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何かヒントください!

 一度家に戻ろうという話になって、俺とミルルは家に戻ってきた。

 そこではまたもやシルフとサーシャがゲームをしていた。

 今度は双六のようなものにカードがついたゲームのようだが、


「よし、ここで“暗黒に包まれし噴煙の爆弾”です! 目の前が暗闇に包まれて二回お休みです!」

「ふ、ではここで事前に用意していた、“女神の涙”を使い、異常全て回復です! 続いて副次的な効果で、“女神の裁き”が発動し天秤大量投げにより三マス後退!」

「ひ、酷い、サーシャ。私よりもお姉ちゃんなのに大人げないです!」

「くく、勝負の世界は非情なのです……と言いたい所ですが、シルフ、先ほど私が負けた時のあの言葉、私は覚えているのですよ」

「……はて、何のことでしょうか」


 さっとシルフが視線をそらすので、サーシャは彼女の前にフワフワと移動しながら、


「『私よりも年上だというのに、負けてしまいましたね、ふはははは』と勝ち誇ったように言われて、涙したら“幽霊のしずく”が幾つも出来ちゃったじゃないですか! この分まじで魔力消費しちゃって更に泣きそうですよ」

「魔力はタイキから幾らでもパクればいいでしょ。“餌”みたいなものだし」

「それはそうなんですが、やっぱりこう、もったいないというかなんというか」

「でもこのアイテム、もしかして錬金術士や魔法使いにとって使える材料かも」

「! 幽霊なんて、有名な幽霊屋敷ゴーストハウスくらいにしかいませんものね! よし、これをタイキに渡して魔力をおねだりしちゃいましょう。タイキの魔力って何だか甘くてもっと欲しくて抱きつきたい気持ちになりますし」


 その一部始終を聞いていた俺とミルルだが、俺の隣でミルルが暗い顔でブツブツ何かを言っているのがとても気がかりだったが、それを問いかけるほどの勇気が俺にはなかった。

 なので見なかったことにして、


「二人共、留守番中に特に何かあったか?」

「何もなかったよ」

「あ、鈴がタイキ達が食べた引っ越しうどんの丼ぶりを回収していったよ!」


 その程度の事しかなかったらしい。

 いや、俺も含めて特に何かをしたというわけではないのだが、何かあったら嫌だなと思ったのだ。

 だが杞憂であったらしい。そこでサーシャが俺達のところに飛んできて、


「それで何かわかりましたか?」

「ここ暫く有名な窃盗団が貴族の館を襲っているらしい。しかも国の軍ともやりあったとか」

「じゃあ、八百長でもしているんですかね?」

「……」

「……」

「……どうしてそう思ったんだ?」

「いえ、軍が出ているっていうので、よっぽど凄い道具を持っているとか特別な要因がない限り、軍なんか相手に出来ないと思うんですよね。戦闘訓練とか受けた人にゴロツキが何かを出来るなんて思えないんですよね」

「サーシャが以意外にもまともな事を言っている」


 俺は今まで脳天気だと思っていたサーシャを見なおした。

 ただ今の話を聞いていると、記憶があるからそういった答えが導き出されているようにも感じる。

 なので、


「その軍の部隊編成と装備については分かるか?」

「わかりますよ~、えっと……えっと、え~、あれ?」

「……分からないのか?」

「……はい、何だか知識がごっそり抜けて、頭が軽くなって悪くなった気がします」

「なるほど、確かミルルが見たサーシャ姫はもっと理知的だったらしいからな、幽霊になってネジが一本どこかに飛んで行くようなことはあるかもしれない」

「! タイキ、酷いです。まるで私がアホの子みたいじゃないですか! ぷんぷん」


 どうしよう、この人自覚がないと俺は思いながらも、俺は思う。

 きっと言っても多分このサーシャは理解をしないと。そういえば、


「昔、幽霊の時の記憶って元に戻るとなくなるとか怪談話で読んだような……」

「本当ですか! うわー、私、タイキ達のことを忘れてしまうんですか?」

「さあ。俺は幽霊信じていないが、存在したらまっさきに成仏させてやろうと思うくらい防御力の高い人種だから」

「……もしや、タイキは幽霊が怖いのですか?」

「こ、怖くないし!」

「何か過去にトラウマになるような出来事があったのでしょうか。全く、幽霊ってすっごく体がフワフワして、ほら、こうやってすごい速度で移動すると四人に分裂して見えるのです!」


 そう言って左右に動きサーシャが四人に見えるように残像を出して見せる。

 幽霊ってこういうものだったかなと思いながら俺は、話が物凄く脱線しているのに気づいた。


「それで、その盗賊団は幾つもの貴族を襲っていて、量が多くて絞り込めなかった。ただ、この窃盗団の動きから今度はこの街の貴族を襲うだろうと推測が立ったが……」

「立ったが?」

「依然として、サーシャの身体が何処にあるかといった手がかりや、何処から連れて来られたのかすらもわからない状態だ」

「うう、仕方がありません、気長に待ちます。ここまで調べてくれて、私、嬉しいですし……」

「いや、このまま見捨てるのも寝覚めが悪いからな」

「いえいえ、タイキは優しいので、なのでこうします」


 サーシャがそう言って俺に近づいてきて、頬に唇を当てる。

 幽霊なので冷たいとも温かいとも言えないものだったが、何となく柔らかかったような気がする。

 けれどそれだけで俺は頭が沸騰しそうで、


「な、何を」

「お礼ですぅ。どうです? お姫様のキス」

「……お姫様のキスは救いだしてくれた王子様にするものでは?」

「ではタイキが私の王子様になってくれますか? なーんてね。これからもよろしく」

「は、はぁ」


 ニコッと笑ったサーシャに、一瞬目を奪われる。

 意外にサーシャも美人だよなとか、何でこんな美人な女の子が集まっているのにハーレム展開にならないんだろうなとか、やっぱりこう、すぐに女の子が『抱いて!』という美味しい展開になる能力がいいのだろうかと思った。

 そもそもそれを願ったら俺、元の世界の戻されたりするのでは? ほら、女の人ってそういう展開が苦手みたいだしと俺は気づいた。

 けれどここで戻ってサーシャを放置するのも俺の性分では無理だから、


「サーシャを元に戻してからだな。最低限」

「何がですか?」


 サーシャが聞いてきたので俺は一瞬ビクッとしながらも、


「いや、ほら、ミルルがいないなって」

「ミルルは私がタイキにキスしたのを見てふらふらと自室に戻って行きましたが」


 そういえば何故か先程からミルルの部屋で何かを叩いているような音がするよーな……怖いので考えないようにしておこう。

 とはいえまたもや壁にぶつかってしまったので、ここはまた女神様に神頼みだ。


「助けて、女神様!」

「……タイキの浮気者! 私というものがありながら、こんな風に女の子とイチャイチャして、酷いわ」

「え、えっと……」

「いいわ、こうやって私は利用されてしまうのね。でもいいの、タイキ、貴方を愛しているから!」


 俺はこの女神様の反応に困り、棒立ちになっていた。

 そんな俺に女神様は、


「もう、タイキって乗りが悪いわねぇ。それで、今度は何を聞きたいのかしら」


 女神様がくすくす笑っているが、今回は抱きつかれなくて俺は安堵していた。

 そして聞きたいことはといえば、多分女神様は全部分かっているだろうから、つまり、


「何かヒントください!」

「わかったわ!」


 答える女神様だが、この時俺達はまさかあんな話を聞かされるとは思わなかったのだった。


アルファポリスに登録したため、感想を閉じさせていただきます。申し訳ありません。

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