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まるで異世界から来たような

 ロリババア。

 その名の通り、幼い外見をしているが、中身は歳を召したお方だという、外面詐欺である。

 よくゲームや漫画といった物語に出てくるのを見かけた事はあるが、こんな風に実物と会話するのは初めてだった。


 なので俺はまじまじとこの魔王ロリィとやらを見てしまう。

 サラサラの黒髪に青い瞳の幼女だ。

 中身が年を食っているせいか、見た目は可愛らしい幼女だが妙にマセて見える。


 ただマセて見えるだけで、大人の持つような色香も何もない。 

 リズさんの持つようなあの何だかよく分からないふらふらと引きつられるようなあの謎の感覚はない。

 そう思ってじっと見ている俺に、その幼女ロリィが半眼になる。


「お前、今とても失礼な事を考えただろう」

「! 何だと、心を読んだのか!?」

「ふ、お主の顔を見て入れはすぐに分かる! どうせ見かけは可愛いが中身は年寄りだの、色香も何もないだのそんな事を思っただろう!」

「く、的確に当ててきやがった。何だこのロリババアは」

「ロリババア、だと? この魔王様に向かって小さいババアとは何事だ!」


 幼女がとても怒っている。

 若干、聡すぎるきらいのある幼女に、俺はどう対応しようかと思いつつも、


「じゃあ、なんて呼べばいいんだ」

「……可愛く、ロリィちゃんで。……今いい年して何言っているんだ、とか思っただろう!」

「まただ、また当ててきたぞこの幼女」

「だったらもう少し隠す努力をしろ! その微笑ましそうな顔は何だ」

「いや、見かけは幼女だし」

「……いや、まあそうだといえばそうだが……お主、子供は好きか?」


 普通に子供は可愛いと思うのだが、そこで俺の脳裏に今ここで頷いてはいけないという危険信号が走る。

 その好き、というものは果たして普通に可愛い物を見て思う感情なのか、それとも別の感情なのか。

 前者なら構わないが、後者だと思われるのは避けたい。


 これは健常者なのだ。

 普通に育ったった女の子が好きなのだ。

 そう、ロリコンではないのだ!

 心の中で俺は思いながら黙っていると、魔王ロリィが、


「まあ、ロリコンではなさそうだからいいが」

「そ、そうですか、良かった分かってもらえて」

「ロリコンでお前くらいの見た目だったら消し炭にしてやっているところだからな」


 せめてもう少し穏便な方法でお願いしたかったが、分かってもらえてもらえて俺は安堵する。

 そんな俺にロリィは、


「まあ見た目が好みだったらロリコンを矯正してやる所だが」

「え……一体何を」

「知りたいのか? ちなみに従順にはなるのだが、ロリコンじゃなくなったのでわらわに何の興味も抱かなくなるので今の所失恋続きだが」

「そ、そうなのですか」

「これでも大分成長したのだが、この世界の魔力は取り込みにくくてな。未だに成長がゆっくりなのだ」


 そう告げるロリィだが、俺はある言葉に引っかかる。

 この幼女は今、この世界の、と言った。

 それが気になって問いかけようとした所で鈴がひょっこりと顔を出して、


「それよりもさ、早くうどんを食べようよ。うどんが伸びちゃうし」

「そういえばそうだな。じゃあカレーを上にかけるから持ってきてくれ」


 そう言って鈴の持ってきたうどんに、一つづつ俺はカレーを掛けたのだった。







 うどんにかけるだけでは、カレーは無くならかった。

 残りはどうしよう、一晩おいたカレーは美味しいのは認めるが、パンにつけてカレーパンもどきにしようかと俺は思う。

 米が炊けないのがあれだなと思いながら俺は、席につく。


 “魔法の精霊ステッキ”の精霊ミィは魔石なので椅子はいらない。 

 ちなみにサーシャは皆が美味しそうに異国の料理を食べている光景なんて、耐えられないと言って、俺から魔力を幾らか吸い取りシルフの部屋でふて寝をしている。

 そして皆でカレーうどんを食べ始めたわけだが、


「うん、上手い。普通にカレーの味がするな。……あの材料でよくここまで再現出来たな」


 投入した材料を思えば不安でたまらなかったが、味は普通に美味しい。

 よく食べていたカレーの味で、鈴の手作りかけうどんととても合う。

 鈴もこのうどんを食べて、

 

「カレーうどん……恐ろしい子。これは皆虜になってしまう……是非メニューに追加しようっと」

「追加するのか」

「もちろん、そして新たにうどんの魅力にとりつかれた中毒者を着々と増やしつつ、この世界を支配するのだ!」

「おい、魔王の役目を奪っているぞ」

「いいのよ別に。ロリィちゃん、世界征服する気はないらしいし」


 そこで目を輝かせながらうどんを食べているロリィが言い返した。


「する気はある! だがやらないだけなのだ!」

「はいはい、それでカレーうどんどうですか?」

「うむ、この絶妙な辛さ、旨味、甘み、全てが一体化し芳しい香りを加えつつもうどん本来の味を損ねていない。このスープも一口くちにすれば……」


 そんなとうとうと語りだす幼女ロリィに俺は一言、


「ふつうに美味しいじゃ駄目なのか」

「! 美味しいものをこうやって表現することで更に美味しく頂けるというのに! 全くこれだから近頃の若いものは……」


 ぶつぶつと愚痴を言いながらまたカレーうどんを食べる幼女ロリィ。

 そこでミルルが、


「でもこれは美味しいですね。初めて食べた不思議な味ですが、とても気に入ってしまいました」

「そうか、口にあってよかったよ」

「シルフも夢中で食べているみたいですし」

「べ、別にそういうわけでは……美味しいですけれど。でも、あの精霊のミィのほうがもっとがっついています!」


 シルフが指さした先にいる精霊のミィは丁度丼ぶりに手を付けて汁を一滴残らず飲み干すところだった。

 あまりの早さに俺が唖然としていると、


「うん、これはなかなか美味しいですね。ふふん」

「……そうか」


 そうとしか俺は言えなかった。

 そしてうどんを口にし始める俺だがそこで魔王ロリィが、


「それで先ほどは私に何を聞こうとしていたのだ?」

「この世界の魔力は取り込みにくくて、と、まるで異世界から来たようなことを言っていたので、少し話が聞きたいなと」

「なんだ、異世界に興味が有るのか? それともお前達も異世界人か?」

「そうです」

「そうかそうか……ええ!」


 幼女ロリィが驚いたように俺を見て、目を瞬かせるが、


「……その不思議な気配は異世界のものか。この世界の者達と違うと思っていたが、私の世界のものとも違うし」

「では貴方も異世界の方なのですか?」

「うむ、そもそも魔族は異世界のものがこの世界に渡って来て定住したものだ。昔色々あってな」

「「「ええ!」」」


 それに俺とミルルとシルフが同時に驚きの声を上げたのだった。

 


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