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ゲームでは見たことがない

 てんとう虫を大きくしたような魔物がこの場所に大量に入り込んでくる。

 もちろん彼らの目的は俺達らしく、6足歩行でわらわらと近づいてくるのが、気持ち悪い。

 そしててんとう虫よろしく、空が飛べるらしい羽が生えている。


 ギョロギョロと蠢くそのてんとう虫の瞳から、おそらくは視覚でこちらを認識しているのだろうと思う。

 そして彼らのレベルは多少ばらつきがあるものの、そこそこ強い部類で、しかも数が多い。

 更にこちらの事情であまり戦闘を長引かせたくない。

 何故ならこの“発光銀花”が壊れるからだ。となると、


「鈴の攻撃は、“発光銀花”に影響が出るから攻撃しないように」

「わかったわ。じゃあ後ろのほうで観戦しているわね」


 鈴が残念だわと俺の後ろに下がる。


「では私が、あの魔物を食い止めて、呪文の時間を稼ぎます」

「よろしく、ミルル」


 そこでミルルが頷いてから持っていた弓を引き、その銀色の矢には冷気が集まる。

 見るとシルフがその弓矢の冷気を増幅させている。

 やがて渦巻く冷気が肌に感じるほどになって、


「“氷結の盾(フリーズ・シールド) ”」


 その言葉とともに更に冷気が膨れ上がり、ミルルが弓を引く。

 その矢はそのてんとう虫の前に落ち、氷が走るように横に広がりそのまま高く聳え立つ氷の壁が天井付近まで膨れ上がる。

 けれどそのてんとう虫のレベルを考えるとどの程度持つかわからない。


 現状では“発光銀花”を手に入れてこのまま退散する時間もあるがこのレベルの魔物を倒した時に手に入るアイテムは、そこそこ品質がいい。

 しかもこんな魔物は今までゲームでは見たことがない。

 どんなアイテムが手に入るのかも知りたいという欲求もあるので、


「よし、折角だからあいつを倒してアイテムを手に入れよう。ちょうどサーシャにも協力してもらいたいし。……援護を頼むにしても、タイミングがどの程度かも知りたいからな」

「わーい、私、初めて活躍できます! 何ですか、魔法アイテムでの攻撃ですか?」

「“幻影の狭霧”を使って、あの氷の壁を突破した瞬間に目眩ましをして欲しい」

「それだけですか?」

「それだけだ。後は俺の魔法で一気に片を付ける」

「……まあ、タイキが張り切っているからおまかせですね。えっと確かアイテムはこれっと。呪文を唱え終わったら、すぐにでも使わさせて頂きます」

「ああ、まああの壁が壊れるくらいまで、時間調整――できるといいんだけれどな」


 そう俺は答えながら、あの呪文を探す。

 広範囲攻撃の雷の呪文である。

 雷の雷球を呼び出すその呪文を、呼び出した選択から選んでいく。

 確か雷属性はこのへんにあったはず……見つけた。

 その呪文に軽く指を触れると、その呪文が点滅して、俺の口から呪文が勝手に紡ぎだされる。



「それは雷を司る者


 新たなる始まりを示し


 猛き力を持ち、敵を屠る王


 その一線は闇を照らし


 白き輝きを持ってそれを成す


 その片鱗は、数多の敵を打ち


 滅する輝きの雨


 今こそその力を、指し示せ」



 その言葉と共に、俺の足元に金色に輝く魔法陣が浮かび上がる。

 そういえば声を封じてくる者や風邪の時はどうするんだと一時期ゲームをしていて疑問に思ったが、それを乗り切るのが攻撃用のアイテムなのだ。


 魔法使いは意外に重宝するキャラなのだが、見た目が派手なものや爽快感を求めて剣士などを目指しそちらにばかりみな目が言っていたんだよなと思う。

 やっぱり魔法使いは地味かと思いながらもこの魔法を使うこの瞬間派手以外の何物でもないなという気が俺にはする。

 ただ、呪文唱え始めている時に攻撃されると終わりだが。

 

 なのでこうやって呪文を唱え、まずこの初めの魔方陣さえ出来てしまえば、これ自体が防御になり攻撃によるダメージを抑えられる。

 そしてこの基本的な円陣が完成されれば、そこから派生の小さな円陣が生み出される。

 今回の魔法は特に大規模な物なのでこういった細かく繊細なものが幾つも必要になる。


 やがてこの小さな円陣から三本の線が出ると同時に、その先に生まれた更に小さな円陣が上に向かつて何段も、等間隔に下と重なるように伸びていく。

 その一番小さな円陣の内側で、金色の球が生じ始める。

 それは円陣が重なった段の分だけ生まれ、一つ一つが雷の攻撃力を持っている。

 

 そしてこれは、俺の見ている範囲での敵全てに狙いを定めるように飛んでいき攻撃を仕掛けるのだ。

 そこでミルルの作り上げた氷の壁が割れて、やはり空を飛べたあのてんとう虫のような怪物が襲ってくる。

 サーシャが俺の箱からかを出して、楽しそうに、


「よーし、くらえぇえええ」


 頼んでおいた、“幻影の狭霧”と呼ばれるアイテムが飛んで行く。

 星形をした容器に、緑色の液体を封じ込めたそのアイテムは地面に落ちると同時に割れて、灰色の煙としてそこら中に充満する。

 けれど俺には、何処に敵がいるのかが見えていた。


 ステータスの表示はこの霧の中でもはっきりと見えていて、つまり俺はその敵が何処にいるのかを全て認識している。

 後は、全ての準備が整ったこの魔法を使うだけ。

 俺はその敵に向かって指を指し、最後の呪文を叫ぶ。


「――“天神の雷雨”――」


 魔法陣から雷の球が飛び出し、轟音とともにギャッというような魔物が倒される断末魔の悲鳴が聞こえる。

 同時に俺の視界に映るステータス画面から、体力が一気に消失していく様相が見て取れる。

 そしてそれらが消え、その視界をこの煙幕が晴れる頃には、その魔物の姿は全て消えていて、後には透き通った虫の羽のようなアイテムが残っていたのだった。






 こうして全てを全滅させた俺は、久しぶり爽快感を味わっていた。

 そこでミルルが、


「やはりタイキの力はすごいですね」

「女神様お墨付きだからな。“発光銀花”もほとんど影響がないし、好きなだけ回収だ」

「はい!」


 ミルルが嬉しそうに摘み取りに行くのを見送りながら、俺は先ほど倒したてんとう虫の虫の羽を拾っていく。

 こんなアイテムは見たことがないなと思いながら集めていくと、そこで鈴が近づいてきて、


「煙幕で、ステータスだけ見て攻撃。こんな方法もあるんだね」

「? ああ、鈴にも見えるんだったか」

「もちろん。でもこのステータスが見える能力、他にも応用できそうだから、今回のタイキの攻撃方法は参考にさせていただくわ」

「そうしてくれ。後これから戻って依頼の家に向かうんだが、鈴はどうする?」

「暇だからついていく。タイキは何かに巻き込まれる体質っぽいから、ついていくと面白そうなことがありそうだし」

「フラグみたいに言うなよ。幼馴染なんだから、もう少しこう……」

「あはは。疲れているね」


 そう鈴は俺に言って虫の羽を拾う手伝いをしてくれる。

 そしてこの後、俺達はこの遺跡から戻り、一度自宅に立ち寄って花の一部を置き、依頼の家へと向かったのだった。


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