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私の体にヒビが!

 目が覚めると夕方になっていた。

 相変わらず体がいつもよりも軽い気がする。

 さてと俺はベッドから起きる。


 一部服にしわが寄っているが、問題ない。

 いや、あるかもしれない。

 などと考えながら起きると、シルフとエイネがマーヤと一緒にメロンソーダを飲んでいた。


 美味しそうだなと思ってみていた俺にシルフが一番先に気づいたらしい。


「こんばんは、朴念仁」

「いや、起きたらいきなりなんでそんなことを言われないといけないんだ」

「ミルルお姉様はまだ眠っています」

「……ミルルの体調が更に悪化したのか?」


 俺は不安を覚えて、聞くと更にシルフが半眼になり、


「いえ、疲労しているだけで休めば治ります」

「そうなのか。良かった」

「……淫魔の特性を使った魔法は、他者の魔力を受け入れる、ということです。受け入れる相手がどんな相手かくらいは、こちらも選ぶのですよ」

「あー、確かに仲間だから、俺から魔力を得るにはちょうどよかったかもしれないな」


 そう答えるとシルフは更に冷たい目で俺を見て、それ以上何も言わなくなった。

 何が今の受け答えに問題があったのかが俺には分からないが、嘆息するのはやめて欲しいと思う。

 そこでクスクスとエイネが笑った。


「見ていて本当に面白いわ。うーん、これはモウ傍観者として私は楽しむしか無いわね」

「エイネ、一人で楽しそうなのはどうなんだ?」

「さあ、どうでしょうね。そういえばマーヤがタイキに話があるって」


 話をそらされたような気がするが、恐らくは、先ほどの彼女の県に関する話なのでマーヤの方を俺は優先する。

 そこでマーヤは美味しそうにメロンソーダを飲んでから、


「明日、サーシャ姫が元に戻った後にお話をしたいとのことです。魔王ロリィももやってきて今後について話すそうで」

「アケルナルはなんて言っていたんだ?」

「色々と話しをしてこの世界を羨ましがっていました。こちらとあちらの利害の一致について話しているようです」


 どうやら交渉も兼ねているらしい。

 彼女なりに考えはあるし、女神様にも身の保証をお願いしたのだ。

 だからR18グロ展開にはならないと思う。

 さて、そこでサーシャが部屋からにゅっと出てきた。


「あれ、タイキ、は起きたのですか。そしてマーヤまでいる」


 ふよふよとお気楽な感じで現れたサーシャをマーヤがじっと見てから頷き、


「明日、リズの家でサーシャ復活の儀式をすることに」

「えー、ここまで私の体を持ってきてくれないのですか? 一応姫なのですよね?」


 そんな我儘を言い出したサーシャにマーヤは無表情で、


「ここは3階なので、持ち上げるときについ滑って本体を落として粉々に砕け散る……」

「ぎゃああああああああ」

「……というような事が無いようにという理由からそうなりました」

「はい、分かりましたそうですね、ええ、もちろんです」


 サーシャが自分の本体が粉々に砕け散るのを想像して悲鳴を上げた。

 確かに地面に落ちたら壊れそうだよなと俺は思って、サーシャの気持ちはわからなくはなかった。

 そこでサーシャが、


「うう、分かりました。明日リズの家に行きます。タイキ達とですよね」

「はい」

「何時頃がよろしいですか?」

「午前10時頃で」


 といった約束を取り付けた。

 それからマーヤは、メロンソーダを楽しんですぐに、今日はリズと一緒に野生の“モモダ鳥”を狩りに行くらしい。

 明日、サーシャが元に戻った時のお祝い用の鳥だそうだ。


 それを自分達で狩りに行くのかと俺は思いながらある種の感動を覚えてしまう。

 そんな話をして俺達はマーヤと別れたのだった。








 ミルルが目を覚ました夕食。

 本日は、ハンバーグを中心にした食事だった。

 先ほどの戦いで消耗した武器を作る傍ら、奥の方に眠っていた全自動調理器という名の、複数の料理が出来てしまうという夢の様な機械を見つけて試しに使ってみたのだ。


 材料だけでできるお手軽さ。

 味はまあまあ美味しいと思って食事を摂る。

 ミルルは顔色が少し悪いのでハンバーグは良かったのかもしれない。


「ミルル、体調はどうなんだ?」

「体調、ですか? 中から魔力が満たされる快感がまた味わってみたいと思います」

「……ミルル?」


 なにか変なものに目覚めているような気がしたので俺が名前を呼ぶとミルルはハッとしたように我に返り、


「い、いえ、大分楽になりました」

「そ、そうか。それで明日の件なのだけれど……」


 といって先ほどのマーヤの話をミルルに話すと、


「明日は大変ですね。でもサーシャが元に戻れるのはいいですね」

「そうだな。さてと、また少し今日使った分の武器を補充しておかないと」


 そういった話をしながら、その日は静かに終わったのだった。









 次の日、サーシャを連れて皆でリズの家に向かう。

 杖の精霊ミィも、サーシャが元に戻ると喜んでいた。

 リズの家に向かう途中、鈴とも合流する。

 

 そのまま俺達はリズの家に向かうとすでに準備が整っているらしく皆集まっていた。

 周りには長い銀髪のきつそうなメイドが一人いる。

 現れたリズさんから説明を受けると、どうやらサーシャの専属のメイドであるらしい。


 ちなみにサーシャの父母は公務が忙しくてこれないらしい。

 それらの理由から、チルト伯爵達も含めて今ここにいる。

 サーシャの記憶用の魔石も全部用意されている。


 そして俺のサーシャの取り憑いた魔石を、取り出して、


「これは何処に置きますか?」

「では頭のあたりでお願いします」


 といった話になり俺はそこに魔石を置く。

 こうしてみると透明な水晶の中に眠っているサーシャは美少女だ。

 眠れる美女、といった言葉が頭に浮かんだが、こうして見ていると美人である。


 それがどうしてあそこまで残念な感じになってしまったのか。

 謎だけが深まった。

 そう俺がサーシャに失礼なことを思っているとそこで、


「そういえば体を用意してこの後、一体どうすればいいんでしょう?」

「「「え?」」」


 サーシャ以外の全員が一斉にそう呟いた。

 そして俺はすぐにサーシャに、


「元に戻る方法は覚えていないのか?」

「えー、えっと、この記憶の魔石を手に入れると想い出すのかな?」

「……なんとなくサーシャは中途半端な思い出し方をして、取り返しの付かないことになりそうな気がする!」

「ひど、タイキ、酷いです」

「いや、今までの経験からそうなるに違いない。こうなっては仕方がない、助けて、女神様ー」


 俺はサーシャが何かをやらかす前に便利な魔法、“女神召喚”を行った。と、


「はーい! でもまさかここまで来てこんな展開になるとは……やっぱり見ていて面白い子ね、サーシャは。さーてとー、ていやぁああああ」

「あああああ、私の体にヒビがぁああああ」


 そこで女神様がサーシャの入った水晶にパンチを食らわした。

 同時にピシッとその水晶に亀裂が入り、サーシャが絶望したような悲鳴を上げる。

 俺は絶句して声も出せずにいた。


 そこで、サーシャの体が白く輝いたのだった。



夜は更新できるかわからないかも

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