エピローグ・第一部完
頭領のダマ含めてその他全員を縄で縛りあげる。
そして警察のような人達をリズさんが呼び、彼ら全員を引き取っていく。
俺達も事情聴取の様なものを受けたが、たまたまリズさんの依頼を受けて、その依頼品を渡しに来た所で遭遇し、倒すお手伝いをさせていただいた……とリズさんが説明してくれた。
その過程で聞いたのは、何でもあのリズさんは本当に凄腕の冒険者で、昔、ブイブイ言わせていたらしい。
そしてその警官のような人がこっそり教えてくれた。
「実はリズさん、素敵な方じゃないですか。でもそんな彼女にどうして他の男性が手を出さないと思います? つまりは……そういう事です」
「は、はあ」
「しかも彼女の夫ももっと規格外に強い方で……我々も本当は、死んだ事にして隠密行動しているんじゃないかと半分冗談で言っているくらいなんです。おっと呼ばれた、失礼」
こちらの警官は随分と親しみのある存在であるらしい。
それともこれは何かのフラグ用の説明なのだろうか。
どちらもありそうで俺は悩む。
そしてそれらの窃盗団を全員引き渡してから、リズさんに俺達は言われた。
「久しぶりにいい運動が出来るかと思ったのに、皆さんのおかげで出来ませんでした。罰として、これからお茶会をしますので来て下さいね。……サーシャ姫の事も聞きたいですし」
サーシャ姫と名指しで言われて、サーシャはプルプル震えながら俺の箱に隠れてしまう。
何が怖いのか。
記憶になくとも本能的に何かトラウマになるような事があったのかもしれない。
そこでようやく俺達は、警察の様なものを呼ぶ前に隠しておいた“魔法の精霊ステッキ”を茂みから取り出す。
理由は証拠物品として押収されてしまうかもしれないからだ。
ああいった国家権力に保管してもらっておいた方が安全……なのかもしれないが、この“魔法の精霊ステッキ”は生物なので、回収した。
その“魔法の精霊ステッキ”の精霊は、半透明の猫の様な形をしていて、名前はミィというらしい
サーシャがそう名付けたのだそうだ。
しかも人と同じ言葉をしゃべるので意思の疎通は可能だが、
「良くも私を探しに来てくれなかったわね、サーシャ!」
「にゃぁああ、止めて、叩かないで、猫パンチは痛いようぅう」
サーシャが杖の精霊の猫パンチを受けて逃げ回っている。
この力関係の差に、ある種の感慨深いものを感じているとそこでリズさんが相変わらず優しげな頬笑みを浮かべながら、
「あら、ミィちゃん、お久しぶり」
「うわぁあああ、リズだぁあああ」
化け物に出くわしたような鳴を上げるミィ。
リズさん、この人本当に一体何をしていたんだろう、と俺は思うが口にはしない。
気付かなかったふりをして嵐が過ぎ去るのを待つだけだ。
そしてそのミィはといえば“魔法の精霊ステッキ”の中に隠れてしまった。
そこはかとな机が震えているのは気のせいではないのだろう。
このこわがりっぷりは見事としか言いようがない。
そこで俺達は再びリズさんに案内されて、お茶会に案内される。
聞かれたのはもちろんサーシャ姫の事だ。
なので俺が事の次第を話すと、
「相変わらずサーシャ姫は抜けているわね」
困ったわというかのようにリズさんが呟くがそこで杖からミィがやってきて、
「ごめん、サーシャ。私見捨てられたかと思って、悲しくて……」
「うん、別に良いよ。無事取り戻せたし、私も元に戻れるだろうし。それに、何だかタイキ達と一緒にいると楽しいし」
「サーシャ……何で私があんな毛むくじゃらに好きかって言いように使われているのに、あんたは楽しい思いをしているのよ!」
「痛い痛いようぅ! 私だって、ひもじい思いだってしていたのに!」
理不尽な精霊と、その飼い主のサーシャの戦いが始まった。
微笑ましい光景だと、俺は女の喧嘩には触れないでおこうと空気のように気配を消しながらお茶をたしなみつつそこでミルルが、
「あの、あの粘液状の少女は一体」
「あの子、ある日突然うちの庭に現れて。何でも母親とはぐれたとか何とか。人間の形に固定化するのも難しいみたいだから、どうしようかと思って」
「魔物の一種でスライムという物がありますがそれではなさそうですし。そもそも人型が、“人間”と女神様に定義されていますし」
「ええ、そうなんです。だからどうしようかと」
「……そのような希な種族が過去にはいたかもしれませんので、魔族側から調べさせて頂きます」
「そうですか? 助かります、ミルルさん。代わりにサーシャ姫の件、こちらから説明を送っておきましょうか?」
そのリズさんの答えにもう少しここでタイキ達と一緒に冒険したいというサーシャ。
ミルルに睨まれつつ、影武者の来る約一週間後までタイキと一緒にいる事になって。
話はそこで終わるかに見えた。だがそこで鈴が、
「タイキ、試しにその杖使えるか試してみなよ」
「……何で女の子が降ってそうな可愛い棒を俺が振らないといけないんだ」
「良いじゃん、もしかしたなら“精霊使い”の才能もタイキにはあるかもしれないし」
「そんなにいろんな能力がインフレしてたまるか。俺はやらない」
「えー、ケチー」
鈴が文句を言っていたが俺は無視した。
俺の中でいは未だに先ほどのダマのあの様子が頭に残っている。
あんな気色の悪いものなんぞ出来るか!
俺はそう思って、その一線は譲らなかった。
やがて菓子と紅茶を楽しんで、
「では、またお茶会に来て頂けると嬉しいですね、皆さん」
リズさんに見送られながら、その場を去ったのだった。
色々な事があって疲れた俺。
夕食をシルフの言っていた魚のお店に行ってとり、今俺はベットに転がっている。
サーシャも引き出しでぐうぐうと気持ち良さそうな寝息を立てている。
皆疲れ果てているようだ。
それはそうだろう。
今日一日で色々な事があった。
そういえば女神様は、今日は大変だとか言っていたような。
予定調和ってやつか?
そう俺が思っていると、
「そうよ、タイキ。私は女神様だもの、全部お見通しよ?」
「女神様……今日は疲れて、眠くて」
「あらそう? 折角色々お話しようかなと思ったのに」
「今は眠いです。もうねかせ……て……」
そこで俺の視界はブラックアウトした。
そんな俺に女神様は困ったように笑って、
「仕方がないわね。まあこの三日間頑張ったものね……」
女神様はそう呟いてタイキの寝顔を覗き込み、小さくくすりと笑う。
そのまま額にキスをして、
「お休み、私の愛しい大輝」
女神様は寝ているタイキにそう、恋人を見つめるかのようなまなざしで愛しげに囁いたのだった。
ここまで読んで頂きありがとうございました。本作は、奇をてらった物ではなく、普通のハーレム物を書いてみようという試みから生まれました。これにて、第一部完です。一時的に完結にしておきます。
これから数日ほどお時間を頂いて、誤字脱字の修正を行いたいと思います。後は登場人物紹介・世界観も書きたい……。予定は未定
ここまでお付き合いありがとうございました。これからもよろしくお願いいたします。




