全ての黒幕は幼馴染
それらの話を聞いていた俺は、人工知能関連の話を思い出しながら、
「それでその“ε(エプシロン)”というエネルギーは、俺達の隣の空間にあるエネルギーらしいが、何で俺達の世界ではそんなものがあるようには思えないが」
「“ε(エプシロン)”後からはこの世界で魔力と呼ばれている。この世界の魔力の塊が意志のようなものを持ったものが精霊と呼ばれている。そしてその精霊と呼ばれているものが私達の世界の“幽霊”である、というのも話したよね?」
「……思い出したくないが聞いた気がする」
「そう、それで時々タイキが幽霊に取り憑かれていたのをこまめに私が払っていたのよね」
「……」
「実は私古い巫女? だか現人神の家系らしくて、そういった力あるらしいのよ。だから見たり、叩いて払ったり……要するに、“幽霊”を操ってどうこうする能力が特に強いらしいの」
「おれ、“幽霊”によくとりつかれていたのか?」
「うん、だからタイキは“幽霊”が怖いんじゃない?」
またもオカルトのような話を聞かされた俺は頭痛がした。
だが頭を抱えていても仕方がないので、今の話を考えていくと、
「……“幽霊”はこの世界をつくり上げる“ε(エプシロン)”の塊で、それをどうにかする力が鈴には強いからこの、人工知能を使った世界創造が可能だった?」
「そういう部分はもちろんあるよ。そしてタイキも私よりも多分、その力を操る才があるみたいなのよね。精霊と相性が良いというのはこの世界に適正があるってことだから、その“ε(エプシロン)”を操る力に長けているとも取れるし」
「……え?」
「タイキが使っていた魔法、多少私が手を加えたとはいえ、ゲーム内と認識して魔法を使っていたのは実のところタイキの才能だったりするんだよね」
「どの程度手を加えていたんだ?」
「そのスマホがあるでしょう? それ自体が人工知能の補助を受けたもので、タイキが知っているものをどうすればこの世界のもので作れるのかを提示してくれたでしょう? 確かにゲームもモチーフにしているけれど、それらの補助によってタイキがその力を使いやすくしていたの」
「認識するだけで、そのものが作れる……どうやって作れるのかが分からないでそんなに出来るものなのか?」
「それがこの“ε(エプシロン)”の好都合な所なのよね。感覚的には、私がこうやって手を挙げるでしょう? 手を上げたいという意志でこの手は上がっているけれど、実際にどういった筋肉の動きがといったものを全部理解して動かしていないでしょう? だからこういった物がほしいというものさえある程度出来れば、それを作り上げられる」
「でも中の構造はわからないと」
「うん、この世界の人の方が下手をすると詳しいんじゃない?」
面白そうに笑う鈴。
それを聞きながら俺は、微妙に嫌な予感がした。
欲しいものを作り上げられる、つまりあの世界で妙に不思議技術が発達しているものがあった。
ギルド内の検索システムやギルドのカード、そして超古代文明の遺跡モドキ。
鈴にそれを話すと、
「そう、これを放り込んで見るとどういった“進歩”が見られるのかの観察も兼ねていたの」
「……とりあえず、どこか別の星だったり、未来の地球だったり、太古の昔にいた、封印されていたりする謎の宇宙人がそれらを作ったわけではなくて良かった」
「タイキ、二次元と三次元の区別はつけようよ♪」
「本当だな。はあ。それであのステータスやら何やらが見えたり瀕死の状態で止めるあれはどういった原理なんだ?」
「あれはスマホを介して、タイキの魔法にちょっと制限を加えているだけ。スマホに自分でタイキは触れたでしょう? あれで了解をとったということで私がタイキの魔力や威力を、特定範囲内でこの世界の外側、つまり今いるような場所に放出しているの」
「そんなにここに出して大丈夫なのか?」
「ここは広い空間だから威力も含めて拡散されるからほぼ0にまで希釈されるわ」
そう言われて周りを見回すと、確かに遠くの方に星の光のようなものがいくつも見えるが周囲には何もないように見える。
そこで更に鈴が、
「ちなみにタイキのポケットや、サーシャのはいっていた箱の中は、あそこの世界の外側であるこの空間に大きな部屋を作って倉庫にしているの」
「もしかして、だからサーシャがあの箱の中にはいっていたから、的に気づかれなかったのか?」
「空間的に違うものだから見つけにくかったのかもしれないね」
といった話を聞きながら俺は、
「この世界は必要に応じて“俺達の世界にあるような技術”が継ぎ接ぎされているように感じたが、その通りだったか」
「あ、気づいていたんだ。他に何がおかしかった?」
答え合わせを楽しみするかのように鈴が俺を見ている。
まず一つ目は、
「遺跡への道が整備されていたり、原種と言われる野菜類が俺達の身近で手に入れられる形によく似ていた」
「うんうん、他には?」
「さっきのギルドにある機材等。他には会話が成り立ったり、方言のようなものが無かった点かな。確か都市から地方に言葉が伝聞して行ったりするって話を昔見たことがあるし」
「確かに言葉は変化するものね。出来てから日数がそれほど経っていないしね。確かにそういえば怪しいといえば怪しい世界だね」
鈴が自分で作った世界なのにそう言って笑う。
その話を聞きながら俺は、
「でもゲームをしていたからって俺を引っ張り込めるものなのか?」
「厳密には意識だけかな。さっきも言った通りタイキは、“ε(エプシロン)”を使う能力に長けていて、そうそう、“ε(エプシロン)”って、インターネットで送ったりも出来るというか相性が良くてね。普通の人はそこまでそれを操る力は強くないから問題ないのだけれど、タイキみたいなタイプは影響を受けやすくて。それを使って呼び出した感じかな」
「……だからスマホのネットが繋がっているように見えたのか。でも、あれ、意識? 肉体ごと転移したんじゃないのか?」
「しないよ。私達の世界の物を構成する多数のものがこの世界にはないわけだし。上手く持ってこれたとしても生きていけないと思う」
「じゃあ今の俺は?」
「私も、タイキも、そしてこの女神様も精霊って呼ばれているものだよ。だから前に忠告したでしょう? “人造精霊”を作り過ぎると……ね?」
そういえば作り過ぎると……と脅かされた気がするが、俺自体があの精霊であったのだからその魔力を分けるとあの小さな精霊になるのだろうか?
自動で動くようなあれも、俺の意志で魔力が動くからああなるのだろうか? だが、
「“人造精霊”があんなゴスロリ少女なのはいただけない」
「あれはタイキの趣味だと思う」
「……」
「タイキの趣味、と言い続けるのも何なので、多分効率化された形があれだと思うよ」
「そ、そうだよな」
「異性なのはお察しだけれどね」
「……」
「でも精霊化した私達が更に精霊を作るとああなるっていうのは参考になったかな。一応はこの世界、その“ε(エプシロン)”で作られているけれど人間そのままのコピーが現実では作れないように、この世界に同じ人間を作るのは難しいみたいなの。だからこの世界の人間は、私達やタイキほど、“ε(エプシロン)”を使った魔法を上手く操れない」
「それはどの種族でも?」
「どの種族でも、よ」
「そうなのか、となると俺はあの世界で一番強いことになるのか?」
「うん、無双しまくりが出来るね」
「そんなに俺、良い思いはできたか? 何だかやたらと制限が多かった気もするし、異世界の侵略者に会う事も多かったし……そういえばそれもまさか鈴の仕業か? 全部わかっているんじゃないのか?」
そう問いかけると鈴はいつも以上に楽しそうに微笑み、
「調べれば分かるだけで全部を知っているわけじゃないわよ。目の前の液晶画面で大量の情報が流れているのを見たって、全部の情報を処理できるわけじゃない。一応は調べてはいるのだけれどね。そして、人の流れを作って特定の場所に誘導したり、風が吹けば動きがゆるやかになるからそれで速度を制限したり、雨が降れば人は木陰で休む。それらを演算して、人の動きを“運命”を操ればいいだけ」
「つまりやけに会うと思ったらそれらは鈴の仕業だと?」
「うん、そうだよ」
すべての黒幕は鈴であったようだ。
つまり幼馴染はラスボス。
そんな冗談を思いつきつつも俺は、
「それでその“ε(エプシロン)”は、人間以外も使えるのか?」
「うーん、今の所、私達の世界では生きた人間が使えて、動物はほぼない事もわかっているの」
「そうだったのか。だから鈴が、という形か……でも今の話を総合すると、これは何かの実験みたいだな」
「うん、研究の一環として私が関わった、という形なのよね。うーん、じつはこれ、異世界の侵略者と呼んでいるものにも関係する話なんだよね。何処から話そうかな」
「そうなのか?」
「うん、だってあの侵略してくる世界、あれって、この私の作った世界が一部分裂してできたものだから」
そう、俺の予想外の答えを鈴は返してきたのだった。
次回で説明会を終わらせたい。そして明日も更新できれば頑張ったということで。