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女の人には好感を持たれると思いますよ

 突如現れた女神様。

 それは別に良いのだが、俺は嫌な予感しかしなかった。

 というか今当たっていると言っていた。

 

 いやだ、そんな行き当たりばったりの偶然が、この世界を揺るがす事態になっているなんて嫌だ。

 信じられないような偶然によって起こるとか、何処のコメディだよという気がしないでもない。

 もしかしたなら完全な部外者であれば笑えるのかもしれないが、当事者である俺にとっていがきりきりと痛む。

 そんな俺を女神様は覗きこんで楽しそうに笑う。


「タイキが嫌がってる。そんなに嫌なの?」


 そう言いながら女神様は、俺の頬を人差し指でツンツンしてくる。

 だが指だけなので俺は安心した。

 以前の様にあのふくよかで柔らかい胸に顔を埋められるという苦行を、感じずに済むのだ。


 それに比べれば、この程度の事はたいした問題ではないのである。

 そう俺が余裕をかましていた時でした。


「折角だから久しぶりに遊んじゃえ!」

「いやぁああああああ」


 そんなわけで俺は再び女神様の胸の顔を埋めさせられるというセクハラをされました。

 もういいや、何も考えずにこの幸せに浸っていようと俺は諦めた。

 だって女の人の胸に顔を埋めるのも、一応俺も男なのでありだと思うし。

 抵抗しなくなった俺を女神様は抱きしめながら、


「とうとうタイキも諦めたみたいね、そろそろ次の段階に移ろうかしら」

「や、やっぱり放してくれぇええ」

「あら、まだ抵抗するの? この生きの良さがまた良いのよねぇ~」


 もう女の人に弄ばれるのは嫌です、美人でも嫌ですと俺が涙目になっているとそこで、


「お、お久しぶりです、女神様」

「魔王ロリィちゃん、お久しぶり。相変わらず小さくて可愛いわね。でもそろそろ大人になりたいと思わない?」

「い、いえ、以前も申しあげましたが、そこまでして頂く訳には……」


 そんなとんでもないというような魔王ロリィに女神様は、


「あら、遠慮しなくてもいいのに。この前も失恋しちゃったんでしょう?」

「う、うぐ……ですが自力で成長して、自力で好きな男は捕まえますので女神様のお力ぞえなどなくとも……」

「もう、素直に贈り物は受け取っておくべきよ? というわけで、えいっ☆」

「ぬぁああああああ」


 魔王ロリィが悲鳴を上げた。

 同時にびりびりと服が破ける音が背後でしたが、女神様の胸に顔を埋められている俺には何が起こったのか見えない。

 そしてロリィが焦ったように、


「お、大人になってしまった!」

「あら、ロリィちゃんは美人さんになるのね」

「な、何故女神様は服をも一緒に大きくして下さらなかったのですか!]

「……忘れちゃった☆」

「ミルル、服だ、服を寄こせ! そこに胸に顔を埋めて幸せそうにしているとはいえ、男がいるんだぞ!」


 そう言われたミルルが、何処かへと走っていく。

 おそらくは部屋に行きロリィの服を探しに行ったのだろう。

 押して再び近づいてくる足音がして、


「このワンピースでよろしいでしょうか。ブラジャーは、このサイズの物しかなくて……」

「ぬっ、小さい……」

「申し訳ありません……」

「い、いや、小さくとも隠れれば……よし、後はワンピースを着て……く、胸がきつい」

「申しわけありません」

「い、いや……くっ、女神様、私を元に戻して下さい! 服ごと!」


 そこで魔王ロリィが切実そうな声で女神様に頼む。

 それに女神様は少し黙ってから、


「まあいっか。このままでも面白そうだけれど、ロリィちゃんはいやがっているもの。えいっ☆」


 そこで再びぼふっという音が聞こえて、静かになった。

 そしてようやく俺は女神様の胸から顔を放される。

 周りを見ると、特に変化はないように見える。

 そこで魔王ロリィが、


「ひ、酷い目にあった。元に戻って良かった。はぁ」

「……お疲れ様です」

「……ああ本当にお疲れだ。それで、女神様が言っていたお前の嫌な予感とは何だ?」


 そこで魔王ロリィが真剣な表情で俺に問いかけてくる。

 それに俺は更に疲れた顔になり、


「魔王ロリィは新聞などの情報媒体に触れる機会はあるか?」

「む、それは私をバカにしているのか?」

「いや、とりあえずは聞いただけだ。それで、最近、その……貴族の宝物庫ばかりを狙う窃盗団、物によっては盗賊団である“夜露死苦”っていうのがいただろう?」

「そういえばやけに強いそんな団体がいたな。確かこの街で捕まったと聞いたが」

「その窃盗団の残党がこの町で盗んだものを売っていたりしていたとか、そんな偶然だったら嫌だなと」

「……」

「……」


 ロリィは黙り、俺も黙る。

 この時俺はロリィと同じような引きつった笑みを浮かべていたと思う。

 そしてロリィが心の底から嫌そうに、


「まさかほんとうに偶然窃盗団が盗みに入ってその危険な宝珠を盗んだと?」

「おそらくは」

「なんというずさんな管理だ! あんな危険なものを……まさか危険なものだと知らないという可能性はないだろうな」

「いえ、俺に聞かれても……」


 そう答える俺を見てロリィは、今度は女神様を見るが、女神様は微笑んで、


「そうよ? だって人間だって貴方のように長生きではないのだもの」

「そうか。分かった。それで……いや、一度城に戻り正式にこの国の王たちと話をしておこう。他にも危険なものが有るからな」


 俺は何かのフラグが立った気がした。

 けれどそれに突っ込まない。

 きっと気づかないふりをすればどうにか出来る、そうだ、きっとそうだと俺hsこころん赤で繰り返す。と、


「どうかしらね~。じゃあまた今度ね、タイキ」


 そう言って女神様はスマホに隠れてしまう。

 俺は深々と溜息を付くとそこで魔王ロリィが、


「今日は美味しものをごちそうして頂いて、そして色々話が聞けてよかった。そのうち我が城にも訪ねてくるが良い」

「はい、機会があれば」

「では、失礼する。鈴、また食べに来るからよろしく」


 それに鈴がまたねと手をふって丼ぶりを片付け始める。

 そこで、魔王様がいなくなってからミルルが、


「タイキは子供が好きなんですか?」

「俺はロリコンじゃない」

「い、いえそうじゃなくて、こども好きの男の人って、将来家族になった時自分の子供をかわいがってくれそうじゃないですか」

「そう言われればそうかもな」

「だから結構、女の人には好感を持たれると思いますよ」

「そうなのか? そうだといいな」


 女の子の好感度が増すポイントが何処なのかを教えてもらい、俺はいいことを聞いたなと思う。

 そんな俺にサーシャがふよふよと近づいてきて、


「それでどうしましょうか。あの魔石を売っていたのって窃盗団なんですよね?」

「……様子を見に行って、警察に通報だな」


 と俺がつぶやくと鈴が、


「折角だから私も付いて行きたいな」

「鈴……店は?」

「少しくらいなら大丈夫。交代の時間までまだ少しあるもの」


 そう言いながら今すぐ丼ぶりを片付けてくるねと、鈴は走りだす。

 それを見送った俺だが、


「何で皆で行くことになっているんだ?」

「……この鈍感が」


 シルフが半眼でそんなことを言うが、俺にはよく分からなかったのだった。


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