彼らとの、話
砂漠。
それも砂が広がる不毛の地のイメージそのものの場所だ。
砂漠というと、俺達の世界では岩がごろごろしていたりする場所の方が多いらしいのだが、ここは砂の砂漠である。
どこまでも砂の山が連なっている。
その光景を見ていた俺は、日差しの暑さに辟易する。
そういえば砂漠をわたる時のアイテムがあったなと思い出した。
「確かこの辺に……これだ。“お肌を守る日傘一号”。安くて沢山手に入ったからいいが、これがないと砂漠を渡れない重要アイテムだったんだよな。しかも花がいっぱい描かれた柄ばかりだったし」
「あ、タイキ、私、青一色のタイプ持っているよ」
「本当か! 俺のと交換してくれ!」
こうして俺はその傘を手に入れた。
他の女性陣に持っていた傘を配る。
するとアケルナルが、
「……面白い道具ね。参考にさせてもらうわ。普段は布を顔に巻いていたりしたのだけれどこういったものもいいかもしれないわね」
と言っていたりしつつ、彼女の案内の元進んでいく。
だが歩いているととても暑い。
「アケルナル、あとどれくらいなんだ?」
「1日はかかるかしら」
「……移動用の乗り物は?」
「あったけれど、出入り口の場所に普段は置いてあったはずなのに、なくなっていたのよね」
あっさりとそんな事を言い出したアケルナルに俺は、
「でもアケルナルが戻る時に必要なんだろう?」
「当初は別の出入り口から戻る予定だったから回収されたのかもね。でも現在の状況だとそちらから戻ったら、話も聞かずにってことになりそうね。私、ハダルと仲が悪いから」
「ハダル?」
「図書館であなたたちが戦った相手」
「ああ、あの偽怪盗か」
「……戦闘に関する実力はとても高いのだけれど、急進的。そしてとても頭が固いの。だから私とは相性が悪いの」
「固い?」
「そう。でも散々な目に合わせたからそろそろ危機感をもって自分一人でなんて来なくなるかもね。部下を大量に引き連れて攻撃してくる。……もしそうなら、途中で鉢合わせるかもね」
そこでアナルケルが楽しそうにそんなことを言う。
そこは楽しそうに笑う所じゃないだろうと俺が思っているとさらに彼女は、
「私たちが出入りしたあの扉は大きくするのも自在なの。だから大きい兵器をもってあちらに行くのも可能なの」
「……あれ、そんなに危険なものだったのか。鈴、知っていたか?」
鈴に話すと知らないわねと笑って、そのうち対策を立てないとねと答える。
後で女神様と情報を共有して、何かするのだろう。
こうして俺たちはまたしばらく進み、途中で水や食べ物など(携帯職の類。お湯をかけて3分の物など。他にはアイスクリームもある)を取り出して、砂丘の陰で休憩をしてからさらに進んだ。
けれどそこで、遠くから砂塵が舞い上がっているのが見える。
大人数の移動ではあるらしいのだが、先ほどから迷いなくアケルナルが歩いているのを思い出して俺はとても嫌な予感がした。
「アケルナル、もしかしてこの道は普段使いの道なのか?」
「そうね。でないと私は地図を見ずに歩いて行けるわけがないわね」
後は途中に人が死んでいる遺体があるのかを目印にして、人の通る道だと確認するの? と言う。
いつの時代の三蔵法師だと俺は思ったが、彼女なりの上手く言えない冗談だったのだろうとすぐに気づいた。
彼女は気づいたのだろう、その大群が何かを。と、
「うわ~、この前の偽怪盗さんが先陣を切っていますよ」
「サーシャ、見えるのか?」
「ええ、目には自信があるのです」
「頭には自信がないけれどね~」
サーシャの自信満々な答えに杖の精霊ミィが付け加えた。
サーシャが涙目になっていたのは置いておくとして、
「このままいくと俺達、遭遇するんじゃないのか?」
「遭遇したらそのまま全員倒してしまえばいいよ。逆らうものは蹂躙すべし」
「それってどうなんだ? というかここでもその気絶レベルで済ます制限はどうなっているんだ?」
「効果はありますよ。というか頑張って微調整だね。それでどうする? やり過ごしたとしてもあっちの世界にまるっと、あれがいくことになるけれど」
「……遭遇するにしろしないにしろ、戦わないといけないって事か」
「そうなるね。でもここでめりっがあったりします。つまり彼らの戦力を幾らかそげること、そして、そんな相手に対して強く出られるのかな~」
悪い顔で笑う鈴を見ながら、こんな状況だから仕方がないなとも思う。
こちらの世界の“神”も含めて修正していく必要があるのだから、少し強く出られる要因があるに越したことはないのだろう。
そう俺は割り切って、選択画面を呼び出したのだった。
結果だけを一言で書くと、俺達の圧勝だった。
熱中症対策をしてから彼らを放置して俺達は進む。
やはりハダルと呼ばれた彼が最後まで抵抗していたが、そこで触手の邪神が手を振り、そちらに意識がとられている間に倒した。
そしてアケルナルに案内されてその彼女のボスともいえる人物と話すことに。
カノープスという中年の男性。
彼とは触手の邪神とも知り合いらしく、その関係で話はうまく進んでいく。
サーシャが精霊使いであることやもともとこの世界にいた魔族のその後についての話なども、様子見する、そして方針を軌道修正する理由になったらしい。
また俺の力についてアケルナルから聞いていたらしく、そして先ほどここの者たちを大量に倒したためにこちらは抵抗できないと彼は言っていた。
落ち着いた雰囲気がある、けれど状況を見つめるその目は怖い人間だと思った。
けれどどうにか今後この派閥だけは、こちらと手を結ぶことにしたらしい。
これから、ほかの派閥をどうするのかにもなっている。
すでにほかの派閥は、世界ごと切り離して分裂を企んでいるらしい。
この世界の“神”は自己を切り刻むそれを良しとしていないようだがその隙間をついて、それを行おうとしているらしい。
ちなみにそうなると制御を失うため、完全な消失対象になると鈴は言っていた。
また、カノープス側を一気にタイキ達が殲滅したせいで、その存在がいるのに気づき逆にかれらは進行できない。
それを利用してどうしようか様子見している間に手を打とうという話に。
そもそもこの世界の“神”とも話せる人物と彼も事を荒立てたくはないようだった。
「健全に機能しているようであれば、もう少しこの世界も暮らしやすくなるはず」
「……それは魅力的だ」
鈴がそう告げるとカノープスはそう答える。
昔はこんな風に進行などを言う人物ではなかったのだとアケルナルが後でこっそり教えてくれた。
彼らの事情はまだ全ては分からないが、侵攻を止めて、こちら側の世界の“修正”を一部行う……話はそれからだ、といった形になったのだった。