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皆で追いかけましょうか

 デートという物を俺は開始していたりするのだが、現在俺はミルルと手を繋いで歩いている。

 デートの練習という話しだけれど、やはり俺自身も緊張する。

 ちらりとミルルを見るとその視線に気づいたらしく、ミルルが俺に微笑む。


 いつも以上に可愛いというか繊細というか、こう……上手く言えないのだが魅力的に見えてしまう。

 確かに元が良いのだけれど今日はこう、いつもよりも輝いて見える。

 やはり手を繋いでいるからだろうか?


「そのせいかな」

「何がですか?」

「いや、その……ミルルがいつも以上に輝いて見えるというか」

「そうですか? ……恋に落ちそうですか?」

「それはまあ、ミルルみたいな綺麗で優しい子、モテるんじゃないのか?」

「……私だって好みの相手があります」


 拗ねたようにミルルが俺に答える。

 それに俺は慌てて謝った。

 それからしばらくは無言で折るいていた俺達だがそこでミルルが、


「何処に行きましょうか?」

「あー、えっと、こういう場合って、男がデートコースを決めた方が良いんだったか?」

「私はどちらでも構いませんが」

「そうだな……何だかんだで忙しくて全然調べられなかったが……そうか、今こそこのスマートフォンを使う時か!」


 というわけで、スマホを取り出すとスマホの中で女神様が手を振って画面から消えた。

 俺は周りを見回すが女神様の姿は何処にも見当たらない。

 どうやら仮とはいえデートを邪魔するといったように無粋ではないようだ。


 そう思いながら俺は、スマホを操作してデートに良さそうな場所を調べる。

 ゲームに酷似しているこの世界なのだから、ゲーム内のマップを調べればきっと、良さそうな娯楽施設があるだろう。

 そう思いながら幾つか候補が上がったが、


「水族館はどうだろう?」

「いいですね。涼しくて綺麗で……そういえばここの水族館は来た事がありませんでしたね」

「じゃあそこで決まりだな」


 といった話になり水族館に向かう事になった。

 そこでミルルがスマホを覗きこんできて、


「そういえばスマホは、調べたりできる点はギルドの機械みたいですね」

「あー、そういえばパソコンみたいな道具があったな。俺の事とか検索したりしていたみたいだし」


 ギルドに登録に行くと確かにパソコンやら何やらの様な物が存在していた。

 中世というよりは近世、むしろ近代的とはいえ、パソコンがあるのは不思議な感じが俺にはした。

 どちらかというと、俺としては歯車式のコンピュータをやっている時代にも思えてしまう。


 勝手なイメージだなと俺が思って、同時に昔の人から見ればこの現在がそれこそ魔法か何かに見えるだろう。

 現実世界でも、技術の進歩により以前よりもずっと世界は“狭く”なっている。

 通信でも輸送でもそう。


 SFサイエンスフィクションはいずれファンタジーに収束するのだろうか?

 そう思いながらも、スマホに目を落としながら俺は、


「でもあのギルドの機械はどうやってくるのかは分からない、だったか?」

「はい、今だに調べているのですがよく分からないそうです。でも最近は修理できるようになったらしいですよ」

「そうなのか?」

「はい、ようやく最近、構造の一端が分かったそうで。これで女神様に壊れたらまるっと取り替えてもらわずに済むそうですよ」

「そうなのか……そうだよな。俺だってスマホがどうやってできているのかとか作り方はあまり知らないから買うしかないわけで、けれど使う事は出来るのか……」


 この世界の人達が“パソコン”の様な物を使えるのは、ある種当然の様なものだ。

 この世界は女神様がくれるのだけれど、俺達の世界では作り方を知らないと、買わないといけなくなる。

 そしていざという時に手に入らない。


 かといって時代によって別の技術が確立して旧来の物では太刀打ちできなくなったりする。

 けれど従来の物を応用すると新しい物も出来たりする。

 切り口、観点を変えるだけで別の物が見えてくる。


 とはいう物のそれは一番難しい。

 人には固定観念があるからだ。

 知らず知らずのうちに、“こういうものだ”と決めつけてしまっていて、別の物に気付きにくい。


 なるほどなと俺は思いつつ、それは心の内で呟いてから水族館への最短ルートを検索して、


「よし、こっちだ」

「え? あ、はい……」


 ミルルの手を引き俺は歩き出す。

 そして俺は、ただの地図しか見ていなかったのを、少し後悔する事になる。








 建物の陰にそっと隠れる様につけてきたシルフは、呆れたように呟いた。


「あの朴念仁は何をやっているのですか」

「シルフ、もう少し優しくした方がいいのでは?」

「エイネ、あの道は治安があまり良くないのを知らないのですか」

「あー、そういえばそうね」


 エイネがそう呟くのを聞きながらシルフはどうしようかと考える。

 サーシャはふよふよと周囲に浮かんでいる状態だ。

 けれど人目につく場所では箱の中にすぐ隠れる事になっている。


 けれど今黙っているという事は彼女もどちらが良いのか、シルフと同じように迷っているのだろう。

 ここで様子をずっと見続けるか、それとも出て行って違う道を教えるか。

 そこで鈴が、


「だったら、傍観か何かに襲われた時に頭に紙袋でもかぶって助太刀すれば正体もばれずに? 助けられるしいいんじゃない? 暴漢に本当に会うか分からないんだし、デートの邪魔をしてもよくないし」

「そうですね」

「あ、道を曲がったから追いかけた方が良いかも。見失うし」

「確かに……あれ?」


 そこでシルフは、これまでいなかった人物が乱入してきたのに気づいた。


「鈴……それにマーヤまでどうしたのですか」

「マーヤも遊びに来て、途中で同じく遊びに行く私とあったから一緒に来たの。それでたまたまこの道を来たら、こんな面白い事になっていたわけ」


 鈴が楽しそうに笑う。

 そしてシルフもちょっと考えてから、


「そうですね。では、皆で追いかけましょう」


 と、答えたのだった。









 最短距離は直線距離であるけれど、家々の連なりの関係で遠回りせずにはいられない。

 そしてその場所は薄汚れた道だった。

 あまり治安の良くなさそうなその道を選択した俺が愚かだったのかもしれない。


「ようよう兄ちゃん」

「綺麗な女と一緒か」

「そんな男より俺達と一緒に遊ぼうぜ」


 現実社会では見た事のないカラフルな頭に、もひかん? という古い時代の髪型をした人物達が現れた。

 周りを歩いていた人達は遠巻きに俺達を見ている。

 そして目の前の男達は、俺を叩きのめしミルルに手を出そうとしている。


 何というお約束の展開。

 そして以前は杖が呪われていたせいで操られていた俺は普通に倒してしまったが、


「とりあえずは倒すか。えっと魔法は……」

「あん? 魔法なんか使わせるか!」


 モヒカンさん(仮)が襲いかかってくる。

 恐らくは魔法は間にあうだろうが……そこで横から、そのモヒカンさん(仮)にとび蹴りをしてくる幼女が!

 しかも頭に紙袋をかぶっている。


 更に付け加えるならば他にも紙袋をかぶった女性達が何人も現れて、


「な、何だお前達は! うわぁああああ」


 悲鳴を上げて次々に倒されていくごろつき達。

 しかも一人は電気の様な物で痺れさせられてから、殴り飛ばされ気絶している。

 ちなみにその紙袋をかぶったもう一人の幼女は、


「男は、びりびりでいいってリズに言われている」


 などと呟いていた。

 こうして謎の助っ人は、傍観全員を倒し拍手喝さいを浴びる事になったのだが、


「あの……」


 俺が声を開けると同時に、その場を逃走した。

 正体は分かっているのでミルルを俺が見ると苦笑して、


「……心配されていたようです」

「そうだな」

「でも、タイキが活躍する所は少し見たかったかも」


 そうミルルが言って、俺達は再び歩き出す。

 やっぱりああいう場面では俺が活躍するべきだったのかもしれないが、というかするべきだろうと思うけれど、怪我も俺達は特にない。

 今日は仮とはいえデートなのだからそこに集中すべきだろう。


 こうして俺達はその後特に妨害もなく、水族館に辿り着いたのだった。


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