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気のせいかと俺は片付けた

 カーテンの隙間から朝日が差し込む。

 もっときちんとカーテンを閉めておくべきだったと思いながら、俺は布団にもぐりこんだ。

 実はこの布団、自前である。

 ベッドには布団がなかったが、以前大量に布団とシーツと敷布を作る機会があり、ミルル達にもそれを渡すと、


「ありがとうございます。でも布団なんて、どうして作ったのですか?」

「ゲームのイベントで、新しい宿屋に納品する依頼があって、面白がっていりろと模様を付けていたらこんなに沢山に」


 あの時、様々な模様が付けられるとあって、色々作ってしまったのだ。

 おかげで布団一式が、後78個……。

 どう考えても作りすぎだと俺は反省した。


 魔法の袋のおかげで特に不自由はしないが、その内幾らか売り払うかとぼんやりした頭で考えて俺は瞳を閉じようとして、そこで枕元にあるスマホに目をやり……目が覚めた。

 慌てて目を大きく開いて俺は、スマホの電源を付けると、


「おはよう、タイキ。昨日は随分とつれない態度でしたね? 私、寂しかったわ」

「すみません、昨日は疲れて眠くて……」

「そうでしょうね、タイキはここに来て……3日だったかしら」

「今日で4日目です」

「そうね、上手く馴染んでくれて本当に助かるわ」

「で、でも俺は“客人”何ですよね? 俺達はいずれ元の世界に返してくれるんですよね?」


 そこで女神様は黙って、うーんとちょっと考えてから、


「別にタイキにはここで生活していても良いんじゃないかしら」

「……分かりました。スマホの電波は届くそうなのでそれをヒントに元の世界に戻る方法を探す旅に出ます」

「いやーん、冗談なのに。ちゃんと貴方にお願いしたいことだってあるのよ?」

「その俺にお願いしたい事……いえ、昨日の夜話したい事があると言っていましたよね?」


 その問いかけに、女神様は少し黙ってから、頬笑み、


「うーん、今そういった気分じゃなくなったからまたね。それに、もうすぐミルルが食事を呼びに来るのよね。ふふ……抱きついちゃえ」

「うわぁあああ」


 がばっと抱きついてくる女神様。

 丁度押し倒されるような格好になって、こう、胸も俺にこすりつけてくるような柔らかいようなこう……うわぁあぁあ。

 そう俺が混乱していると、部屋のドアが二回叩かれて、


「タイキ、朝食が出来ました。起きて下さい……」


 そこでドアが開かれてミルルが顔を出し、絶句した。

 ころんとお玉のようなものが床に落ちて、


「タイキ……朝から一体何をしてらっしゃるんですか?」

「あら、ミルルがこの部屋に来る事が分かったから抱きついてみたのだけれど、どう?」

「……」


 無言になるミルルだが、すぐに深々と溜息をついて、


「女神様、女神様も朝食を一緒にいかがですか?」

「あら、良いのかしら。頂くわ」


 そう言ってふわりと浮きあがり俺から退く女神様。

 そしてミルルが俺に微笑み、


「タイキ、早く支度をしてきて下さいね」

「あ、ああ……明日は俺が朝食を作ろうか?」

「……そうですね、お願いします。今夜は……満月ですから」


 そう微笑むミルルに、そういえば今日はきちんと鍵をかけておかないとなと俺は思ったのだった。







 テーブルに並んだスープにベーコンエッグの様なものにサラダ。

 すでにシルフは席についていて、


「タイキ、おはよう」

「タイキ、おっはよー」


 シルフはまだ寝ぼけているらしく、ぼんやりしていて髪に寝癖がついている。

 そしてその傍には、サーシャの石が傍に置かれていてそこから元気いっぱいにサーシャが挨拶をする。

 結局一番この中で仲の良いシルフと一緒に、サーシャは眠る事になったのだ。


 そしてサーシャが言うには、あの“魔法の精霊ステッキ”の精霊はまだ眠っているらしい。

 やはりあのへんな窃盗団の党首ダマに使われて疲労してしまったらしい。

 今もまだ気持ち良さそうに眠っているのだそうだ。

 

「でも私の分まで、ありがとうね」

「いえ、女神様のお口に合うかどうか……って、ええ!」


 そこで、女神様がスープの皿に触れると、スープが消失した。

 次にベーコンエッグの様なものの皿に触れるとそれもまた消失し、パンの皿のものも消失した。

 その全てをどうやら女神様は食べたらしく、


「美味しかったわ。御馳走様。また御馳走してくれると嬉しいわ」

「ええ、それは構いませんが……」

「そう、よろしくね~。ああ、これはお礼よ」


 そう言って女神様は、何か一つミルルに渡していた。

 それを見たミルルが驚いたように、


「これは、“赤海貝の真珠”。しかもこんな綺麗な物は初めてです」

「うふふ、女の子はこういった宝石が大好きですものね。アクセサリーにして着飾ってみるといいわ」

「は、はい」

「それじゃあ私はしばらくスマホの奥深くにいるから、そろそろこのスマホの機能も使ってくれると嬉しいわ、タイキ」


 そう告げて女神様はスマホに入り込んでしまう。

 使うって何かあったかなと俺は考えて、


「そういえば俺達の世界の物が作れる方法が出てくるとか。……この葉っぱのようなマークが見覚えがないな。これかな」


 そうスマホの画面を軽く押すと、“ぶったいごうせいけんさくしすてむ”といったネットの検索画面の様なものが現れる。

 試しに明日の朝食を考えて、みそ汁なんかを作りたいとしたらどうなるんだろうと考えて、


「味噌と煮干しと昆布、か? それとも出汁と味噌と具でいけるか? ……とりあえず、味噌を調べてみよう」


 確か味噌って熟成する時間が必要なはずだよなと思いながら検索をかけると、


「調理時間10分:鍋に水、岩塩、星屑の欠片、森のきのこ、溶けかけた人参、米魚を鍋に入れて蓋を閉めたまま以下に記載の呪文を唱え……おい、豆はどうした」


 大豆とは言わないがせめて違う種類の豆は入っていないのかとか、麹による発酵とかあるのではと思いつつ、けれどこのお手軽時間は魅力的と俺は真剣に考える。

 そして丁度材料は全て持っていた。


「……後で作ってみるか、試しに」

「何をですか? タイキ」


 ミルルが聞いてくるので俺の世界の調味料だと答えると、楽しみだという。

 そこでふとミルルが、


「そういえば、リズさんのレシピを作ってみたいなと思ったので、スーパーに行きますがタイキは必要なものはありますか?」

「いや、今はない。そういえばリズさんのレシピを見せてもらっても良いか?」


 俺は何気なく聞いてみて、そのレシピの紙をミルルから受け取る。

 その時、俺の脳裏に機械音の様なものが聞こえる。

 何だろうと俺は思うが、結局周りに特に目立った変化はなく、気のせいかと俺は片付けたのだった。

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