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ファンタジーな怪物のイラスト付きの本

 その貴族が襲われているらしい描写を多数見ながら、俺が思った事とは、


「貴族って、護衛を雇ったりしないのか?」

「います。私の家にもおりましたから。ただ、この盗賊団……こちらは窃盗団になっていますね、の場合が別なようですが」


 そう言われて、その文字を読むと“四絽死駆団よろしくだん”という、当て字にしては妙な名前の窃盗団だ。

 当て字なのに読めてしまうのは、異世界なのでそれっぽく翻訳できる機能を女神様が加護としてくれるからなのかと思った。

 何か本当に好待遇な異世界トリップ過ぎて、俺は不安を覚える。


 けれど大事なものが守れる程度の力というと、これ位になるのだろうかとも思う。

 やはり異世界は過酷なのか。

 思考が横道にそれてしまったので、再びその新聞に目を落とし、


「有名なのか?」

「ええ、貴族達を狙う、冒険者崩れの彼らは、独自の販売ルートで窃盗した物を売りさばいく凄腕の者達です」

「冒険者崩れ? そんなに凄腕ならば遺跡に入って幾らでも稼げるんじゃ……」

「遺跡で魔物と戦って何かを得るよりも、弱い人間を倒して宝を奪った方が安全で稼げると思ったらしくて。一時期それを真似た盗賊団が幾つも出たのですが、軍が出るほどの騒動になりまして……結果、特に強い力を持つその窃盗団が残ったようです」

「軍にって……訓練された戦闘集団から逃げきれたと?」

「そうなりますね。それとも……いえ、何でもありません」


 そこでミルルは話を切る。

 けれど、貴族が襲撃されたと思ったら軍も相手に出来るほどの凄腕集団だったとは。


「出来るだけ関わり相手くないな」

「そうですね、接触は避けたい所ですが……そうなるとあのメ……サーシャ姫の体は何処に言ってしまったのでしょうか」

「宝物庫にはなかったと言っていて、けれどサーシャが消えて無くならないように魔石を周りにおいていた事を考えると、体もサーシャの事もその貴族が知っていそうなんだよな」

「ではその貴族達についてまず調べた方がよさそうですね。その三名は私自身面識があるので、私が尋ねればお会いできるかと」

「助かる。でもその前にもう少しその貴族や、貴族の住んでいる場所程度は調べておくか。後は……そうだな。その盗賊団に襲われた貴族全員を調べて、地図で場所と日付を確認すればそこそこは動きも分かるだろう。それに日付の関係から、サーシャがいたらしい宝物庫を持つ他の貴族が襲われているか確認して、それも訪ねる候補に入れて、何処か絞り込んでも良いし」

「そしてサーシャ姫とも特に接点のある人物も分かれば、更に絞り込みに使えるでしょうね」

「その辺の情報はどうやって手に入れられる?」


 ミルルはうーんと少し考えて、実家に電話で聞きますわ、と答える。

 そして俺はと言えば、


「この世界の地図を買ってきた方が良いか。本を売る店は何処にあるかミルルは知っているか?」

「安い物が売っている場所は、ちょっと入り組んだ路地の先にある本屋でしたが……」

「じゃあ、私が案内するよ。丁度この種類の新聞の窃盗団の分だけ調べ終わったし」


 鈴が俺に向かって言う。

 ミルルがちょっと不機嫌そうに見えるが、鈴は楽しそうに、


「その本屋に案内したらそろそろ私も店に戻らないと」

「そうなのか? 手伝ってくれてありがとう」

「いいって。……幼馴染だからって負けるつもりもないしね」

「? 何がだ?」

「何でしょう? タイキ、明日は私も一緒に冒険するから忘れないでね」

「あー、そういえばそうだった。色々ありすぎて、忘れかけた」

「もう、タイキは……あ、でも測定も明日だっけ?」

「明日測定してそのついでに良さそうな日帰り出来そうな依頼を探す予定だったんだ」

「何だか忙しいね。それじゃあ、本屋に行こう」


 そう鈴に促されて俺は、ミルルに探し物をしてもらって地図を買いに行く事になったのだった。






 本屋は図書館の近くにもあるらしい。

 一応図書館の一角には小さな、文具といった雑貨を売る店と、軽食をとれる食堂が併設されている。

 だが、やはりそこで地図を買うと高いらしい。

 それに本屋の方が地図の種類も豊富なのだそうだ。


「見ていると面白いよ。ファンタジーな怪物のイラスト付きの本とか、一杯あるの」

「本屋があるって事は、印刷技術はあるんだな」

「みたいだね。この世界、とても発展している部分と、発展していない部分、ファンタジーまで混ざって混沌としているよね」

「蒸気機関の玩具があっても、動力として使えるレベルに大きくするには別の問題があって、それが解決できるか、出来ないかといった面があるからな。きっとこの世界にも発展しない他の要因があるんだろう」

「なるほど。でもまあ、そういった違いも楽しいから別に気にならないかな。“うどん”を広めるという使命が私にはありますから」


 相変わらずのうどん脳に俺は苦笑してしまう。

 幼い頃からうどんが大好きで、時折俺も人気のうどんのお店に連れて行かれたり、お手製のうどんを頂いたりしたものだ。

 この食べ物にかける情熱のすさまじさに、時折俺は付いていけないと思う事がしばしばあったが。


 そして案内された本屋は入り組んだ路地の先にある店で、確かに慣れない自分が自力でたどり着けるかどうか怪しい店った。

 ゲームをやっていた時にはこの町にも出入りしていたがそこまで詳しいわけではないというか、あまり滞在しなかった事が今では悔やまれる。

 地図を買うならば、ついでにこの町の地図も購入しておこうと俺は決める。


 必要な材料の購入も含めて日常生活で、店が何処にあるのかが知りたい。

 あとは観光ガイドのようなものも購入しておこうと決める。

 きっと危険な場所など、そういった物も記載されているだろうから。


 そして入った本屋で俺は、等高線も入った普通の全国地図と、この地域の地図、観光ガイドを購入する。

 これだけあれば今後の生活にも役に立つだろうと思いながらそれらを購入する。

 鈴がやけにファンシーなモンスターのイラストの書かれた地図というか本を薦めてきた、俺の矜持が許せなかったのでお断りした。

 

「あの可愛い地図も良かったと思うけれど」

「……ターゲット層が女の子みたいで俺には敷居が高すぎる」

「そう? 危険な特に多い要注意モンスター遺跡や地域ごとにイラスト付きで図解されている、良い本だったけれど」

「そうだったのか! ……買ってくるか」


 自分のプライドよりも分かりやすい地図の方がずっといい。

 この世界はゲームの世界とどこが違っているのか分からないし、あのゲームの世界全部を俺自身が制覇したわけではないのだから。

 そしてそれを購入した俺は、筆記用具も必要だと気付いて一本鉛筆を買い、鈴と別れてミルルのいる図書館へと向かったのだった。


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