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危機との遭遇

 あそこに行ったのは偶然ではあったのだが。


「まさかあの人があそこにいるなんて」

「本当だね、驚いたね」

「鈴、何だか楽しそうだな」

「冗談みたいな展開ってあるんだね」


 鈴の言葉に俺もそうだよなと思う。

 だって今日あそこに向かったのは本当は偶然だったのだ。

 しかし、あのこの世界のものでない魔物は、あそこの門から出てきたのか?

 

 あの時は蟻のような魔物ではあった。

 俺の世界の虫が不自然に欠けた存在ではあったが、意味があるのかないのか。

 それとも俺がその存在を、俺の知っている範囲での似たものと認識しているのか? 


「ゴキブリの巨大化したものもいたからな。あれを考えると、どうなんだ?」

「何が?」

「いや、この世界に妙に俺の世界の虫関係とかが、異世界からの魔物である気がして」

「うーん、偶然じゃない?」

「量が多すぎて特定の性質、というのが気になる」

「案外、うちの世界の虫図鑑を、あっちの世界の神様が見ちゃったんじゃない?」


 適当な答えが返って来たので、きっと俺の考えすぎだろうと深く考えないようにした。

 とりあえずは町へと急いで戻ろうとした俺達。

 走りながら俺はあることを思い出したのでミルルに、


「そういえば以前来た時と違って幽霊のような白い靄を見かけなかったな。もしかしてあれを元にあの生物を作っているのか?」

「これまで見なかった魔物をですか? ……有り得そうではありますね。局所的に幽霊が発生している場所を狙っている? 幽霊が多い場所は魔力が多いから」


 ミルルが俺の言葉を聞いてそんなふうに呟いて考え始める。

 あちらの世界のものに似ているがこちらの世界の魔力を使って作られる。

 つまりこちらの世界の魔力でこちらの世界に攻撃する。


 上手くできている、と皮肉げに思いながらそういえばあの先ほどの門の前にいた彼女が以前青い石を使っていたが、


「そういえば、魔族にの魔王城近くにある幽霊が多い遺跡、あそこで青い石が落ちてきたかと思うと魔物になっているようだったな」

「! それは今、持っていますか?」

「あ、ああ。魔石の類かと思ったのだが」

「そちらも調べてもらえばもう少し何かが分かるかもしれません」


 普通に倒した時に手に入った魔石としか認識していなかった。

 そこでサーシャが顔を出し、


「新しい魔石ですか? ちょっと興味があります」

「駄目だ」

「何でですか!」

「……さっき扉を開いたのは、誰の力だろうな。開けと言っていた人物がいたような」

「と、閉じるように言ったでしょう!」

「つまりサーシャの言動にあの扉は呼応していると」

「う……」

「それの鍵だったのか。こうなるともう一度使えることはなさそうだよな。気づかれたみたいだし」


 そうするとあそこに見られた謎の生物は見かけなくなるのだろうか?

 それとも空間的な隙間をぬって、こちら側に手を出すのか。

 未だに謎が多いなと思いながら俺は、


「とりあえず後であの魔石は探してみる。……リズさん達にあれを渡せば良さそうか? 魔王とも繋がっていそうだし。ミルル、それでいいか?」

「はい、そうですねそれでいいかと」


 ミルルが何か案がありそうだったので聞いてみたが、頷いた。

 後はどうしようかと俺が考えて、そこで、


「しまったギルドの依頼はあの“魔物使い”を捕まえてくることだった」


 そういえば先ほどの捕まえた“魔物使い”について俺は、すっかり忘れていた。

 そこでシルフが呆れたように、


「アレックスさんがギルドで先に行って待っていてくれるようですよ。助けてくれたお礼もあって、つき出しておいてくれるそうです。あと賞金は助けてもらったお礼もあって、私達にくれるそうですよ」

「う……」


 俺は呻く事しか出来なかった。

 く、こんな所でも俺はアレックスにイケメンなのを見せつけられている。

 やはり俺は……俺は……そんな思いに支配されていると、シルフ達には嘆息されてしまったが。

 そして、更に町へと向かっていくのだが、そこで奇妙な少女に遭遇する。


 サラサラの長い黒髪に明るい緑色の瞳。

 着ている服は、俺達の世界のゴスロリに見える。

 つまりミニスカート風ドレスという、冒険者にしては異様な格好である。


 可愛い少女ではあるのだがそこでスマホがポケットで小さく震えたかと思うと、女神様が出てきた。

 それに目の前に現れた美少女は驚いたように、


「あら女神様、お久ぶりです」

「久しぶりね、邪神ちゃん。ちなみにここにいるタイキは私の物だから触手責めは駄目よ?」


 女神様が出てきたそうそう、そんな風に声をかける。

 俺は俺で吹きそうになった。

 そう、今目の前にいる美少女は、男だろうが女だろうが容赦なく襲いかかる触手という、どちらか片方の性別だけを襲っていれば神様だったという……。


 この前宝箱でその触手の種が出てきたというあの触手の邪神。

 のはずなのだがこうやって見ると普通の美少女にしか見えない。

 そこで彼女は不思議そうに首を傾げてから、


「そうなのですか? 私と“同じ”子が二人もいるので美味しそうな気がしたのですが」

「……だから手を出しちゃ駄目。うーん、い・や☆」


 そう言うとともに突如黒い影が彼女に射して、黒い細長いものが大量に現れる。

 俺は触れたくなかった。

 だって俺もターゲットになるからだ。


 けれど杖や魔法で攻撃する時間はなく、だからすぐに呼び出せる彼女を呼び出す。

 そう、“人造精霊”だ。

 意識するだけで現れた“人造精霊”に黒い触手を攻撃するように命じるとすぐに攻撃に移る。


 後はすぐにその触手を全て切り取られた彼女が、


「残念、降参です」


 にこやかに手を上げたのだった。








 それから俺達はギルドに向かった。

 あの触手の邪神には……俺が彼女を倒してしまった事で気に入られてしまったらしい。

 そのうち尋ねると言っていたが、想像すると恐ろしかったので俺は、それ以上は考えないことにした。


 とりあえずは女神様がそこはかとなく仲裁してくれたので何とかなった。


「タイキ、大丈夫?」

「大丈夫であります」

「……よほどショックだったので。……今日はいじらずにおとなしくかるわ」


 と女神様は帰っていった。

 そして俺達はギルドにやってきたのだがそこで、


「あ、いました、こちらです」


 手を振っていたのはアレックスという冒険者だった。

 周りの女性冒険者がチラチラとアレックスを見ている。

 羨ましさを俺が覚えていると、


「これが報奨金です」

「……これってまるまる全部では?」

「結局倒したのは、貴方がたですし恩人にそんな……」

「……ここまで持ってきてもらえて俺達も別の用事があって助かったから半分ずつでどうだろう? 先に戦闘して弱らせていた部分もありますし」


 と俺は提案した。

 アレックスは驚いていたが、何となく、こいつだけ格好いい所を見せるのは癪なのも少しあったという私的な理由も俺にはあった。

 こうして俺達は、ようやく帰路につくこととなったのだった。


 




夏バテのため明日はお休みします

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