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そうだよな夢だよな

 その日の朝は非常に寝覚めが良かった。

 おそらくはダブルベッドに一人で寝ていたからだろう。

 だって朝起きると、俺の両隣にいたはずのミルルとシルフはいなかったから。


「夢、だったのだろうか。……そうだよな夢だよな」


 俺の隣に女の子が二人眠っているなんて俺には都合の良すぎる。

 だが夢ならば納得がいく。

 あんなご都合主義だがいい夢を見せてもらいましたと思った所で、部屋の扉が開かれた。


「タイキ、起きたんですか? おはようございます」

「お、おはよう」


 あらたまって言われてしまうと何だか気恥ずかしい気持ちになってしまう俺だが、そこでシルフが、


「一応おはようございますと挨拶だけはしてやる!」


 俺に指を指しながら、言ってきた。

 なのでとりあえずおはようと返してやると、


「タイキは寝坊助ね。鼻を摘んでも起きなかったし」

「……人が寝ている時になんてことしやがるんだ」

「でもその前からウンウン唸っていたし、今更だったと思う。お姉様も、頬をつんつんとやっていたし」

「ええ!」


 俺がミルルを見ると、照れくさそうにミルルが笑った。

 俺は何でその時起きていなかったんだ、俺のバカと思っていたわけだがそこでシルフが、


「本当は顔に落書きしてやろうかと思ったのですが、中々男前だったので止めました」

「……シルフにしては珍しいな」

「……ふん」


 シルフはそっぽを向いてしまった。

 何だかんだで少しずつは気に入られるのかなと俺が思った所で、


「今日はどうしましょうか? タイキは何か……ああ、部屋を借りるのでしたっけ」

「そうだが……そうだ。そういえば二人はここを拠点にした冒険者なのか?」


 宿をとっているとなると拠点を定めていないのかもしれない。

 そしてこの宿を拠点にするのかもしれないので、近くに俺の家を定めたほうがこれからも一緒に冒険するにはいいかもしれないと思う。

 そこでその問いかけにミルルは、


「そういえばこれからそうなりますね。それなら私達もここ周辺に家を借りたほうがいいかも。タイキの家の近くもいいかもしれませんね」

「そ、そうか。……はっ、シルフが反対する気配がする!」

「私だって何でもかんでも反対はしません!」


 そう俺に言って怒ったようにシルフはそっぽを向く。

 けれどまだこの時間では、“ギルド”も開いていないので、


「仕方がないな。開く時間まで、朝食でも食べに行くか。ミルルは良さそうなお店を知っているか?」


 この世界の事情がよくわからないし、女性が喜びそうな場所も俺にはよくわからないのでミルルの手助けが必要だったのだが。

 そこでミルルは少し考えてから、


「では、あそこの喫茶店はいかがでしょう」


 そう俺に言ったのだった。







 いかにも女の子が好きそうなレトロでおしゃれな喫茶店に俺達は来ていた。

 古びたランプや地球儀のような飾りなど、変わった雰囲気のお店だ。

 そこで出された朝食は、目玉焼きにハムにレタスのようなサラダや星形のトマトのような物が1つのさらに盛られ、もう一つの皿にはクロワッサンなどの出来たてのパンとバターらしきものが添えられ、小さな硝子の器にはヨーグルトと紫色の果実を煮詰めたソースとブルーベリーのような果実がかけられている。

 これに紅茶かコーヒーのようなものがセットでついてきて、というお得な朝食セットだった。


 随分と健康的な朝食だなと思いつつ、パンはおかわりがし放題なので美味しいといいなと思いながら口に運ぶ。

 俺はすぐに運ばれてきたパンを食べ上げて、追加のパンを取りに行ったのだがそこで、


「あれ、タイキ、今日はここで朝食?」

「鈴、なんでここに?」

「ここのパンが美味しくて。あ、こんにちは、ミルルさん、シルフちゃん」


 鈴がミルルに手をふっている。

 それにミルルは律儀に返していて、シルフは手を振り回すように手をふっている。

 性格を如実に表すその様子に俺は嘆息しつつも、


「鈴も一緒に食べるか?」

「そうね、それもいいかもね。じゃあ、タイキの隣ね!」


 向かい合う席なので、俺の隣しか空いていないのだが、鈴はやけに嬉しそうだ。

 あいつの思考はよく分からないと俺は思いながら、追加のパンを皿に盛って席に戻ったのだった。







 当り障りのない話をして、そこでの朝食が終わる。

 その頃には丁度ギルドも開いていたので俺達はそちらに向かう。


「できれば錬金術士と魔法使い、その両方の部屋が近くにある場所がいいが……」


 あの2つの職種の中の悪さを思い出すと難しいよなと思う。

 思いながらもあたって砕けろという気持ちから、俺は部屋を探す窓口に向かうが、


「1階が魔法使い、2階が錬金術士、三階が住居の住宅がありますがいかがでしようか」


 あまりにも好条件の家があり驚いたが、そこの大家は元々は息子と娘がそれぞれの職業についていたのだが、今は二人共都市に行っており、なので貸し出すことにしたらしい。

 ただ今はどちらの職業も相手をけなしたり、ヘタをすると器物が壊されるとのことで、その両方の職種の人に借りて欲しかったらしい。

 あまりにも俺にとって都合の良い展開だが、その幸運に俺は感謝しながら、その書類にサインをする。


「ではこれで契約は成立です。紹介などの手数料を追加しまして……」


 現金で支払う俺。

 ゲームをしていた時に丁度お金を大量に貯めていたのが良かった……というよりは、女神様が色々してくださったようだ。

 そして鍵と地図が手渡され、俺達はそこに向かうが……。


「本当に、ここか?」


 俺は目の前の大きな建物を見て、そう呟いたのだった。


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