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贔屓のお客さんを連れてきたよ!

 ぐつぐつと煮た野菜に、合成したカレールーを入れる。

 味見をしながら、これくらいかなと入れていく俺。

 見知った味のカレーに俺は満足したように頷いていると、


「それで何人分いるかな。私とタイキとミルルとシルフと……“魔法の精霊ステッキ”の精霊ミィちゃんはどうかな?」

「……今起きないと美味しい物を食べ逃す予感!」


 そこで俺の腰の箱からミィが現れる。

 猫っぽい精霊なミィは、目を輝かせてカレーの鍋を見ている。

 そんなミィを見て鈴は、


「分かった、じゃあ5人……でももう一人連れて来て良いかな」

「? 誰か知り合いでも連れてくるのか?」

「そんな所。今日もあの人来るだろうし、贔屓にしてくれているお客さんだから新しい味は喜んでくれるかも」

「そして上手くいったならゆくゆくはお店のメニューに?」

「もちろん! カレーうどん美味しいし」


 そんな抜け目のない鈴に俺は、確かにカレーうどんは美味しいし、手軽に食べられるならそれでもいいかなとも思った。

 そしてさっそく素うどんを作ってくると鈴は出て行ってしまう。

 なので俺はカレーを作り負えてしまったのでやる事がない。


 そうなってくると暇な人間が考える事といえば、単純で。

 先ほどの女神様の様子も含めて、やっぱりハーレム能力は欲しいよなと思う。

 やっぱりモテモテになりたいよな~と俺が思っていると、ミルルが近づいてきて、


「これが“カレー”ですか?」

「ああ、俺達の世界の食べ物だ。カレーパンなんかも美味しいんだよな……作った事はないけれど今度試してみようか」

「美味しそうですね……。タイキの世界は、色々な食べ物があるんですね」

「そうだな。この世界に似ているようだけれど少し違うから、それはそれで目新しいかもな」


 そんな事を話しているうちに、ふとミルルを見る。

 いや、別に相変わらず可愛いなと思っていたのだが、随分と距離が近い。

 これはあれか。


 俺に対する信頼の証というものだろうか。

 こんなに近いと男が勘違いするんじゃないかと俺が思った所で、ミルルが少し動く。

 服の隙間から、ふくよかな胸の谷間がちらっと見える。


 そういえば以前、女神様の胸を見てもう少し大きくなりたいと言っていたなと思いだす。

 十分大きい気が俺にはするが、確かに胸は大きければ大きいほどの良い……とは言わないが巨乳派なのでそれも良いかもなと俺は思う。

 そういえばこの前の満月の夜のちらっと見せてきた胸もあれだなったなと俺が思っていると、


「私、もう少しタイキと一緒にいてお料理も知りたいです」

「そうか? だったら俺も頑張って色々作るかな」

「嬉しいです」


 微笑むミルルに一瞬どきりとしてしまう。

 可愛い女の子が微笑むと更に可愛くなるのは反則ではないか。

 しかもこのミルルは、俺は対象外なのだ。


 力のある俺がパーティにいると嬉しいと以前言っていた。

 やっぱりこう、恋愛対象になると女の子の方から、『好き、抱いて!』みたいな事になるのだろうか?

 ……それはないな。


 まずは、何処かに一緒に遊びに行ったりして、好感度を上げてから告白してデートして、といった過程があるはずだ。

 でもどこかに一緒に遊びに行く止まりなんだよな、と俺は思って、気付いてしまった。

 そう、今ミルルと冒険に行っている俺は、つまり告白の前段階ではないだろうか。


 そう夢見がちな事を思った所で、現実は常に非常なのだと俺は諦めた。

 そんな俺にシルフが近づいてきて……何故か半眼で見上げる。


「全くタイキは分かっていませんね」

「何がだ?」

「女心という物です。もう少し聡くないといけないと思います」


 シルフにそう言われて、俺は真剣に考える。

 女心が分かっていないと、子供とは言え女の子に言われてしまった俺。

 きっと子供でも分かるような何かに俺は気づいていないのだろうが、そこで俺ははっとした。


「まさかミルルに好きな人が出来たと? ……シルフ、何でそんな風に、更にこいつは駄目な奴だ的な溜息をつくんだ?」

「……自覚がないのも含めていっても無駄だなと思っただけです。先ほどの女神様との会話を聞いていても思いましたが、タイキは色々と駄目だと……、むぐ」


 そこでミルルがシルフの口を押さえる。

 そして微笑みながらシルフに、


「シルフ、ちょっとあっちでお話をしましょう」

 

 そう言ってミルルはシルフを連れて行ってしまう。

 一体なんだろうなと俺は二人を見送った所で、


「やほー、うどんのお待ち! そして、贔屓のお客さんを連れてきたよ!」


 鈴が現れ、そこには以前うどんやで情熱的にうどんについて解説していた幼女を連れて来ていたのだった。






 幼いが将来は期待が大きそうな美少女だが、何処かある程度歳がいったような奇妙な落ち着きがある。

 そんな幼女を見ていると鈴が、


「こちらが、魔王ロリィちゃんです。うちのお店のお得意様なんだよ?」

「これ、鈴。私の正体を説明する奴があるか」

「あれ、いっちゃいけないんでしたっけ」

「そうだ。外で私を見かけても無視するように、我らが魔族の貴族にもいい含めてあったというのに……まあいい。久しぶりだ、ミルル、シルフ」


 そこでその幼女がミルルとシルフに声をかけると、


「お久しぶりです、魔王様。まさかこのような場所にいらっしゃるとは……」

「うむ、そういえばミルルは恋人候補を探していたか。それで首尾はどうだね?」

「……なかなか難しいです」


 そう呟きながら、ちらりと俺を見るミルル。

 もっと俺が頑張って宣伝しないと男が寄ってこないという催促なんだろうかと俺は思うが、そこで魔王ロリィが、


「……いや、うむ。そうか……“淫魔”族は面食いだったような気がしたが気のせいか?」

「いえ! そんなことないと思います!」

「そういえばシルフもついていったのか。焦るお前達の両親に、無理やり場所を調べさせられた私の身にもなってくれ」

「……すみません」

「まあ、シルフはお主を気に行っているようだから、仕方がないか。それで、そこの地味な男」


 そこで何故かこの謎の幼女に呼ばれる。

 何だろうと俺が思っていると、その幼女は頷き、


「ふむ、やはり鈴と同じものを感じるな」

「そ、そうなのですか」

「そもそも鈴とお前は一体何なのだ? どうも奇妙な感じがする」

「えっと、子供にはお話しできないような内容なので」


 そうやって俺はかわそうとした。

 けれどそれにこの幼女は怒ったように、


「失礼な、私はこう見えて500歳は越えているのだぞ!」


 幼女らしい可愛いらしく頬を膨らませてそう叫んだのだった。

 


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