に爆発が起きる。

 鈴の瞳にはグングンと魔物の体力が減っていく光景が見える。

 結局は、全部で3分の1まで体力を削ることが出来た。

 魔物の方だけだが。

 それを見ながら鈴は呟く。


「おかしいわね、何であの偽怪盗は全くダメージを受けていないのかしら」

「何かからくりがありそうですね」


 そうミルルがつぶやくが、体力の減った魔物は一番に近くにいるクロードに本気で攻撃をし始めたようだ。

 そんなクロードだが、一人では大変そうだったのだが、


「えーい」


 そこでサーシャの声が響いた。

 どうやら幽霊状態で、以前の爆弾を使ったようだ。

 けれどそこで、そんなサーシャに偽怪盗ははっとしたように振り向いたのだった。


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