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お前の仲間があそこに沢山いるから

 “鼠森の螺旋の塔”。

 鼠の森らしき鼠がいっぱいいるのかと思えば、途中にハムスターのような物が両頬一杯に木の実を頬張っていたくらいだ。

 では、何故この森が鼠森と呼ばれているのかといえば、


「暖炉やなんかで焚くと、ねずみが嫌がる匂いを発する灰色の草があるからなんだよな。というか、この世界にネズミはいるのか」

「いるわよ。時々天井裏で走り回っているし。もっとも私達が鼠だと思っているものとは違うかもしれないけれどね」

「それは嫌だな」

「もしかしたならハムスターみたいな動物が走り回っているのかも」

「それはそれでありだ」


 籠の中でハムスターからからと丸いあの道具を走りながら回している様子を俺は思い浮かべて、ほのぼのした。

 そんな俺達は何故か整備された道を歩いて、その“鼠森の螺旋の塔”を目指す。

 そういえばゲームと同じで、土がむき出しとはいえ、道が出来ているんだよなと思う。

 それを疑問に思って俺は鈴に聞いてみた。


「鈴はどうしてこの遺跡などへの道が整備されているのか、分かるか?」

「多分あれじゃない? 冒険者が冒険しやすい環境をって」

「そういえば奴隷解放も冒険者を増やすためだったな。でも何でだ? そういえばこういった遺跡って、良く中の物が無くならないよな。沢山冒険者が来れば、持っていくものも無くなりそうなものだが」


 ゲームなら分かる。

 何度も画面外に出て中に入ると同じアイテムが出るのは、他の家庭用ゲーム機と同じだ。

 ただ採れる物が素材だからだろうか?


 そういえばこういった遺跡に入って貴重なアイテムはまだ俺は手に入れた事がない。

 魔法の道具みたいなものが入った宝箱も、そういった新たに見つかった謎のルートといったイベントも何もない。

 それを考えると現実的と言えるのかもしれない。

 でもこの世界にはそういった特殊アイテムあるのだろうかと思って俺は、


「この世界では宝箱があってお宝が……みたいな事ってあるのか? あとは、新しい遺跡のルートが見つかったとかそういうのってあるのか?」

「あるよー、ゲームの時ほど多くはないけれどね。特に新しいルートが出た時はギルドに特別会場を作って張り出されるぐらいに大賑わいになるんだよ」

「へぇ、でもあの宝箱、どうしてあんな道具が入っているんだろうな」

「何か知らないけれど、あの宝箱自体も遺物らしくて、開けて放置していても、何時の間にか閉じた状態になっていて、そうなると新しい品物が補充されているんだって」

「……誰が作っているんだ? それともどこかに無人量産設備でもあるのか?」

「案外そうかもね。遺跡自体もまだ良く分かっていないし、ただ魔力が集まる所に遺跡がたてられているのか、はたまた、集められるような設備があるのか……」

「あれか、超古代文明ってやつか」

「みたいだね。こんなすごい文明が滅ぶ方が、私達には不思議な気もするけれどね」

「そうかもしれないな」


 そんな雑談を鈴としている内に、俺達は目的の場所へとたどり着いたのだった。






 “鼠森の螺旋の塔”は、灰色の石を積み上げていった、5階ごとに幅の狭くなっている塔だった。

 どうして5階ごとかと分かったのかといえば、単に規則正しい窓を数えていくと5階ごとだったからだ。

 なので一気に20階までいかなくて済んでよかったと思うが、一つの階の窓の幅から考えると大体、10階程度の高さはある。


 それを考えると一気に上に行くと、一つの階が15メートルとして、20階で300メートル。

 誤差を考えると333メートル以上になると嫌だが、途中途中、人が一人歩ける程度の幅ができているので、何かあってもそこに降りれば大丈夫なのは良かったと思う。ただ、


「塔の周辺に白いものが浮かんでいる。あれはまさか……幽霊」

「タイキ、何でそんなに幽霊を怖がっているの?」

「べ、別に怖くもなんともないし!」


 そう俺が鈴に答えているとそこで、サーシャがにゅっと出てきて、


「タイキは相変わらずお化けが怖いんですね、私にも悲鳴をあげていたし」

「……サーシャ、お前の仲間があそこに沢山いるから、仲間に入れてもらえ」

「うにゃああああ、い、嫌ですよ! というかあの白いフワフワしたものは魔物のなりそこないじゃないですか! 」


 そういった物体なのかと思いながら見上げて、コレが魔石にくっつくと精霊になるのかと思う。

 そこで俺は思い出した。


「しまった、あの魔法の精霊ステッキのミィを回収してくるのを忘れた!」

「! 私のミィが!」


 そういえばあの猫っぽい精霊は気持ちよさそうに寝ていて、ミルルが倒れた時も寝ていたような……。

 あまりにも静かだったので、存在を忘れていた。

 そもそもベッドの下が心地良のにゃ~、といってそのベッドの下に隠れていたので見逃してしまったのだ。

 失敗したと俺は思いながら、


「急いでここで、“もこもこ花”を回収して、戻るぞ! こんな時にミルル達が襲われたら大変だから!」

「そうだね。よし、“翔べ”」


 鈴が掛け声とともに空をとぶ。

 俺もすぐに飛び上がるがそこで、すぐに、窓からコウモリの群れのような魔物が大量に現れる。

 炎を纏うそれらの群れは大きな火の塊に見える。 

 すぐさま俺は氷の魔法を選択し、


「“氷結の陣(アイス・サークル)”」


 呟くと同時に俺の足元に浮かんだ円陣から青白い冷気のつぶが生まれて、それが一斉にコウモリに襲いかかる。

 そしてすぐにに凍りづけになり、砕け散って羽のアイテムが地面に落ちていく。

 けれどすぐにまた炎のコウモリが現れてそこで、


「とりあえず、出てきたのだけ潰す! ていやぁああ」


 鈴が大きくした鎚で、塔に打ち付けて敵を潰す。

 打ち付けた場所から雷が見えるが、それでももまた窓から手機が現れる。

 それを見て俺は、


「倒してもキリがないな。一気に最上階まで行ってしまったほうがいいかもな」

「確かに。全部倒す必要なんて無いんだものね。……こうやって中から上がっていないわけだし」


 そう言って俺達は、敵の攻撃をうまくよけながら急いで飛び上がる。

 やがて最上階の窓にたどり着いてそこに入り込む。

 幅が狭くなっているとはいえ十分に広い部屋で、しかも仕切りと出入口があるので、外から見ている時も思ったが更に広いようだ。


 しかもいろいろな植物がたくさん生えていて、温室の中に入り込んだように感じる。

 ちなみに窓から入り込むとそのコウモリたちは中には入れないようだ。


「ふう、こいつらは入ってこれないらしい。あとは“もこもこ花”を手に入れるだけなんだが……すぐに防御できるように備えて、あとは、サーシャ」

「はーい、なんですか?」

「もし俺が攻撃できないようだったら魔法の道具で攻撃してくれ」

「分かりました、この前みたいのでいいですね」

「ああ、あの時は助かった」

「サーシャはやればなデキる子なのです。ではでは~」


 そう言ってサーシャは箱のなかに引込み、俺達は探し始めたのだった。

 


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