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ステータスの可視化システム

 食後には先ほどリズさんからもらったマドレーヌを取り出す。

 先ほどギルドに行った時にもらったのだとミルル達に話しながら、俺はその紙袋を開ける。

 貝殻をした黄色いケーキが4つほど。

 一つ余る。

 とりあえず4つを机の上に並べるとシルフが、


「タイキ、勝負です!」


 俺を指さし、シルフが宣言した。

 だがそんなことを言われても俺の場合、


「何を勝負するのか聞いていないのに、勝負なんて出来るわけがないだろう」


 嘆息する俺に、ぐぬぬとシルフが呻いてから、


「お菓子が一つ余るのです」

「……ああなるほど、シルフは2つ食べたいのか? いいぞ?」


 子供はお菓子が好きだしな、いや、俺も好きだけれど思いながら言うと、シルフが頬をふくらませて、


「……別に、そういうわけでは」

「じゃあ俺が2つ食べるな」


 シルフが黙って俺を見上げる。

 そんなシルフに俺がにっこりと微笑むと、シルフはぷうっと頬をふくらませて、


「こ、この……タイキ、勝負です!」

「望む所だ! それで勝負のルールは!」

「じゃんけんです! 握りこぶしがグー、チョキが指二本をたてたもの、パーは指を開いたものです。同時に出して、グーよりもパーが強くて、パーよりもチョキが強くて、チョキよりもグーが強いのです!同じものがでたらもう一回! いざ、尋常に勝負!」

「よし、せーの!」


 俺はグーを出して、シルフはチョキを出した。

 負けたことに気づいたシルフは涙目になっていたが、俺はとりあえず2つその焼き菓子をとって、その内の一つを半分に割り、


「ほら、半分やるよ」

「……情けは無用なのです」

「素直にならないから取り分が少なくなったんだぞ?」

「……頂きます」


 そう言って俺の手から半分を受け取り口にする。

 俺もその半分を口にするが、程よい甘さのフワフワしたバターの香りがとてもするケーキだった。

 美味しいなと思っている内にすぐに無くなってしまう。

 今度レシピでも教えてもらおうかなと俺は思いつつ、そのリズさんで思い出した。


「あの大家さんがこの地域のエリス家の人かもしれない。ほら、依頼を受けた住所が北の外れで、確か、あの大家さんもその辺りに住んでいて名前が同じだから……そうだ、ここを借りた時の書類はと」


 俺は自分の部屋に向かい書類を探してきてミルル達の前に持ってくる。

 そして記載されている住所を比較するが、


「微妙にずれている、か?」

「そうみたいですね、でも多分家が隣同士とかとても近いように思います」


 ミルルが言うように、場所がずれている。

 近いには近いが……これでは、本人かどうかわからない。

 これで同じ名前のリズさんが隣同士で住んでいましたというオチだったら悲しい。


「やっぱり直接依頼をこなして届けたほうがいいかもしれない。仕方がないか」


 脱力する俺にミルルはまあまあよ俺を宥めて、


「そういえば、レベルを下げてもらって機械を壊さないようにするのでしたっけ」

「そうだった。女神様に頼まないと……というか、女神様をこんな時間に呼び出して大丈夫なのかな?」


 外は暗くなって来ているが、女神様に睡眠があるのかわからないが俺はスマホに電源を入れると、女神様が現れて、


「あら、どうしたの、タイキ」

「明日レベルを登録するので、一時的にレベルを下げて欲しいのです」

「そうなの? 私が折角こんな最強な感じにしてあげたのに……仕方がないわね。明日の昼頃には切れちゃうから、寝坊しないようにね?」

「ありがとうございま……」


 そこまでしか俺は言えなかった。

 なぜならスマホから出てきた女神様が、俺の額にキスしたからだ。

 どうしよう、俺、ここ数日の間に何人もの女の子にキスしたりされている。


 そんな甘いイベントはあるのに、なんかこう、もっとこう甘い展開になってもいいのではないだろうか。

 疑問が俺の中に浮かぶが、現実なんてこんなものであると思う。

 そこで女神様が俺から唇を放して微笑み、


「レベル825にしておいたから。そうそう言い忘れていたけれど……もう一つ加護があるのよね」

「加護、ですか?」

「そうそう、ステータスの可視化システム」


 女神様が口にした言葉に、ゲーム画面上にレベルや体力、魔力が表示される戦闘画面が俺の頭に浮かんだ。

 ついでに攻撃を選ぶ選択画面も。

 今までは異世界だからしかたがないと思っていたが、感覚的に魔力が少し減ったりとか、使いたい魔法を頭に浮かべると、同時に呪文などが浮かんできて勝手に口から言葉が出て攻撃を仕掛けていた。

 だからそういう加護みたいなものも全部俺の中にはいっているのだろうと思っていたのだが、それを聞きながら、


「それは敵も表示されるのですか?」

「されるわよ? 貴方を中心に半径百メートル以内の敵は全部レベルと体力と魔力、眠りや麻痺といった異常状態が表示されるわ。そして貴方の味方の場合は半径十メートル以内なら、レベル、体力、魔力、異常状態が表示されるわ。他の人には見えないけれど」

「すごい力じゃ無いですか! ぜひそのステータス可視化を!」

「じゃあスマホで非表示設定を表示に直してね」


 そう言って女神様は、俺のスマホの画面にトントンと指を移動させ、ハートマークのアイコンを表示されている部分を指さして、


「ここで設定。ただ、この加護には条件があるの」

「条件?」

「表示設定にすると、魔物などの肉や鉱物等になる存在以外、体力が瀕死にまでしか削れないの」

「それは、殺せなくなるということですか?」

「ええ、同時に相手もタイキ達を瀕死にまでしか持って行くことは出来ませんが」

「それって、俺にとっては凄く都合がいいです」


 その答えに女神様は更に楽しそうに笑ってから、その表示設定画面を出して、


「そうそう、魔法を使う時に貴方の世界の選択画面表示もあるけれどどうする? この選択画面があれば、薬も作りやすいわよ?」

「! さっそく設定します!」

 

 丁度薬をつくろうと思っていた所なので、良かったと俺は思って……そこで気づいた。

 これ全部女神様は分かって今説明してくれたんじゃないかと。

 けれどそれでも俺にはあったほうが良かった加護なので、


「教えて頂いてありがとうございます」

「いえいえ、私は初めに設定したのに教えるのを忘れちゃったから。でもまあ、明日は色々忙しいからがんばってね」


 女神様の激励だが、その言葉は何かのフラグなような気がして俺にはならなかったのだった。


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