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素晴らしいです、タイキ様

 途中眠りの煙の吐くモンスター蛇の魔物などに接触するが、全く効果がないので眠らされる事なく倒していく。

 俺の杖で、物理的な意味で。

 それほど沢山ではなく、というか一匹や二匹だったので杖で叩いて倒して行ったのだ。

 

 その方がアイテムが壊れずに済む。

 アイテムは魔法的な攻撃には強いようだが、物理攻撃には弱いらしい。

 面白い性質だと思いながら倒していくとそこで、俺の腰に着いた箱からひょっこりサーシャが現れて、


「あのー、私の出番がないのですが」

「なんだ、サーシャ、戦いたいのか? というか、さっきから俺ばっかりで、ミルルやシルフ、鈴も手助けがいらないくらいだし」

「うう、他に何かする事はありますか」


 そう言われても、このサーシャにはアイテムを持たせてはいるが、現状で俺がこの物理的な意味で魔法の杖で倒しているので、無駄にアイテムを使う事になる。

 それは非常にもったいない。

 アイテムを作るにも労力と材料費がかかっている。


 かといってやる事がないと機嫌が悪そうなサーシャも含めて、シルフも暇そうにあくびをしている。

 なんだこのパーティ。

 俺、頑張っているなと思って、そこではっと邪な閃きが俺の脳裏に閃光のように湧いた。


「よし、分かった。サーシャ、お前に仕事を与えよう!」

「本当ですか!」

「俺が敵に勝利するたびに、『素晴らしいです、タイキ様!』というのだ!」


 言った途端、サーシャが沈黙する。

 ふと俺は周りを見ると、ミルルとシルフも含めて、無表情になっていた。

 あ、あれ、これってやり過ぎなのかな?

 女の子の逆鱗に触れたのかなと俺が焦りを覚えていると、そこでサーシャが生暖かい微笑みを浮かべて、


「素晴らしいです、タイキ様(笑)」


 それを聞いてミルルとシルフと鈴も生暖かいほほ笑みを浮かべて、


「素晴らしいです、タイキ様(笑)」

「素晴らしいです、タイキ(笑)」

「素晴らしいです、おにいちゃん(笑)」

「や、やめてくれ、そんな生暖かく、可哀想な子を見るように見つめながら褒め称えないでくれ。つ、つい出来心だったんだ。だからやめてぇええ」


 そんな必死の俺の俺の願いを彼女達は聞いてくれるはずもなく、


「素晴らしいです、タイキ様(笑)」

「素晴らしいです、タイキ様(笑)」

「素晴らしいです、タイキ(笑)」

「素晴らしいです、おにいちゃん(笑)」


 それからも敵を倒す度に、四人に言われました。

 ここで、そうだ俺は素晴らしい、キリッ! という程度に割り切れたらもっとモテモテなんだろうなという気がしないでもなかったが、それから三匹ほど倒した所でようやく止めてもらえた。

 あまりにも酷い仕打ちに、俺が精神的なダメージを受けていると、


「うーん、タイキって女の子に持ち上げられるのって好きじゃないの?」


 鈴が面白そうに笑うのを見て、俺は半眼になりながら、


「好きだけれど、どう考えても今のは痛い子を見るような眼差しだっただろう! ほら、もっとこう……」

「もっとこう?」

「……やっぱり達成感があった時に言われないと、満足できない」

「ふーん。そっか。そうなんだ……そうらしいよ、ミルルはどう思う?」


 そこで鈴がミルルに話を振ると、ミルルがこの時は本当に優しい笑顔になって、


「タイキのそういった真面目な所は好きです」

「わーお、好きって言っゃうんだ、情熱的ぃ」

「! 鈴こそどうなんですか!」

「え? 好きだけど?」

「……シルフはどうですか?」


 微妙に黙ってシルフも、


「……まあ実力でのし上がろうとしている感じは、評価してやる」


 そしてサーシャに鈴が問いかける。


「なるほど~、サーシャは?」

「やることがないので、これからも言い続けようかと」


 沈黙した俺は、箱からすっとサーシャの魔石を取り出して、壁のちょっと凹んだ所に置く。

 そして生暖かい微笑みを浮かべながら、


「頑張って新しい主人を探してくれ。俺にはもう無理だ」

「いやぁあああっ、薄情ですぅ、まってくださぁああい。もう、もういいませんからぁああ」


 空気を読まないサーシャは、泣きながら自分で本体の魔石を、俺の箱に押し込みました。まる。







 そして更に奥深くに入り込んでいく俺達。

 眠りの攻撃は、俺達には全く効かないのでさくさく敵を倒していく。

 随分潜った気がするが、の最深部に近い場所にはまだ辿りつけていないらしい。

 途中別の冒険者にもあって彼らが“発光銀花”を持っていたので、後どれくらいか聞くと、


「そうだな、そろそろ3/4は来たんじゃないか?」


 と聞いた。

 ついでに眠りを誘う歌声が聞こえるから、聞こえたらそちらに行かないほうがいいと忠告までしてくれた。

 そんな彼らにお礼を言って更に深く潜って行くとそこでミルルが、


「さっきのお花、綺麗でしたね」

「“発光銀花”か? 夜はランプにもなる花で、そういえばこの地域独特のものだったな。確か、依頼の本数は五本だったから、錬金術や魔法の材料にもなるし、少し多めにとって帰ろうか」


 と、そこで鈴が、


「でもあの花、白百合みたいな形で綺麗だけれど、群生しているわけじゃないからね。地下、それも岩盤の中も平気で根を張って、球根のようなものを生じさせて増えるから、ヘタすると天井に咲いていたりするのよね」

「天井なら問題ないだろう。飛べばいいし」

「それはそうなんだけれど、生えている場所がばらばらだから五本も手に入れるだけでも大変なんじゃないかなと思っただけ。群生地のような場所もあればいいんだけれど、あったかな?」


 そういえば俺が手に入れた場所も、一本しか生えていなかった気がする。

 それを考えると、


「依頼の本数が手に入って、時間が余ったらで構わないか? ミルル」

「はい、今日は依頼でここに来ているわけですし、またいつでも来れますから。ここは町に近いですし」


 ミルルがそう微笑んだ。

 何だか期待させてしまって悪いことをしたなと俺が思っていると、そこで、歌声が聞こえたのだった。

 歌声の聞こえる方は行かないほうがいいと先ほどの冒険者に言われていたので、止めようとした俺だが、


「? この声、知り合いの声に似ています」


 ミルルが訝しげな表情で言う。

 それに俺は驚いて、


「ええ! こんな奥深くで何をやっているんだ?」

「さあ、でも少し覗いていっても構わないでしょうか」


 ミルルに言われて、俺は頷いたのだった。

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