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レベルを下げてもらえばいいじゃない

 そうして俺達は図書館に向かおうという事になったのだが。


「シルフにサーシャを任せてきたが、大丈夫なのか?」

「ええ、精神年齢が近いようで、ゲームをして時間を潰すと言っていましたから」


 そう答えるミルルに、何だか怖さを感じた。

 そこでミルルが俺の腕に抱きついてくる。

 そして機嫌が良さそうに笑っていて……いつにも増して甘えてくる所も含めて、可愛いなと思ってしまう。


 これって期待をしていいのだろうか、と俺は思って慌てて頭からその考えを振り払う。

 そこで今度はもう片方の腕に鈴が抱きついてきて、小声で俺の耳に、


「ミルルどうしちゃったの? 何だかいつもよりも攻撃的というか……」

「満月が近くて、淫魔の発情期が近いそうだ」

「ええ! タイキ襲われちゃうの?」

「襲われるか! それにミルルだって部屋に鍵かけておいて欲しいって俺にお願いしているし、見込みはないって」

「……ほう、なるほどなるほど、ふーん」


 鈴が意味深に笑う。

 それに俺はむっとしたので、


「いい加減離れてくれ。歩きにくい」

「いいじゃん、両手に花なんだから。こんな経験あんまり出来ないぞ?」


 言われてみればそんな気がする。

 確かに鈴といい見るるといい可愛い女の子で二人が俺の両腕に抱きついているのだが、でもこの光景は何かおかしい気がする。

 そもそも、周りの人間にはどのように見えているのだろうか、と俺は考えそうになるが、考えた所で、二人が離れてくれるわけではないので俺は諦める。

 やがて、目的地である図書館に俺達は辿り着いたのだった。






「それでは初回のため、図書カードを作ります。身分証明書をお出し下さい」

「ギルドカードでよろしいでしょうか」


 以前ギルドで貰ったカードを取り出す俺。

 つるつるとした表面のプラスチックのようなもので、表面には薄く削った赤い石が埋め込まれている。

 適当に持っていたのだが、身分証明書という大事なものだったんだと思い、これからはもっと大事に扱っておこうと決める。と、


「はい。……魔力波長登録が行われていませんね。レベルも記載されていないようですし……」

「えっと、魔力測定は明日とギルドで言われています」

「分かりました、番号とお名前の登録情報で、ギルドに問い合わせを行います」


 そう言って傍に言った白い箱のようなもの……電話で、問い合わせをする受付嬢。

 そういえばギルドでも登録情報の検索といった、ある種の電子的なものを含めた通信技術のようなものもそこそこ発達しているようだ。

 魔法的な何かかもしれないが、似たような文明の発達が見られる。


 意識や感性、考えが似ているので似たような技術が発達したのだろうかなどと考えていて、そこで今受付嬢が言っていた言葉に聞きなれない物を感じたので、ミルルに俺は聞く。


「ミルル、魔力波長登録ってなんだ?」

「ああ、それは個々人の持っている魔力波長には独特の部分がありまして、それをレベル測定と共にこのギルド登録カードに登録され、犯罪歴なども含めて管理されるのです」

「そんなシステムなのか」

「ええ、まともに冒険者として活動できない方々も中にはおりますから。特に私達は武器や魔法を使うある意味危険な存在でもありますから」

「言われてみればそうだな……でも俺、登録できるんだろうか」


 ぽつりと呟いてみた。

 だってレベルが高すぎて、確か以前機械がおかしいらしくて、999でしたと言われた。

 多分あの機械は、999どころかもっと下のレベルしか測定するのを想定していない機械なのだろうと思う。

 そして俺はと言えば、女神様には実際にレベル1000で放り込まれてしまっていて。


「どうしよう、怪しい人物になってしまうんじゃ……」

「あれ? タイキ、波長登録出来なかったの?」

「ああ、そうなんだレベルの関係で」

 

 そういえば鈴はどうしたんだとそこで気付く。

 鈴も多分ギルドに登録しているのだろうけれどと思っていると、


「女神様に一時的にレベルを下げてもらえばいいじゃない」

「その手があったか! ……それで幾つくらいだ?」

「あのギルドの人に聞いたけれど、ここにあるものでは高性能な物でも、正しく測れるのはレベル825までだって。魔力が高いと魔力は超同士のノイズが増えたりとかなんか難しい事を言っていたけれど――その測定できるレベル826以上は、数字はあてにならないけれど高いのは分かるような感じ何だって。都市に行くともっと測れる機械があるらしいけれど面倒だから、一時的に女神様に直してもらう方がタイキには良いかもね」


 鈴に説明されて、俺は良い情報を聞いたと思い、後で女神様に頼んで一時的にレベルを下げてもらおうと考える。

 そこで俺は図書館の受付の女性に呼ばれて、確認が取れた話と、この図書館では本の貸し出しが禁止な旨、複写は一冊の半分までしか許可していないなどの説明を受けたのだった。






 そして俺達は図書館内でそれぞれ新聞記事を探す事になる。

 その新聞記事はすでに書庫に収められていて、地下に降りて行き、その新聞が収められている場所に向かってから、


「全国紙はこの辺の三つです。ただ地方の新聞でも地元であれば、記載があるかもしれません」


 ミルルに言われて、俺は地方紙も調べる事にする。

 内容はここ一年。

 そして鈴とミルル、俺と手分けをして新聞を探し始める。

 そして俺はある地方の新聞の小さなコマに、目的の記事を見つける。


「チルド伯爵の別荘に、盗賊団が押し入る、か」

「あ、こっちにもあります、リゼルダ侯爵の家に盗賊団が押し入る」

「こちらにも、レゼ子爵の別荘に盗賊団が押し入る、という記事が」


 そこで俺達三人は黙る。

 どれだ、と。

 そして貴族の屋敷が、ここ一年の間に盗賊団に妙に襲われているらしいという事実にその時気付かされたのだった。

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